「沖縄の落日」は、Game Journal No.73の付録ゲームだ。発売は2019年で、気づけばもう6年も前の話だ。
(改めて調べなおして6年間という時間の経過を改めて驚く)
思えば、本作の発売した時期に丁度首里城の火災があり、そのためにかなり自粛した形で発売を余儀なくされたという経緯もあった。さらに思えば、今年2025年は沖縄戦から丁度80年目の節目になる。
そんな機会に本作を改めてプレイしてみた。

本作のテーマは沖縄本島における地上戦である。一応菊水作戦や大和の特攻などの海空戦も含まれているが、あくまでも「オマケ」的な扱いであり、メインは地上戦闘だ。
スケールは、1ユニットは大隊規模、TurnやHexのスケールは明記されていないが、1Turn=約4日、1Hex=1km弱程度と思われる。
地上戦闘の基本システムはいわゆる「I Go You Go」システムである。May Attack、ZOC進入即停止、スタック2枚まで、米軍は同一連隊のみスタック化である。
戦闘システムで特徴的なのは戦闘解決の方法で、戦闘比ではなく、防御射撃、攻勢射撃、白兵戦という手順を踏んで解決する。このあたり、作戦級ゲームながらも戦術級ゲームの色彩を色濃く持った作品といえる。戦闘システムが射撃と白兵戦に分かれているのも特徴的で、予想通り米軍は射撃力で優位に立ち、一方で日本軍は白兵戦で優位に立っている。尤も陣地に籠っている日本軍は敵の射撃力を反撃できるし、防御側に回ることが多い日本軍は敵に先に立って射撃できる。さらに機関銃や砲兵部隊等日本側の射撃力を強化できるアイテムもあるので、その射撃力は決して侮れない。対する米軍には火炎放射器など白兵戦力を強化するアイテムがある。
さらに本作の特徴的なのはチットシステム。これは「激闘!キエフ奪回作戦」や「激闘!バルジ突破作戦」等で採用されていたシステムで、砲兵支援や戦車支援、さらには優秀な指揮官や煙幕弾などをチットにて再現している。沖縄戦では、戦車や砲兵の他、日本軍の夜襲や擲弾筒などを表現している。
さらに本作ではチットはイベントチットとしても機能しており、例えば「大和特攻」や「日本軍の総攻撃」などはイベントとして表現されている。

という訳だが、早速プレイしてみよう。今回はソロプレイでプレイしてみた。

写真00


1Turn

米軍の初期戦力は、第96歩兵師団と第7歩兵師団の計3個連隊である。米軍はまず賀谷支隊が守る島袋地区を攻撃する。米軍は毎Turn1ヶ所以上のVPヘクスを支配していく必要がある。95高地がVPヘクスになっているので、米96師団の383連隊が砲兵支援を受けて攻撃を実施し、同地を占領。無事VPヘクスを確保した。

日本軍は最初の3Turnは賀谷支隊のみが移動できる。日本軍は防御力が高くなる陣地まで後退せず、敢えて前線に布陣した。VPヘクスの支配を遅らせることでVP面で優位に立つのが狙いだ。

写真01


2Turn

米軍はさらなる南下攻撃を行うが、日本軍の前進防御に阻まれてVPヘクスを奪取できなかった。日本軍の基本戦術としては陣地防御に固執せずにVPヘクスの前面で防御するのが正しい戦術と思われる。米軍にVPヘクスを取らせなければ日本軍の勝ちなのだから。

写真02


日本軍はイベントチットで「攻勢命令」を引いた。八原参謀の反対により攻勢作戦は中止となったが、八原参謀は牛島軍司令官の叱責を受け、以後幕僚会議で反対意見を述べることができなくなってしまう(「八原参謀失脚」)。

さらに日本軍は菊水特攻を仕掛けるものの、米艦載機の妨害を受けて攻撃は失敗に終わってしまう。



3Turn

米軍に戦闘爆撃機が登場した。このチットは隣接Hexにいる敵ユニットを2火力で事前攻撃できる。この攻撃が成功すれば突破口が形成できる所だったが、出目悪く攻撃に失敗した。
このTurnも米軍はVPチット獲得に失敗し、日本軍は次々とVPチットを獲得していく。

写真03


4Turn

日本軍は戦艦「大和」を中核とする第2遊撃部隊を出撃させた。降り悪く悪天候によって米艦載機は出撃できず、「大和」は見事に沖縄近海に突入に成功し、最終的には米艦隊の集中砲火を浴びて撃沈されるも、米戦艦2隻を大破して有終の美を飾った(2VP獲得)。

大和


地上でも米軍の前進は遅々として進まず、このTurnも米軍はVP獲得に失敗した。

写真04


5~7Turn

米軍はジリジリと前進し、普天間を占領して嘉數高地に迫る。しかし日本軍の巧みな遅退戦術の前にVPマーカーを全く取れない。さらに悪天候が追い打ちをかけて。このままではVPで勝てないと焦る米軍。
一方で日本軍も徐々に兵力を失っていく。

写真05


8~9Turn

日本軍の菊水特攻作戦が成功し、日本軍が1VPを獲得した。
一方米軍が大山付近の制高点を連続して2ヶ所制圧し、ついにVPチットを獲得した。

写真06


10~12Turn

その後米軍の進撃は相変わらず遅々として進まず、最終的に米軍が確保したVPマーカーは5個に過ぎなかった。獲得したVPマーカーは、米軍が4個、日本軍が12個。VP値は米軍が6VP、日本軍は32VPで、日本軍の圧勝に終わった。

写真07


感想

今回は日本軍の圧勝に終わったが、チットの出方に依存する部分が多く、現時点でバランス云々するのは難しい。今回日本軍は制高点で守らず、あえてその前の平地で米軍の攻撃を迎え撃つ戦術を採用したが、この戦術が強力で米軍はVPマーカ―をなかなか取れない。VPマーカ―は16個なので理論上少なくとも8個以上VPマーカーを取れば50%以上の勝率になるが、日本軍が上記の戦術を採用するとVPマーカーを8個以上取るのは至難の業だと思う。そもそも日本軍が防御に有利な地形を捨てて平地に犠牲部隊を置くという戦術自体が現実離れしているように思えてくる。

チットを使った戦闘システムも上記の理由であまり生かされず、単に手間が増えて面倒なだけ。まあそのあたりはソロプレイではなく対人戦の場合は変わってくるのかもしれないが・・・。

というわけでテーマは興味があったものの、実際にプレイしてみると「何だかなぁ」という感想のゲームだった。

戦う海兵隊タラワ



Game Journal 77-ガダルカナル Guam, Return to Glory
アメリカ海兵隊の太平洋上陸作戦(下) 沖縄、シュガーローフの戦い 特攻-空母バンカーヒルと二人のカミカゼ 日米史料による特攻作戦全史