「大東亜戦争」(以下、本作)は、2015年にGame Journal誌の別冊ゲームとして発表されたSLGである。テーマは大東亜戦争(太平洋戦争)で、1941年に始まる大東亜戦争を、1Turn=3ヶ月、1ユニット=旅団~軍、航空機数十機~数百機、主力艦2隻、その他数隻といった単位で再現する。マップはエリアとポイントの混在である。
今回、本作のシナリオ2「第二段階作戦」をプレイした。このシナリオは、日本軍による南方攻略戦が一段落した1942年4月頃から開始されるシナリオである。史実では蘭印攻略戦がほぼ終了、バターン半島/コレヒドール要塞に米比軍の残存部隊が籠り、南雲機動部隊はインド洋方面で作戦行動中、といった状況である。
今回筆者は連合軍を担当した。なお、プレイに際しては上級ルールを使用した。
前回までの展開は --> こちら
米軍の反攻作戦はまたもやマッカーサーラインとなった。
太平洋方面での反攻に先立ってまたもや英東洋艦隊が策動する。ジャワ海経由で蘭印奥地への侵攻を試みる。
前Turnにパレンバンを失っていた日本軍は、これ以上蘭印の油田地帯を失う訳にはいかないので陸上兵力と航空兵力を同方面に送ってきた。
英艦隊はスラバヤへの強襲上陸を実施。日本軍は激しく抵抗してきた。英軍はLCUがステップロスするなどの損害を被ったが、何とか日本軍の抵抗を排除してスラバヤを占領した。これにより、日本軍が得られる資源ポイントは、さらに1ポイント減少する。
米艦隊主力はウルシーに最前線基地をおき、さらにフィリピン海に進出してきた。狙いはフィリピン中部レイテ島である。日本軍も基地航空隊の全力で抵抗してきた。再び日本海軍のアウトレンジ戦法が成功し、米空母1ユニットとCVE1ユニットがステップロス。しかし圧倒的な戦力の米艦隊は最高火力で攻撃。圧倒的な米艦隊の攻撃力に抗すべくもなくレイテ島は陥落。マッカーサーは叫ぶ。
「フィリピンよ、私は帰ってきた」
米本土では、空前の重爆撃機B-29スーパーフォートレスが開発を終えて実戦配備につきつつあった。B-29の威力に着目した米陸軍航空隊は、欧州戦線で勇名をはせたカーチス・ルメイ少将を登用。日本本土に対する爆撃準備を進めていた。
米軍の反攻作戦は中部太平洋方面(ニミッツライン、ゲーム上では「第5艦隊」と表現されている)となった。米軍はサイパン島攻略作戦に取り掛かる。また「タイコンデロガ」以下4隻の新鋭空母を就役させ、太平洋艦隊の戦力を強化する。
一方の日本軍は「坑道持久戦術」を採用。サイパンに1個軍と精強なる航空部隊を配置し、米軍の攻撃を待ち構える。
米艦隊がサイパン沖に姿を現した。日本軍は基地航空隊でこれを迎え撃つ。米空母1隻が大破(ステップロス)するも、残った兵力で日本側基地航空兵力を撃破。それに引き続いてサイパン及びグアムに対して米軍による上陸が行われる。坑道持久戦術により頑強に抵抗する日本軍であったが、米軍の物量が勝り日本軍守備隊を撃破。米軍がマリアナ諸島一帯を占領した。
これにより米軍はB-29の発進基地を手に入れたことになる。
今回はプレイ時間の関係上、ここまでのプレイとした。プレイ時間はセットアップを含めて正味7時間強。慣れれば1日でこのシナリオを完遂することは不可能ではないと思う。
全般的な感想としては、良いゲームだと思う。現実の大東亜戦争について、われわれ日本人の特に「ミリタリーマニア」と呼ばれている人種が喜びそうなツボ(新型機開発、航空戦艦への改造等)を押さえつつ、戦争全体をプレイ可能なレベルの難易度に抑えている。
カードで取り上げた歴史イベントの内容についても日本人の国民性を感じるものとなっていて、例えば同テーマを扱った米国GMT社のEmpire of the Sunと比べると、同じカードドリブンゲームながらカードの内容がこうも違うのかと驚かされる(本作がEotSを意識してデザインしている可能性が高いとは思うが・・・)。
またプレイ時間も適切な範囲に収まっており、慣れたプレイヤーで長考しなければ、1日で戦争全体を完遂することも可能だ。カードドリブンゲームの強みとしていわゆる「ダウンタイム」が少なく、プレイヤーが興味を持続させられるというのも大きい。この点で言えば、戦争終盤はサンドバック化してしまう日本軍であっても、一発逆転を狙って楽しくプレイできる(ただしサドンデスルールについては合意できないことは後述する)。
と、褒める所は褒めておいて、気になった点がある。それは勝利条件に関わる部分。具体的には「総力戦期」に入った後の連合軍についてだが、連合軍がLCUを失った場合、ダイス目によっては日本軍のサドンデス勝利になる場合がある。これは連合軍の人命重視を反映したルールと思われるが、筆者としては違和感を禁じ得なかった。この点についてはデザイナー氏に確認し、ゲームテクニック的な手を使えば連合軍はこのワナを回避することが可能とのこと。しかし、どうしてそのようなテクニックが必要なのかが理解できなかった。まあ日本人がデザインしたゲームなので、日本側の「一発逆転」を夢見る部分があるとは思うが、個人的には「総力戦期」でも日本側のVP取得で十分だと思っている。
あと、このゲーム、初級ルールと上級ルールに分かれているが、そもそも本作のような高難度ゲームで「初級ルール」が必要なのかは疑問に思った。本作をプレイしたいと思うゲーマーはかなり「濃厚な」ゲーマーだと思われるし、そのような「濃厚な」ゲーマーがわざわざ初級ルールでプレイすることはないと思うのだが・・・。
とまあ色々と書いてきたが、本作について筆者が好意的な評価を持っていることは間違いない。確かにお世辞にも簡単なゲームではなく、正しいルールでプレイするためには複数回の練習プレイが必要なゲームである。にもかかわらず、大東亜戦争全体を再現し、しかも1日あれば全体の流れが見えてくる本作は貴重である。ゲーム展開も概ね安定していて、パスグロのように「ワンミスでゲーム展開が崩壊する」といった危険が小さい。日本人がデザインした大東亜戦争ゲームということで、米国製との対比も面白いだろう。
難易度の高さ故にあまりプレイしたという話を聞かない本作だが、もっと幅広くプレイされても良い作品だと思う。
今回、本作のシナリオ2「第二段階作戦」をプレイした。このシナリオは、日本軍による南方攻略戦が一段落した1942年4月頃から開始されるシナリオである。史実では蘭印攻略戦がほぼ終了、バターン半島/コレヒドール要塞に米比軍の残存部隊が籠り、南雲機動部隊はインド洋方面で作戦行動中、といった状況である。
今回筆者は連合軍を担当した。なお、プレイに際しては上級ルールを使用した。
前回までの展開は --> こちら
12Turn(1944年春)

太平洋方面での反攻に先立ってまたもや英東洋艦隊が策動する。ジャワ海経由で蘭印奥地への侵攻を試みる。
前Turnにパレンバンを失っていた日本軍は、これ以上蘭印の油田地帯を失う訳にはいかないので陸上兵力と航空兵力を同方面に送ってきた。
英艦隊はスラバヤへの強襲上陸を実施。日本軍は激しく抵抗してきた。英軍はLCUがステップロスするなどの損害を被ったが、何とか日本軍の抵抗を排除してスラバヤを占領した。これにより、日本軍が得られる資源ポイントは、さらに1ポイント減少する。
米艦隊主力はウルシーに最前線基地をおき、さらにフィリピン海に進出してきた。狙いはフィリピン中部レイテ島である。日本軍も基地航空隊の全力で抵抗してきた。再び日本海軍のアウトレンジ戦法が成功し、米空母1ユニットとCVE1ユニットがステップロス。しかし圧倒的な戦力の米艦隊は最高火力で攻撃。圧倒的な米艦隊の攻撃力に抗すべくもなくレイテ島は陥落。マッカーサーは叫ぶ。
「フィリピンよ、私は帰ってきた」
米本土では、空前の重爆撃機B-29スーパーフォートレスが開発を終えて実戦配備につきつつあった。B-29の威力に着目した米陸軍航空隊は、欧州戦線で勇名をはせたカーチス・ルメイ少将を登用。日本本土に対する爆撃準備を進めていた。
13Turn(1944年夏)

一方の日本軍は「坑道持久戦術」を採用。サイパンに1個軍と精強なる航空部隊を配置し、米軍の攻撃を待ち構える。
米艦隊がサイパン沖に姿を現した。日本軍は基地航空隊でこれを迎え撃つ。米空母1隻が大破(ステップロス)するも、残った兵力で日本側基地航空兵力を撃破。それに引き続いてサイパン及びグアムに対して米軍による上陸が行われる。坑道持久戦術により頑強に抵抗する日本軍であったが、米軍の物量が勝り日本軍守備隊を撃破。米軍がマリアナ諸島一帯を占領した。
これにより米軍はB-29の発進基地を手に入れたことになる。
感想

全般的な感想としては、良いゲームだと思う。現実の大東亜戦争について、われわれ日本人の特に「ミリタリーマニア」と呼ばれている人種が喜びそうなツボ(新型機開発、航空戦艦への改造等)を押さえつつ、戦争全体をプレイ可能なレベルの難易度に抑えている。
カードで取り上げた歴史イベントの内容についても日本人の国民性を感じるものとなっていて、例えば同テーマを扱った米国GMT社のEmpire of the Sunと比べると、同じカードドリブンゲームながらカードの内容がこうも違うのかと驚かされる(本作がEotSを意識してデザインしている可能性が高いとは思うが・・・)。
またプレイ時間も適切な範囲に収まっており、慣れたプレイヤーで長考しなければ、1日で戦争全体を完遂することも可能だ。カードドリブンゲームの強みとしていわゆる「ダウンタイム」が少なく、プレイヤーが興味を持続させられるというのも大きい。この点で言えば、戦争終盤はサンドバック化してしまう日本軍であっても、一発逆転を狙って楽しくプレイできる(ただしサドンデスルールについては合意できないことは後述する)。
と、褒める所は褒めておいて、気になった点がある。それは勝利条件に関わる部分。具体的には「総力戦期」に入った後の連合軍についてだが、連合軍がLCUを失った場合、ダイス目によっては日本軍のサドンデス勝利になる場合がある。これは連合軍の人命重視を反映したルールと思われるが、筆者としては違和感を禁じ得なかった。この点についてはデザイナー氏に確認し、ゲームテクニック的な手を使えば連合軍はこのワナを回避することが可能とのこと。しかし、どうしてそのようなテクニックが必要なのかが理解できなかった。まあ日本人がデザインしたゲームなので、日本側の「一発逆転」を夢見る部分があるとは思うが、個人的には「総力戦期」でも日本側のVP取得で十分だと思っている。
あと、このゲーム、初級ルールと上級ルールに分かれているが、そもそも本作のような高難度ゲームで「初級ルール」が必要なのかは疑問に思った。本作をプレイしたいと思うゲーマーはかなり「濃厚な」ゲーマーだと思われるし、そのような「濃厚な」ゲーマーがわざわざ初級ルールでプレイすることはないと思うのだが・・・。
とまあ色々と書いてきたが、本作について筆者が好意的な評価を持っていることは間違いない。確かにお世辞にも簡単なゲームではなく、正しいルールでプレイするためには複数回の練習プレイが必要なゲームである。にもかかわらず、大東亜戦争全体を再現し、しかも1日あれば全体の流れが見えてくる本作は貴重である。ゲーム展開も概ね安定していて、パスグロのように「ワンミスでゲーム展開が崩壊する」といった危険が小さい。日本人がデザインした大東亜戦争ゲームということで、米国製との対比も面白いだろう。
難易度の高さ故にあまりプレイしたという話を聞かない本作だが、もっと幅広くプレイされても良い作品だと思う。








コメント
コメント一覧 (2)
米LCU除去は、連合側が注意していれば防げると思います。
一部LCUはステップロスすると防御力が上がりますし。
総力戦期のLCU除去による日本勝利の可能性により、連合は無理な攻めが出来ません。
そのため日本の時間稼ぎがしやすくなり、時間勝負の連合のジレンマが再現されてると思います。
もりつち
が
しました