Imperial Sunset(以下、本作)は、ゲーム付雑誌であるAgainst the Odds誌の付録ゲームで、2006年に発売された作品だ。テーマはレイテ沖海戦。レイテ海戦のほぼ全体を1Hex=25海里、1Turn=6時間、1ユニット=巡洋艦以上1隻、駆逐艦以下数隻、航空機は10~30機程度というスケールで再現する。
今回、本作をプレイしてみることにした。シナリオは「歴史的シナリオ」で、筆者は連合軍を担当する。
前回までの流れは --> こちらをご参照下さい。
10月25日(章前)
襲撃を終えた栗田艦隊は、戦果を上げたと判断してスリガオ海峡を南下していく。一方のオルデンドルフ部隊も大損害を受けてレイテ湾奥深くに下がっていく。しかし日本軍はまだ兵力が残っていた。西村部隊と志摩部隊が合同した戦艦2隻、重巡3隻、駆逐艦8隻からなる部隊だ。しかし米軍側にも新鋭の兵力があった。最新鋭戦艦「アイオワ」「ニュージャージ」を含む第34機動部隊である。その兵力は、戦艦6隻、重巡2隻、軽巡2隻、駆逐艦20隻だ。圧倒的兵力を持った米軍は、水上戦の勝利を確信していた。
しかし・・・・
またもや煩わしい日本の駆逐艦が遠距離から酸素魚雷を放ってきた。誇り高き新鋭戦艦「アイオワ」そして「ニュージャージ」に魚雷が1本ずつ命中する。両艦とも戦闘能力に支障はなかったものの、最新鋭戦艦が傷物にされたことは米軍プレイヤーの自尊心を傷つけた。さらに「サウスダコタ」「ワシントン」「マサチューセッツ」にも魚雷が命中する。なんだか魚雷の命中率が良すぎないか・・・?。
怒りに燃えた米艦隊は激しい砲撃で反撃をする。さっさと逃げた旧式戦艦「山城」「扶桑」こそ逃がしたものの、3隻の重巡「最上」「那智」「足柄」と1隻の軽巡「阿武隈」を撃沈。8隻いた駆逐艦も半数の4隻を撃沈した。日本艦隊に大損害を与えて撃退したのは良かったが、それでも新鋭戦艦5隻も傷物にされたことで、勝利の美酒に酔えない米軍プレイヤーなのであった。
一通り襲撃を終えた日本艦隊は、スリガオ海峡を南下して帰途につく。報復の怒りに燃える米機動部隊がそれを追撃する。大破していた戦艦「金剛」「長門」は航空攻撃に耐えられずに沈没。これまで比較的損害の小さかった「大和」にも数発の命中弾があった。が、この巨大な戦艦は、爆撃を受けて僅かに速度が低下しただけであった。
一方日本軍も航空攻撃で米機動部隊を襲う。戦艦を引き抜かれて直掩兵力が弱まった米機動部隊を第2航空艦隊と小沢機動部隊の艦載機が攻撃する。米軍のCAP隊と対空砲火はこの時も碌な仕事をしなかった。
軽空母「インデペンデンス」が複数の魚雷・爆弾の命中を受けて撃沈された。これで米軍の損失空母は2隻目になる。さらにその後はじめてのカミカゼ特攻機が米機動部隊を襲った。空母「フランクリン」に1機が命中。「フランクリン」の損害が比較的軽微だったのが不幸中の幸いだった。
本作では3隊のカミカゼ特攻隊が登場する。カミカゼ特攻隊はCAPや対空砲火の影響を全く受けず、攻撃力9で狙った艦を攻撃できる。さらに自動的に致命的命中が得られる。その威力は防御力8の正規空母ですら一撃で撃沈できる可能性があり、防御力4の軽空母や同3の護衛空母であればかなりの確率で一撃の元に葬り去ることができる。。
結果
時間の関係でここでゲーム終了とした。全12Turn中第7Turnの途中であった。プレイ時間はセットアップを含めて約8時間である。現時点における両軍の損害は以下の通りだ。日本軍の損害
沈没:戦艦「武蔵」「長門」「金剛」、重巡「利根」「筑摩」「熊野」「最上」「那智」「足柄」、軽巡「阿武隈」、駆逐艦6隻大破:重巡「鈴谷」「羽黒」
中破:戦艦「山城」、軽巡「能代」「矢矧」
小破:戦艦「大和」「榛名」、重巡「妙高」「鳥海」
連合軍の損害
沈没:戦艦「ウェストバージニア」、軽空母「インデペンデンス「ラングレー」、駆逐艦2隻大破:戦艦「メリーランド」「カリフォルニア」
中破:戦艦「テネシー」「サウスダコタ」、空母「レキシントン」
小破:戦艦「アイオワ」「ニュージャージ」「マサチューセッツ」「ワシントン」「ペンシルバニア」、空母「フランクリン」
ここで本作の勝利条件を説明しておく。本作の勝利条件は基本的には敵に与えた損害(沈没艦)の量によって決まってくる。現時点での勝利得点は、日本軍が26VP、連合軍が59VPである。このままなら連合軍がギリギリで勝利する。しかしゲーム終了時に生き残った日本艦艇は、その価値の75%(空母は100%)に相当するVPを日本軍は得ることになる。現時点で生き残った日本艦隊は、戦艦6隻、空母1隻、軽空母3隻、重巡4隻、軽巡6隻、駆逐艦26隻で、これをVP換算すると108VPに達する。これが全て生き残れば、VP的には日本側の圧勝だ。米軍としては、この後に小沢艦隊の空母群を全滅させて、さらに戦艦1隻、重巡4隻を撃沈して、やっと引き分けである。日本軍にはまだあの恐るべき「カミカゼ攻撃」が2隊も残っているので、このまま無傷という訳にもいかない。そう考えると、栗田艦隊を無視して序盤に小沢艦隊を叩き潰すことに専念した方が良かったのかもしれない。
勝利条件について少し付け加えると、栗田艦隊か西村・志摩艦隊のいずれかがレイテ湾ヘクス突入に成功すると、その時点で日本軍のサドンデス勝利となる、さらに日本軍は有力な米艦隊と交戦するまで、レイテに向けて前進しなければならない(若干の迂回移動は認められる)。だから温存によるVP狙いでフィリピン西方の安全な海に留まっていることは許されない。米軍がヘマをしなければ日本艦隊によるレイテ湾突入は相当困難なので、日本軍としてはレイテ湾突入を阻止しようとする米艦隊と一戦交えた後、全力で西方に向けて逃げるというのが常道になるだろう(史実通り)。日本軍がそのような動きを行った場合、ゲーム上でのバランスはそれなりに良好と思われる。
小沢艦隊について説明しておくと、米艦隊が小沢艦隊を発見した場合、60~80%の確率で「ブルズラン」を強制させられる。日本艦隊としては、史実通り小沢艦隊を囮にして米機動部隊を北に引き付けて、その間に栗田艦隊でレイテ湾突入を狙う作戦も成立する。そう考えると、日本側も色々と作戦を考える楽しみがあるゲームと言えよう。
全般的な感想だが、雑誌付録ゲームということで細部の詰めが甘く、特にルールやセットアップに致命的なミスがある。エラッタを確認できればプレイに支障はないが、エラッタを見つけることができなければ致命傷になるだろう。ちなみにエラッタの在処は以下を参照して欲しい。
https://www.atomagazine.com/errata/errata_is.pdf
そういった点を除けば結構楽しめるゲームだと思った。心持ち日本の航空攻撃力や酸素魚雷の威力が史実よりも強力なように思われるフシはあるが、逆に史実の米軍がラッキー過ぎたという見方もある。逆に砲撃戦能力は米軍の方が有利になっているので、栗田艦隊がオルデンドルフ部隊を打ち破ってレイテ湾に突入するのは相当困難なように思われる。ただし勝利条件の捻りが上手く、日本側にも十分に勝機はある。決して日本軍が一方的に叩きつぶされるだけのゲームではない。航空攻撃や水上戦の解決が少し手間だが、一方で戦闘シーンはゲーム上の「華」なので、ある程度手間をかけてプレイするのも悪くないと思う。
「レイテ沖海戦なんてゲームになるのか?」と正直疑心暗鬼であったが、プレイしてみると杞憂であり、十分に再プレイに耐える内容であった。同じシステムを使ってマリアナ沖海戦を再現する Clash of Carriers も発売されたので、こちらも機会を見つけてプレイしてみたい。




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