
仁川上陸作戦-朝鮮戦争を転換させた奇跡の上陸作戦
1950年6月25日、北朝鮮軍は突如38度線を越えて南進を開始し、朝鮮戦争が勃発した。圧倒的な兵力差をもって韓国軍と米軍を圧迫し、ソウルを短期間で占領。国連軍は朝鮮半島南端の釜山周辺にまで押し込まれ、「釜山橋頭堡」と呼ばれる狭小な防衛線に追い詰められた。
この苦境を打開するため、マッカーサーは敵の背後を突いて補給線を断ち、戦線を逆転させる作戦を立案する。それが仁川上陸作戦であった。
1950年9月15日、朝鮮戦争における戦局を根本から覆す一大作戦が、韓国西部の港町・仁川において実行された。これが「仁川上陸作戦(Operation Chromite)」である。作戦を指揮したのは、国連軍総司令官ダグラス・マッカーサー元帥であり、奇襲上陸によって敵中深く切り込み、戦局を一挙に反転させることに成功した。
当時仁川港は、軍事的には魅力のある拠点である一方、上陸地点としては極めて困難な条件が揃っていた。
・干満差が10メートル近くあり、上陸可能時間が極めて限られる
・水路が狭く潮流が激しい
・市街地が近く、上陸後の展開に制約がある
しかし、マッカーサーはそれらの困難こそが北朝鮮側の油断を招くと判断した。実際、北朝鮮軍は仁川に大規模な防備を施しておらず、マッカーサーの「賭け」は功を奏したのである。
1950年9月15日、連合軍は艦砲射撃と航空支援のもと、仁川への上陸を開始。上陸部隊はアメリカ海兵隊第1師団を主力とし、短時間で市街地を制圧。9月28日にはソウルを奪還するに至った。
北朝鮮軍は南部戦線との連絡を絶たれ、急速に瓦解。国連軍は北進を開始し、戦線は38度線を越えて北朝鮮領内へと移った。
仁川上陸作戦は、ノルマンディー上陸作戦と並び、「史上もっとも成功した上陸作戦」の一つとされる。ただしこの成功は、やがて連合軍の北進と中国軍の参戦を招き、戦争の泥沼化という副作用を生むことにもつながった。
OCS Koreaで仁川上陸作戦を再現する
Korea:The Forgotten War(以下、本作)は、2003年にMMP Gamesから出版されたSLGだ。テーマは朝鮮戦争で、朝鮮戦争最初の1年間を1Hex=5マイル、1turn=3.5日、1ユニット=大隊~師団クラスで再現する。このゲームはOCSシリーズの一作品で、OCSシリーズはWW2前後の陸上戦闘を、共通のスケール、共通のルールで再現するゲームシリーズだ。機動戦と補給を重視したゲームシステムで比較的難度の高いゲームシリーズになっているけど、ダイナミックな展開で根強いファンがいるゲームシリーズである。
本作は、朝鮮戦争の前半の戦いを合計13本のシナリオで描いている。一番長いシナリオは全109Turnの「朝鮮戦争」で、朝鮮戦争最初の1年間を完全に再現する。逆に短いシナリオなら数Turnのものもある。
今回プレイしたのは、シナリオ5.6「仁川上陸作戦」。タイトルは仁川上陸作戦となっているが、仁川上陸作戦だけではなく、仁川上陸作戦以降の朝鮮戦争を全85Turnで再現するキャンペーンスタイルのシナリオである。だから仁川上陸作戦だけではなく、国連軍による釜山橋頭堡からの突破戦や北朝鮮軍の退却戦も再現できる。勿論時間があれば、国連軍による38度線突破や、中共軍による介入も再現できるが、多分時間的にはそこまでは進めないだろう。
今回は、この「仁川上陸作戦」シナリオを3人でプレイした(VASSALプレイ)。国連軍2人、北朝鮮軍1人である。筆者は国連軍の第8軍(釜山方面)を担当した。
1950年9月15日
このシナリオは、北朝鮮軍のプレイヤーターンが終わった時点で開始される。つまり、国連軍のプレイヤーターンしかない。現状、国連軍は釜山橋頭堡に圧迫されている状況だが、攻める北朝鮮軍も度重なる激戦により部隊の多くが消耗している。一方の国連軍は、釜山橋頭堡内部の国連軍は増援部隊の到着により兵力が充実し、むしろ包囲側よりも非包囲側の方が兵力が充実している状況であった。例えるなら、ノルマンディに上陸した直後の連合軍とドイツ軍のような状況といえるかもしれない。このシナリオでは、必然的に連合軍による仁川上陸作戦が実施される。
米第1海兵師団の3個連隊が仁川南の平地に無血上陸する。空からは米空母を発進したF-9FパンサーとF-4Uコルセアが空から支援する。余談だが、5年前に太平洋を圧した米空母部隊は、この時期では稼働空母が10隻まで減少していた。その中からこのゲームでは「ヴァレー・フォージ」と「フィリピン・シ―」の2隻が登場する。
上陸した海兵隊はソウルに向けて前進を開始し、漢江南岸に進出した。
釜山正面でも米第24歩兵師団を主力とする国連軍がソウル~釜山鉄道を守る北朝鮮軍第3師団に攻撃を仕掛ける。北朝鮮軍は大損害を受けて壊滅し、米軍の突破部隊が北朝鮮軍の補給基地Kumch'on(金泉、C44.24)への突破口を開いた。
1950年9月19日
国連軍が先攻を取ったので、さらに国連軍が進撃する。
釜山正面では、突破口を開いた国連軍が北朝鮮軍の補給基地Kumch'onを攻撃。ここを撃破して北朝鮮軍の補給基地を蹂躙する。これで釜山包囲網に布陣している北朝鮮軍の運命は決まった。
ソウル方面では、米第1海兵師団がついにソウル市内に突入する。ソウル市内には朝鮮半島を南北につなぐ鉄道線が集まっていて、そこを米海兵隊が押さえたのだから、朝鮮半島南部の北朝鮮軍はさらに苦境に陥る。
釜山橋頭保を包囲していた北朝鮮軍は、まるで蜘蛛の子を散らすように下がっていく。それでも補給切れの状態で無理矢理後退していくので、脱出に失敗した北朝鮮軍が次々と壊滅する。
戦況は変わった。
1950年9月22日
釜山橋頭保から北に向けて突破を開始した国連軍第8軍は、Kumch'onから西と北の二方向に向けて前線を広げていく。
西に向かったのは米第24歩兵師団を主力とする部隊で、韓国中部の要衝太田を攻撃。これを奪取した。この太田から鉄道線を北上すれば、海兵隊が奪回に成功したソウルに到達する。
北に向かった部隊は、半島東岸地区に残った北朝鮮軍の背後を遮断すべく急速に北上する。交通の要衝であるYougju(栄州、C50.33)を移動モードで突進してきた米第24歩兵師団所属の戦車大隊が占領し、北朝鮮軍の背後を遮断する。
一方の北朝鮮軍は韓国東部に取り残された部隊を可能な限り北上させる一方、ソウル北部に防衛ラインを敷いて国連軍の北上に備える。
1950年9月26日
時間の関係で、このTurnまでとした。
大田から北上した米第24歩兵師団の第19歩兵連隊がソウルに突入し、ここに仁川に上陸した第10軍団と第8軍が手をつないだ。またこれまでは側面援護に徹し、攻勢には参加していなかった韓国軍第1軍団も北上を開始し、逃げ遅れた北朝鮮軍を掃討しつつ前進する。歩兵・砲兵も含めてほぼ全軍が自動車化されている米軍部隊とは異なり、徒歩編制の韓国軍部隊はどうしても急進撃ができない。このあたり、部隊装備の違いによる機動力の違い等はOCSで良く再現されている部分だ。
戦線の先端部分では、米軍部隊が北へ逃げる北朝鮮軍の残存部隊を追い詰める。北朝鮮軍は主力を38度線まで後退させ、38度線の守りを固めている。
感想
今回はプレイ時間約6時間で3.5Turn進んだ。OCSはいつも時間がかかるのだが、今回は駒数が少なかったことと展開が一方的であったことにより比較的サクサク進めることができた。駒数の多いシリーズなら、こうはいかなかっただろう。個人的な感想だが、OCSは駒数が比較的少なくかつ地形的に前進路が限定されている場面に上手くハマるように思う。今回の朝鮮半島もそうだが、北アフリカやビルマ等も該当する。そういった意味でOCS Koreaは、OCSの中でも個人的には一番好きな作品である。









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