CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGで、テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

本作については、以前にシナリオ6「The Battle of 19 June」のAARを紹介した。

シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【1】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【2】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【3】

前回のプレイでは「空母7隻撃沈」というちょっと信じられない大戦果だったので、さすがに現実離れしていると思い、別シナリオをプレイしてみた。そこで選択したのが今回のシナリオだ。

  シナリオ8「Battle of Phillippine Sea

このシナリオは、6月19日~20日の2日間全体を扱うシナリオで、事実上ヒストリカルシナリオでは本作で一番大きなシナリオである。さてさてどうなることか・・・

前回までの展開 --> こちら

その後

Carrier Battle - Philippine Sea 夜に入ると艦載機の大半を失った日本艦隊は西に向けて退避していった。米艦隊も針路を西に転じてこれを追う。

翌6月20日。夜明けになって索敵機を飛ばそうとしたが、ここで待ったが入った。某参謀曰く。

「長官、索敵機を出すのは少し待ってください」
「なぜだ?」
「ルールを読むと、索敵機に発見された日本艦隊は、燃料補給を打ち切ってすぐに逃げる、とあります」
「だから、なんだ?」
「索敵機を出すのは止めましょう」
「ダミーはもう皆無なのだから、敵空母の位置は明白です」
「十分に距離を詰めてから索敵機を飛ばして敵空母の位置を確認し」
「敵を逃がさない距離から攻撃隊を放つのが良いと思いますが」
「下手に索敵して日本艦隊が逃げ出してしまえば、元も子もありません」
「よしわかった。索敵機の発進マテ」


米艦隊は全力で日本艦隊を追いかけ、午後に入って距離200海里に日本空母を捉えた。

写真13


しかし燃料補給を終えた日本空母は全力で西へ向けて退避していく。米索敵機が日本空母を発見したのが1730。最早今から発進しても夜までに日本空母を捕捉できる可能性は小さい。しかも日本空母は全力で逃げている。さらに言えば、風向きの関係で攻撃隊の発進は最終ラウンドになってしまう。帰還が夜になるのが危ぶまれたが、私は決断した。

「ただちに攻撃隊を発進せよ」


USN_AS6各空母から準備済みの攻撃隊が発進していく。戦爆連合240機からなる攻撃隊が2つのグループに分かれて日本空母を追う。距離は約230海里。日没が迫っているので、巡航速度を260ノットに上げて目標に向かう。燃費が悪化するので帰還が危ぶまれたが、とにかく目標海域に急ぐ。

写真14


IJN_CV_Shokaku日没直前に攻撃隊は日本艦隊上空に達した。燃料タンクは半分以上使い切っているが、とにかく攻撃を開始する。目標となった日本艦隊は、正規空母「翔鶴」と改造空母「隼鷹」「飛鷹」の3隻、護衛部隊は戦艦「金剛」と巡洋艦戦隊である。元々この部隊には正規空母「大鳳」がいたのだが、「大鳳」は午前中の燃料補給時に米潜水艦の雷撃を受けて魚雷数本が命中、轟沈してしまっていた。

写真15


攻撃隊は日本の戦闘機の妨害を突破し、空母艦隊に殺到する。攻撃目標は「翔鶴」と「飛鷹」の2隻。最初の攻撃では両艦共数発の命中弾を受けて損傷しただけだが、機関部は無事で全力戦闘が可能だった。
しかし続いて米側の攻撃第2陣が日本側の不意を突く形で日本艦隊上空に殺到してきた。この攻撃隊は損傷してやや対空火力の弱まった「翔鶴」「飛鷹」に攻撃を集中する。今回の攻撃では多数の魚雷・爆弾が両方の空母に命中し、両艦共轟沈してしまう。米側の損害は約20機である。

写真16


さて、問題はこれからである。攻撃自体は終わったが、攻撃隊は空母に帰還しなければならない。帰還は完全に夜になりそうだ。例の「サーチライトルール」のお世話になるかもしれない。

攻撃隊が空母上空に戻ってきたのは2130頃であった。各空母艦上ではサーチライトを点灯し、照明弾を撃ち上げて味方機を迎え入れる。付近に潜んでいる日本潜水艦の目標になる危険性があったが(確率10%)、幸い攻撃を受けることはなかった。着艦に失敗したり、不時着水等で約40機が失われたが、残った機体は無事空母に着艦できた。
ちなみに本作戦全体を通じて失われた空母艦載機の総数は約170機。一方で撃墜した日本機は400機以上である。

結果

今回の最終結果は以下の通りである。

日本側の損害

損失:空母「大鳳」「翔鶴」「飛鷹」「千歳」「千代田」、巡洋艦2個戦隊、駆逐艦2個戦隊
大破:空母「瑞鳳」
中破:空母「龍鳳」
航空機:55ポイント(440機)

米軍の損害

沈没:潜水艦「フィンバック」
小破:戦艦「アイオワ」
航空機:14ポイント(168機)


流石に前回の「空母7隻撃沈」に比べると戦果がやや小ぶりになったが、それでも「空母5隻撃沈、2隻撃破」というのは史実に比べると十分大戦果と言える。ちなみに勝利条件に当てはめるとVPは113点。「Overwhelming US Victory(米軍の大勝利)」という結果になった。

感想

勝利条件については日本空母を沈めた隻数に依存するので、チャンスがあれば攻撃した方が良い。今回はまさに日没直前の攻撃となり、史実に似た結果となった。幸い攻撃に成功したので勝利レベルを上げることができたが、もし最後の航空攻撃がなかったら、勝利レベルが1~2段階ぐらい低下していた可能性が高い。

今回は全部のルールを入れたいわば本作の最終版的なシナリオである。風向きルールや基地航空隊の増強ルールがあるので、シナリオ6に比べるとやや「手強い」シナリオとなっている。まあ対応を間違えなければ日本機の攻撃から空母を守り切ることは十分可能だ。運が悪ければ防空ラインを突破される可能性もあるが、空母が誘爆を起こしたり火災を起こさなければ、大きな損害を被ることはないだろう。一番怖いのは爆装した機体が飛行甲板に並んでいる時に爆撃されることだが、レーダー警戒によって攻撃を受けるまでの時差があるので、その間に対応可能だ。

ゲーム自体はとても面白い。テーマの関係上プレイヤーが負ける可能性はあまりないが、気を抜くとやられるという緊張感は心地よい。また日本機の攻撃の合間を縫って攻撃隊を発進させて日本空母を首尾よく攻撃できたら気持ちいいものだ。そういえば姉妹作品のCarrierもまだ未プレイだったので、機会を見つけてプレイしてみたいと思う。

Task_Force_38_off_the_coast_of_Japan_1945


Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 波まくらいくたびぞ アメリカ海兵隊の太平洋上陸作戦(上) New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944