戦藻録[新漢字・新かな版]上
宇垣纏
戦藻録は、連合艦隊参謀長として山本五十六を支えた宇垣纏海軍中将が記した戦時日誌である。昭和16年の開戦直前から、終戦の日に特攻出撃する直前まで、3年10カ月にわたり書き続けられた日記で、本書ではその貴重な日誌が現代の漢字・仮名で読みやすく再現されている
この上巻では、開戦直前から1942年12月までの時期を描いている。開戦前は開戦に至る不安感や覚悟が赤裸々に綴られており、開戦後は真珠湾攻撃の成功から第1段階作戦での成功で日記の筆致も快調。「アメリカはこれだからダメなんだ」的な記述が目立つ。一方ミッドウェーでの敗戦からガダルカナル戦で苦戦が続くようになると、次第に筆致も重くなり、「このままではダメだ」的な発言が目立つようになる。とはいっても第1次ソロモン海戦や南太平洋海戦で大戦果が報じられると「これでアメリカも顔色なし」的な強がりも目に付く。開戦後1年目に記した日記には、「過去1年間の戦果は、撃沈戦艦11、空母11、巡洋艦46・・・」等と記されており、現在の目から見ると過大な戦果に惑わされている様が描かれている。
その他本書で興味深い記述としては、潜水艦の沈没事故が非常に多いこと。日記の期間だけでも数隻の潜水艦が事故で失われている。また第24戦隊(「報国丸」「愛国丸」)への期待が大きいこと、甲標的への期待が大きいこと、それに対して、現在もてはやさている「零戦、大和」に対しては意外なほど冷淡で、特に零戦に対する礼賛や期待は皆無。いわゆる「零戦無敵」伝説の出所は、むしろ戦後の出版物に大きいことが伺える。
いずれにしても本書は第1級の太平洋戦争史料であり。単なる記録ではなく真実の記録として貴重な存在である。
お奨め度★★★★★
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