TFotTR_CoverArt


The Fall of the Third Reich(以下、本作)は、2016年に米国Compass Gamesから発売されたSLGだ。テーマは第2次大戦後半の欧州戦線全体で、デザイナーはTed Raicer。Ted Raicerといえば、WW1を扱った超人気ゲームPaths of Gloryのデザイナーとして知られており、近年ではノルマンディ上陸戦を扱ったThe Dark Summerが高い評価を得ている。

本作は、1943年7月~45年6月までの2年間の戦いを1Turn=2ヶ月の計12Turnで再現する。1Hexは約30マイル、1ユニットは軍団(枢軸軍、西側連合軍)~軍(ソ連軍)だが、ドイツ軍の装甲師団と西側連合軍空挺師団は別ユニットになっている。マップはフルマップ2枚で、西はフランス全域から東はミウス川まで、欧州大陸が描かれている。シシリー島も含めたイタリア半島もマップに含まれるが、北アフリカや英国本土、スターリングラード方面やコーカサス地方はマップに含まれていない。1943年以降テーマのゲームならではの処置だろう。

TFofTR_Map


Z_Marker_Allied_Reactionゲーム手順は、移動・戦闘・機械化移動をプレイヤー別に繰り返す方式で、戦闘と機械化移動の間に相手プレイヤーのリアクションフェイズが挟まる。このリアクションフェイズが秀逸で、他のゲームのように「予備マーカー」のようなものは必要なく、特定の1スタック又は1Hexを指定し、スタックを指定した場合にはそのスタックが自由に移動戦闘でき、Hexを指定した場合にはそのHexにやって来ることができるユニットが移動戦闘できる。このシステムのため、予備ルールがあるにも関わらずプレイアビリティはすごぶる良い。ちなみにスタック制限は3ユニット+師団ユニット(装甲師団1個、空挺師団2個)となっている。

戦闘結果表は通常の戦闘比方式だが、戦闘比が1:1と2:1の間は戦力差方式となっている。戦闘結果は攻撃側全滅、防御側全滅等の極端なものもあるが、結構多いのが「1ステップを残して全滅」というパターン。ということは、元々1ステップしかない場合、「1ステップを残して全滅」という結果であっても事実上損害を受けないことになる。またドイツ軍ユニットの多くが可変戦闘力方式を採用しており、予め戦闘比を計算しておくことが難しいようになっている(そうはいっても戦闘比の予想は立てるけどね)。また戦闘システムは基本的にはMay Attack(攻撃実施は任意)だが、複数Hexから1Hexを攻撃する場合には攻撃側は自身のZOC内にいる全ての敵ユニットに対する攻撃義務が発生する(Must Attack)。

ZOCは通常通りだが、機械化移動フェイズには機械化部隊以外はZOCを持たない。従って前線を突破した機械化部隊が機械化移動で敵を包囲する縦深突破や電撃戦が実現可能となっている。さらにそれを阻止するためにもリアクションが重要になってくる。ただ苦言を述べると、機械化部隊とその他の部隊の区別が兵科マークなので少しわかりにくい。昔のゲームならまだしも、21世紀のゲームなら例えば移動力の配色を変える等の工夫が欲しかった所だ。

他には司令部ルールと補給ルールがあり、いずれも都市や町ヘクスが基点となる。従って攻撃側は敵支配下の都市を放置するのではなく、大都市を優先的に占領していく必要がある。司令部ルールは攻勢支援をも表していて、司令部の指揮範囲内にないユニットは様々な不利益を被る。連合軍は戦略爆撃で油田地帯を破壊することで、ドイツ軍が受け取る司令部能力を下げることもできる。

他には航空戦や上陸作戦のルールがあり、戦略爆撃も実施可能だ。

勝利条件は最終Turn終了時点でのVPヘクスの支配によって決まる。連合軍が勝利するためには少なくとも史実並みの戦果を残す必要がある。さらにソ連と西側連合国は、それぞれ相手よりも大きなVPを獲得しなければならない。逆にドイツ軍としては連合軍の連携を悪さを突く作戦も考えられる(やり過ぎるとウザいだけなので、ホドホドに…)。

今回、本作を4人でプレイした。プレイヤーの担当は、それぞれ西側連合国、ソ連、枢軸軍西部戦線(OKW)、枢軸軍東部戦線(OKH)だ。筆者はソ連を担当した。

SetUp

セットアップはシンプルだ。セットアップHexがユニットに記載されているので、その通りに配置していけばよい。

写真00

1Turn(1943年7-8月)

Z_Marker_CW_BH連合軍がシシリーに上陸し、ゲラ(Gela 33.43)とシラクサ(Syracuse 35.43)を占領した。ちなみにあと町を1つ、パレルモかメッシナを連合軍が占領すれば、イタリアが降伏する。

東部戦線ではドイツ軍はクルスク方面での攻勢を実施せず、ハリコフ正面で攻勢を仕掛けてきた。ドイツ軍はドネツ川の戦線を突破し、後方のソ連軍3個歩兵軍を包囲した。ソ連軍はそれを解囲する術がなく、包囲された3個歩兵軍は壊滅するしかなかった。

写真01


しかし無理な反撃をしたドイツ軍の戦線は大きく割かれてソ連軍はドイツ軍背後を突破し、ウクライナ全土へ雪崩れ込む。包囲下に陥ったドイツ軍は一転して窮地に陥った。

写真02


2Turn(1943年9-10月)

ハリコフを奪回したソ連軍はさらに進撃を続ける。しかし防衛体制を立て直したドイツ軍は強固な防衛ラインを構築し、ソ連軍による西方への突破を許さない。

写真03


なお西部戦線では、このTurn、イタリアが降伏した。

3Turn(1943年11-12月)

Z_Marker_STAVKA4ここでソ連側は重大なミスに気付いた。STAVKAマーカーの右上の数字を登場Turnと勘違いしてしまい、本来は使えるはずのSTAVKAマーカーを使っていなかったことに気が付いた。悔やむに悔やみきれない。これがあれば、第1Turnに包囲殲滅された歩兵3個軍は助けられたのみならず、突出したドイツ軍を包囲殲滅できたはずである。本当に惜しいことをした。

5Turn(1944年3-4月)

ここまで今一つ前進が振るわなかったソ連軍だが、スミー西方でドイツ軍3個軍団を包囲した。ちなみにこのTurnから枢軸軍プレイヤー1名が抜けたので、枢軸軍全部をプレイヤー1人で担当することとなった。

写真04


イタリア半島では連合軍が激戦地として知られているモンテカッシノを占領。ローマをその指呼に捉えた。

写真05


6Turn(1944年5-6月)

西側連合軍は史実通りノルマンディに上陸した。上陸は大成功で、海岸地帯を守っていたドイツ軍はまとめて消滅してしまう。海岸部にフルスタックするとまとめて壊滅する危険があることに枢軸軍プレイヤーが気づいた時には、既に手遅れだった。

写真06


東部戦線では、ソ連軍がドニエプル川を渡河し、ドニエプル川西岸地区でドイツ・ルーマニア連合軍計11個軍団を包囲した。これまでにない大包囲で意気上がるソ連軍であった。

写真07


つづく




Fortress Europa Game Journal 70-第三帝国の盛衰
図解 第二次世界大戦1939.9~1943.9 独ソ戦全史: 「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 Sicily 1943 遠すぎた橋