CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGだ。テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

「え、マリアナ沖海戦?、バランス悪そう」

その通り。そこでこのゲームは一捻りしていて、米軍の立場によるソロプレイゲームだ。なるほど、米軍なら勝って当然だし、ソロプレイゲームで「ちょっと苦戦したかな?」と思うぐらい苦戦して、最後は圧勝、というパターンは気持ちいいかもしれない。

今回プレイしたシナリオは、シナリオ6「The Battle of 19 June」。1944年6月19日の戦いを再現したシナリオだ。オーダーオブバトルは史実通り。ただし史実通りの戦果だと「不完全な勝利」と判定され、ちょっと寂しい。しかも史実の戦果は潜水艦による「ラッキーパンチ」がヒットしたという言わば「幸運な結果」に過ぎない。従ってこのシナリオで勝利を目指すためには、史実の如く守っているだけでは不十分で、積極的な航空攻撃を仕掛けて日本空母を叩く必要がある。とはいえ、日本軍もなかなか巧みだ。彼らはアウトレンジ戦法を取っているので、なかなか間合いを詰める事が難しい。また攻撃だけにかまけていると、日本機の反撃によって味方空母に思わぬ損害が出る可能性もある。このゲーム、日本機の攻撃力はなかなか侮れないのだ。

という訳でどうなるかわからないが、とにかく始めてみようと思う。

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Carrier Battle - Philippine Sea USN_TF58このシナリオでは、米軍の戦力は第58任務部隊(以下、TF58)の全戦力で、4個空母群(TG58.1~TG58.4)とバトルラインと呼ばれる戦艦部隊(TG58.7)の5個グループよりなる。このバトルラインが結構有難い存在で、日本機の多くはこのバトルラインから対空射撃を浴びた上で空母群に迫ってくるか、あるいはバトルラインに目を奪われて空母群ではなく戦艦群を攻撃してきたりする。とはいえ、日本機の中には狡猾な奴らもいて、彼らはバトルラインを避けて一直線に空母群に迫ってくることもある。

USN_SB2CこのTurn、まだ日本艦隊の出方がわからないので、まずは北方に索敵機を発進させる。西や南にはまだ日本艦隊の情報(Forceマーカーのこと)が近くにいないので、索敵は行わない。また日本機の来襲に備えて約200機の戦闘機を上空警戒(CAP)に上げた。そのうちTG58.3を発進した約50機は近くのグアム島に向かい、グアム島に対する制圧任務につく。

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Z_AC_Guam事態はいきなり目まぐるしく動いてきた。
まずグアム島から約40機の日本機が発進してこちらに向かってきたのである。グアム島上空で警戒していた約50機のヘルキャット隊が発進直後の日本機を襲い、半数以上を撃ち落としたが、生き残った20機弱の日本機は、TF58に向けて向かってきた。

さらにTF58のレーダーが、北方から近づく国籍不明機の編隊を捉えた。機数は約40機(5ポイント)である。ちなみにこのゲーム、日本機は1ポイントが約8機、米軍機が1ポイントが約12機を表す。上空警戒に当たっていたヘルキャット約100機が迎撃に向かう。

さらに索敵機からも報告が入る。

「敵空母艦隊らしきものみゆ、兵力不明」
「敵の位置、TF58の北方約130海里(4Hex)」
「130海里?、近い、近いじゃないか」

参謀達の声が飛ぶ。

USN_TBF飛来してきた日本機も気になるが、敵空母への攻撃も躊躇している暇はない。攻撃第一陣として戦爆連合約70機(6ポイント)からなる攻撃隊が「バンカーヒル」「レキシントン」「エンタープライズ」の各空母から発進して日本艦隊に向かう。上空援護用としてさらに約150機(13ポイント)のヘルキャットが増援としてCAPに上がっていく。これで上空警戒の戦闘機は、TF58付近に約300機、さらにグアム島警戒中の約50機の計約350機となった。

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TF58の北方約67海里では、米戦闘機と日本側攻撃隊との交戦が始まっている。日本機はどうやら護衛を伴っていなかったらしく、米戦闘機は「七面鳥撃ち」よろしく日本機を弄ぶが、撃墜したのは約15機(2ポイント)のみで、半数以上がなおもTF58に向ってくる。

南方グアム島方面では、グアム島を発進してきた日本機に対して追撃を行った米戦闘機が、残存機を全て撃墜した。しかし度重なる空戦により燃料残量が乏しくなった戦闘機隊がトボトボと帰路についてくる。

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USN_AS5攻撃隊の本命、戦爆連合約300機(25ポイント)が空母を発進し、2つのグループに分かれて日本艦隊に向かう。
日本側の第1波攻撃隊はTF58上空にまで到達していたが、そこで米戦闘機隊の袋叩きにあって壊滅する。

潜水艦「フィンバック」が、別の方向から「敵空母らしきものを雷撃、魚雷1本命中」との報告を送ってきた。慶事である。

レーダーが北西から接近してくる日本軍の第2波攻撃隊を捉えた。機数は60機弱(7ポイント)。ただちに上空警戒中のヘルキャット約100機が迎撃に向かう。

IJN_CV_Taiho攻撃隊の方は早くも日本艦隊上空に到達した。日本艦隊は、正規空母「大鳳」「瑞鶴」、改造空母「瑞鳳」「龍鳳」、戦艦「金剛」「榛名」「武蔵」、その他からなる有力な部隊だ。日本空母部隊の主力と言って良い。

写真03


良い敵、ござんなるかな

最初に突入した戦爆連合約70機は、日本機の迎撃と対空砲火によって半数以上を撃墜されて戦果なし。引き続いて約300機の米艦載機が2グループに分かれて日本艦隊に殺到する。

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最初のグループの攻撃によって空母「瑞鶴」が大破して行き足が止まる。旗艦空母「大鳳」にも複数の命中弾により損傷する。続いて突入してきた第2グループは、大破した「瑞鶴」を無視して「大鳳」と改造空母「瑞鳳」を攻撃。「大鳳」は多数の魚雷、爆弾を受けて沈没。「瑞鳳」も被弾により小被害を被る。

正規空母1隻撃沈、同1隻大破、改造空母1隻小破

合計400機近い大攻撃隊の戦果としては些か寂しい感じもするが、それでも日本艦隊に痛打を与えたことは確かだった。

IJN_AirRaid_1-Aしかし喜んでばかりもいられない。たった今攻撃した日本艦隊を発進したと思われる約150機(18ポイント)の攻撃隊がTF58に迫ってきたのだ。今までのとはわけが違う、日本空母機の本格的な攻撃である。

先に発見していた日本軍第2波攻撃隊がTF58上空に到達した。これを130機以上(11ポイント)のヘルキャットが迎え撃つ。日本側攻撃隊の大半はヘルキャットの餌食となり、僅かに生き残った数機も、空母艦隊前衛を固めていたTG58.7(バトルライン)の対空砲火を受けて四散した。

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つづく

Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 機動部隊 How Carrier Fought New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944