Red Strike(以下、本作)は、2023年にドイツのVUCA Simulationが発売したSLGである。テーマは1989年における東西両陣営の直接対決で、ゲームスケールは1Hex=28km(戦略マップは280km)、1Turn=2日間で、1ユニット=大隊~師団、航空機は1ユニット=10~60機程度、艦船は主力艦1隻又はその他の艦艇数隻を表す。
今回プレイするのが、海空戦シナリオの1つである「B5.Miami 1989」。これは北大西洋における米ソ両海空軍の戦いを描いたシナリオで、ソ連側はSSBN4ユニットを「聖域」と呼ばれる北極海に送り込むことを目指し、NATO側はその阻止を目指す。
今回、このシナリオをVASSALで対戦プレイすることになった。筆者はNATO側を担当する。
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2Turn
第1アクションステージ
ソ連側がSSBNによる聖域への突破を行ってきた。聖域の入口では、NATOの「無敵艦隊」が居座っていたが、ソ連SSBNはNATO艦隊を無視して強引に聖域への突破を実施。NATO側も「目標撃沈の算なし」としてSSBNを放置(特にタイフーン型は対艦・対潜能力も強力なので、下手に手を出すと、反撃食らって酷い目に遭う可能性があった)。結果としてソ連SSBN3ユニットが聖域への突破に成功した。NATO側は、前Turnに使わなかった航空偵察を使うことにした。狙いはソ連北部のNorthern Fleet航空基地である。航空偵察ポイントは2ポイントあるので2回偵察を試みることができ、なおかつ各々の成功率は60%と決して低い値ではなかった。しかしこの時はNATO側のダイス目が悪く、航空偵察は悉く失敗してしまう。
次にNATOが持ち出してきたのは巡航ミサイル。イージス艦や潜水艦、原子力巡洋艦が搭載している巡航ミサイルを次々とソ連本土の航空基地に撃ち込んだ。こちらは一定の成果を発揮し、ソ連航空基地に若干の損害を与えた。
次にNATO側は空母機動部隊をソ連本土に接近させて、戦爆連合の攻撃隊を発進させた。F-14Aトムキャット1個中隊、F/A-18ホーネット2個中隊、A-6Eイントルーダー2個中隊、そしてEA-6Bプラウター1個部隊からなるアルファストライクチームである。米空母艦載機のほぼ全力出撃であった。
米軍機の接近を察知したソ連軍は迎撃機を発進させた。MiG-25フォックスバット2個中隊である。しかしフォックスバットは米艦載機のミサイル攻撃を受けて撃退され、米側攻撃隊に何ら損害を与えることができなかった。それでも爆装状態であったF/A-18の爆装を投棄させる効果はあった。
なおもソ連本土上空に向って行く米軍機の編隊に対して、ソ連本土防空軍の地対空ミサイルが次々と発射された。米軍はEA-6Bプラウラーの電子妨害で対抗したものの、ついにその1発がプラウラーに命中。プラウラーの編隊は編隊離脱を余儀なくされてしまう。
生き残った米軍機編隊は、ソ連側の対空火器を掻い潜って爆撃を敢行する。しかし事前偵察を欠いた爆撃は正確さを欠き、僅かに飛行場に1打撃を与えたのみ。巡航ミサイル攻撃に比べても明らかに劣った戦果しか挙げられなかった。こうして米空母部隊による乾坤一擲のソ連本土空襲作戦は、甚だ中途半端な結果に終わったのである。
第2アクションステージ
驕り高ぶった帝国主義者共に正義の鉄槌を下すべく、ソ連軍は猛烈な反撃を開始した。ソ連本土攻撃のためにノルウェー近海に接近してきた米空母部隊は、ソ連自慢の新鋭戦闘機Su-27フランカーの戦闘行動半径内に位置していたからである。ただちにSu-27フランカー2個中隊に援護されたTu-22Mバックファイア2個中隊が発進していく。なお、本作のSu-27フランカーは、オリジナル版からエラッタにより能力が見違える程改善されているので、本作をプレイする際にはエラッタに注意して頂きたい。
閑話休題。
護衛戦闘機随伴してきたソ連側攻撃隊に対し、米空母を守るCAP隊も手出しができない。護衛戦闘機に挑戦した所で護衛を突破することはかなり困難だし、逆に数的優位に立っているソ連側護衛戦闘機に返り討ちに遭う可能性が高い。それならば下手に手出しはせず、ここは見送った方が良い。
無傷で米空母部隊を対艦ミサイルの射程内に捉えたバックファイアの編隊は、次々と対艦ミサイルを発射する。
再び米機動部隊の強力な防空システムが対艦ミサイルに対抗する。しかし今回はノルウェー近海へ進出する際に全艦を随伴させることができなかったため、防御の要となるSAGは僅か2ユニットしか存在していなかった。それでも米空母自体が強力なECM値を持っているため、これに対艦ミサイルを命中させるのは、ソ連側にとっても結構難事となる。
結局ソ連側爆撃隊は辛うじて米機動部隊に1発の命中を与えたものの、肝心の米空母には命中を与えることができず、護衛艦艇の一部に被害を与えたに留まった。
ソ連軍はなおも諦めない。今度は軽空母「キエフ」を使って攻撃を行ってきたのだ。「キエフ」は比較的長い射程の対艦ミサイルを装備しているので、NATO艦隊をアウトレンジできるためだ。しかしアウトレンジ攻撃を狙うのであれば、「キエフ」ではなくより攻撃力の大きい打撃巡洋艦である「キーロフ」を使った方は良かったように思うのだが・・・。まあ、良いか。
案の定、「キエフ」のミサイル値は僅かに4しかなく、そのミサイルは米機動部隊によって容易に排除されてしまった。
第3アクションステージ
再びソ連側は大規模な攻撃隊を発進させて米機動部隊を襲った。今度は、Su-27フランカー2個中隊に護衛された、Tu-22MバックファイアとTu-16Kバジャー各2個中隊からなる計6個中隊の大攻撃隊である。米軍の迎撃戦闘機は、今回も反撃を見送った。再び大量の対艦ミサイルが大空を覆った。米艦隊は強化されたECM値でこれを迎え撃つ。激しい戦い。しかし今回も米機動部隊の鉄壁の防御が威力を発揮し、ソ連側の対艦ミサイルは1発の命中を得ることもできなかった。
3Turn
このTurnソ連側は唯一マップ上に残っていたSSBNであるデルタ型を聖域に向けて前進させてきた。これに対してNATO側も様々な手段で反撃を行い、ダメージを与えることには成功した。しかし最終的にはソ連SSBNがNATO対潜部隊の妨害を排除し、聖域に逃げ込むことに成功した。ソ連基地航空部隊は、またもや米機動部隊を襲った。今度もSu-27フランカー2個中隊に護衛された、Tu-22MバックファイアとTu-16Kバジャー各2個中隊からなる計6個中隊の大攻撃隊である。
一方の米空母も今度は要撃戦闘機を発進させてソ連側攻撃隊を迎え撃つ。
Su-27フランカーとF-14トムキャット、F/A-18ホーネットとの戦い。年式ではフランカーの方が「若い」機体であったが、米軍機はより洗練された視認距離外ミサイルを搭載していたため、まず視認距離外戦闘で米軍が先手を取った。フランカーの半数が米軍機による視認距離外ミサイル攻撃によって撃墜又は強制帰還を余儀なくされた。
引き続いて接近戦を戦う両者であったが、さすがに接近戦ではSu-27は米軍機相手に互角以上の戦いを見せ、数的劣勢にも関わらず米軍機相手に自機とほぼ同等の被害を与えた。そしてSu-27の奮戦があったため、ソ連側爆撃編隊は無傷で米空母部隊をその対艦ミサイルの射程内に捉えた。
再び大量のミサイルが大空を覆った。米艦隊は強化されたECM値でこれを迎え撃つ。激しい戦い。今回はソ連側も2発に命中を得ることに成功した。しかし被弾したのはいずれも空母の護衛艦隊であり、空母自体に対する命中弾はなかった。
結局ソ連軍は、彼ら自身が渇望していた米空母に対するミサイル命中を遂に達成できなかった。
結果
最終的なVPは以下の通りである。・ソ連SSBN計4ユニットによる聖域到達 :+28VP
・NATO側のダメージが合計16ヒット :+32VP
・ソ連側のダメージが合計26ヒット :-26VP
合計:34VP
ソ連側決定的勝利
感想
得点的には完敗であった。ただ、個人的には、このシナリオでNATO側が勝利するのはかなり困難だと思える。ソ連側SSBN4ユニットのうち半数が聖域に突破できれば、それだけでソ連側の勝利条件ラインを超えられる。NATO側が損害覚悟で阻止戦を行っても、1損害当たりのVPがNATOの方が不利なので、消耗戦はNATOにとって不利である。ただし反省点も多い。例えば巡航ミサイルの使い方とか、空母の守り方については、もう少し工夫の余地があっただろう。特に米艦隊が1ヶ所に集結するとほぼ無敵状態になるので、米艦隊は下手に動き回るよりも拠点防御に徹した方が良いのかもしれない。
いずれにしても今回のプレイで海戦ルールも概ね分かってきたので、別のシナリオも試してみたいと思う。
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