日本海軍艦艇の航跡
宮永忠将 イカロス出版
ウォーゲーム愛好家としても知られ近年はYouTube動画でも活躍している宮永氏が日本海軍の艦艇を艦種別に語った著作である。空母、戦艦などの艦種別に日本海軍艦艇の生い立ちとその戦跡を追いつつ、彼女らが戦局にどのように貢献したのか。あるいは貢献できなかったのかについて記述している。各章は比較的短文で読みやすく、読んでいて楽しい文章だ。戦艦、空母、重巡といった大型艦艇だけではなく、海防艦、給油艦、工作艦、さらには海軍設営隊や特設監視艇まで扱っている。さらに艦種別といっても航空巡洋艦、防空艦、戦時急増駆逐艦、特設航空母艦等、筆者が独自の視点で追加した艦種も取り扱っていて興味深い。
本書の主なテーマは組織論理とその結果としての艦艇整備である。日本海軍が国家防衛という本来の目的を離れて組織防衛に走った結果生まれたのがこれらの艦艇群であったという考えだ。そのために筆者は戦艦、空母、重巡といった海軍の「花形艦艇」に対しては厳しい指摘をし、その一方で戦局に応じて生まれてきた海防艦、特設監視艇などには比較的好意的な評価をしているように思える。筆者の指摘は十分首肯できる。
ただ本書はいくつかケアレスミスと思われる点もあるので指摘しておきたい。タラント空襲をグラディエーターの戦果としているのはまあポカミスとして、二水戦司令官を「田中司令」とするのは頂けない。さらに基地航空隊の所で、マレー沖海戦からレンネル島沖海戦まで陸攻隊による対艦攻撃の機会がなかったような書かれ方をしているが、これは事実誤認だろう(ニューギニア沖海戦、珊瑚海海戦、数次に渡るガダルカナル沖への艦船攻撃等)。
とまあ色々書いたが、日本海軍艦艇を扱った著作としては面白く、マニアでなくても楽しめる好著といえる。
お奨め度★★★
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