PacWar


「Pacific War」(以下、本作)は、2022年に米国GMT社が発売したSLGである。テーマは太平洋戦争全域で、1941年12月に始まる太平洋戦争を、1戦略Turn=1ヶ月、1Hex=約100マイル、1ユニット=大隊~軍(基本は師団)、主力艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦以下数隻、航空機は1ユニット=十数機~約100機というスケールで再現する。

今回プレイしたシナリオは、Campaign Scenarioの1つであるガダルカナル攻防戦。これは1942年8月における米軍のウォッチタワー作戦開始から翌年2月の日本軍によるガダルカナル撤退直前までの約半年間に渡る戦いを扱っている。筆者は連合軍を担当した。

前回までの展開 --> こちら

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1942年8月

前回はルール説明だけで終わってしまったので、ここから実際のプレイを紹介する。今回プレイしたガダルカナルシナリオは、米軍によるガダルカナル上陸戦から開始されるため、米軍プレイヤーは麾下の兵力をどのように配置するかを決定しなければならない。このシナリオの怖い所は、上陸作戦当日に日本空母「翔鶴」「瑞鶴」の艦載機が大挙して飛来して輸送船団を襲ってくる可能性のあることだ。ちなみに史実では、この時期日本空母の主力は内地にいて、トラック島には進出していない。

このシナリオでは、特別ルールにより最初の作戦実施者は連合軍と決まっている。また嬉しいことにVictory Games版では8月の指揮ポイントが30数ポイントだったのが、GMT版では54ポイントと倍増近い増額。これによって米軍の実施できる作戦の幅が大きく広まった。

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「ウォッチタワー」作戦で米軍が投入した兵力は、上陸部隊は第1海兵師団と工兵1個大隊。工兵部隊は敵飛行場を占領した後、ただちにそこを占領して飛行場を拡張するためだ。その護衛兵力として空母「サラトガ」「エンタープライズ」「ワスプ」、そして重巡1ユニット、駆逐艦5ユニットだ。活性化ポイントは合計20。作戦期間は3週間としたので、必要な指揮ポイントは2倍の40ポイント(作戦期間が3週間で2倍、4週間で3倍となる)。そこに司令部の管理コスト6ポイントを加えて、計46ポイントの指揮ポイントを消費した。ちなみに司令部の管理コストというのは、規模の大きな作戦を行う場合、司令部自身が消費する管理コストを支払う必要があるという意味である。
ちなみに史実では、戦艦「ノースカロライナ」や多数の重巡、駆逐艦が加わっていた大遠征部隊であったため、史実と比較すると本作の遠征部隊はかなりささやかな規模になっている。これは他の場面でも同様で、本作で史実同様の規模の作戦を実施しようとするとどうしても指揮ポイント不足になってしまう。このあたり、兵站ルールを簡略化するために仕方がない面もあるが、史実に拘るプレイヤーにとっては少し気になる所だ。

何はともあれ米遠征部隊は順調に前進を続ける。しかし作戦2日目、遠征艦隊がガダルカナル東南東400マイルの地点に到着した時、旗艦空母「サラトガ」の右舷後部に水柱が上がった。潜水艦の魚雷攻撃である。幸い「サラトガ」の被害は比較的軽微で作戦行動は可能であったが、作戦序盤の被害に艦隊一同前途多難を覚えたのであった。なお、襲撃を行った日本の潜水艦は、その後の米駆逐艦の爆雷攻撃で撃沈されている。

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Victory Games版の大きな問題の1つとして潜水艦の攻撃力が強すぎるという点があった。特に戦略シナリオの場合、潜水艦をかき集めて集中攻撃を加えると、どんなタスクフォースであってもまるで白蟻に狙われたボロアパートのようにボロボロになってしまう。GMT版で潜水艦ルールが改訂されたので、そのあたりの問題がどう緩和されているのか気になったのだが、潜水艦の凶悪さは相変わらず。しかも悪いことに以前は戦略シナリオだけの問題であった潜水艦の凶悪さが、キャンペーンシナリオでも波及してきていると思えてきた。まあ護衛駆逐艦をしっかりつけておけば、雷撃を企てた潜水艦をほぼ確実に返り討ちにできるので、その戦力を徐々に削っていけるのだが、それでも潜水艦の脅威は侮れない。今回のシナリオでも両軍の潜水艦はやはり猛威を振るった。本作における潜水艦ルールについては、もう少し時間をかけてじっくり評価してみたいと思う。

日本潜水艦が米艦隊を発見したので、日本軍プレイヤーは接触フェイズを終了を宣言できる。そこで日本軍プレイヤーは接触フェイズの終了を宣言した。そして自身の迎撃態勢を公開する。日本軍の迎撃態勢は「奇襲」である。これは日本側にとっては最悪の状態であった。日本軍はこの瞬間から迎撃艦隊を慌ただしく編制しなければならない。

ここから戦闘サイクルに入る。この戦闘サイクルでは両軍のタスクフォースが交互に移動し、航空攻撃や水上戦闘を行う。ガダルカナル東南東200マイルまで接近した米機動部隊は、日本潜水艦の攻撃を排除しつつ、攻撃隊を放った。米攻撃隊はガダルカナルに進出していた二式水上戦闘機の部隊を機銃掃射で排除した。

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さらに米艦隊はガダルカナル近海に突入。艦砲射撃で日本軍守備隊に砲撃を浴びせた。狙いは日本軍守備隊のモラルダウン。モラルダウンした守備隊は容易に撃破可能だが、健在な日本軍守備隊はなかなか手強い。しかし日本軍守備隊は米軍の砲爆撃をものともせず、士気軒昂のまま米上陸部隊を迎え撃つ。

その間、ラバウルを発進した日本軍陸攻隊がガダルカナル沖の米艦隊を攻撃してきたが、米空母を発進した迎撃戦闘機による迎撃を受けて多数の攻撃機を失って撃退された。

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そしていよいよ米海兵隊がガダルカナルに上陸する。史実では比較的容易に成功したガダルカナル上陸作戦だが、このゲームではそう簡単にはいかない。一定のリスクは存在している。特に守備隊が士気軒昂の場合は猶更だ。地形効果も相まって最低コラムでの攻撃になる。幸い部隊規模の違いで-2のDRMが得られているが、それでも出目が7以上だと米上陸部隊にとっては由々しき事態となる。

米軍による上陸戦闘のダイス目は0。これは米軍にとって最良の結果と言える。海岸線を守っていた精鋭海軍陸戦隊は撃破され、残った工兵隊等もバンザイ突撃を行って玉砕。ガダルカナル島は米軍の支配する所となった。

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8月22日、出港から丁度3週間後に米遠征部隊はヌーメア基地に帰港した。米軍によるガダルカナル上陸作戦は、まず第1段階が成功したことになる。

つづく



Game Journal 77-ガダルカナル 海空戦南太平洋1942
ガダルカナル戦記(2) 太平洋の試練(上)-ガダルカナルからサイパン陥落まで 機動部隊 空母瑞鶴戦史:南太平洋海戦