戦争学原論
石津朋之 筑摩書房
本書は「学問としての戦争」について記した著作である。戦争を肯定するのでも否定するのでもなく、まず戦争を戦争として分析しようとするのが本書の内容である。本書の中で著者が繰り返し述べていることは、「戦争は優れて社会的な事象」だということ。つまり戦争は人間社会における現象の1つであって、人間社会から離れた異常な現象ではない。そして戦争を構成するものは、政治、軍事、国民、技術、時代精神の5つで、この中から1つとして欠けるものはない。この考えから遊離して、例えば国民不在で戦争を論じても、戦争を論じたことにはならない。このあたりはマイケル・ハワード氏の考えにも相通じるものがあり、戦争を社会から遊離したゲームのように捉えることは無意味であるとしている。さらに本書では、戦争学と平和学の情報交換の重要性を説き、一般に敵対的な関係にある戦争学と平和学の現状に不満を漏らしている。
「戦争」とは何か、「戦争の勝敗」とは何か、「戦争と平和の違い」は何か、について新しい視点を得られる著作である。
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