東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!

ムギタロー サンクチュアリ出版

東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!
経済という言葉に苦手意識を持つ人は少なくない。私自身も、ニュースで「金融緩和」や「財政赤字」といった語が出るたびに、どこか他人事のように聞き流していた。必要性は感じている。だが、理解にはほど遠い――そうした距離感を変えてくれたのが、本書『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』である。
著者のムギタロー氏は、東京大学大学院出身という理系のバックグラウンドを持ちながら、経済を「生活の言葉」で語る達人である。本書で用いられているのは、いわば「人口100人の架空の島」というメタファー。この小さな島に、今の日本社会を縮小投影し、制度・税・財政・為替といった複雑な経済要素を具体的な人物像とストーリーで描き出していく。
その構成は、驚くほど論理的でありながら、読者に負担を感じさせない。たとえば、政府の借金(国債)は「島の住民たちの中でお金を貸し借りしているだけ」という比喩で語られ、私たちが抱きがちな“家計と国家の混同”を巧みに解きほぐしてくれる。ここで描かれるのは、単なる知識の受け売りではない。自分の頭で経済をとらえ直すための視座なのだ。
また、MMT(現代貨幣理論)や税と社会保障の分配構造といった、やや抽象度の高い話題にも踏み込んでいるが、決して読者を置き去りにしない。豊富な図解と対話形式の構成によって、読者はまるで“島の一住民”として経済の動態に巻き込まれていくような感覚を得られる。
本書を読み終えたとき、私は初めて「経済」という語を、単なるニュースの背後にあるものではなく、「私たちがともに生きるしくみ」として実感できた。お金、税、制度、そして国家のあり方――そうしたテーマを自分の言葉で語れるようになることは、社会に生きる一員としての教養であり責任なのだと感じる。
経済書というと難解な理論書を想像しがちだが、本書はその対極にある。経済を自分の思考領域に引き寄せたいすべての人に、静かに薦めたい一冊である。

お奨め度★★★

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