1863年夏、アメリカ南北戦争は重大な局面を迎えていた。南軍ロバート・E・リー将軍は、これまでの勝利を背景に、決戦を北部の地に求めるべくペンシルベニアへと進軍する。彼の望みは、北部住民に戦争の現実を突きつけ、ワシントン政府を揺さぶることにあった。これを阻止せんとする北軍ジョージ・G・ミード少将率いるポトマック軍もまた、急ぎ北上し、両軍はゲティスバーグの周辺でついに相まみえる。
7月1日から3日にかけて繰り広げられた戦闘は、南北戦争最大規模の会戦となり、両軍合わせて5万人を超える死傷者を出した。初日、南軍は戦場を掌握するが、やがて北軍は要地を固守し、最後はピケット突撃の失敗によって南軍の攻勢は挫かれる。この戦いは、南軍の北部侵攻を頓挫させ、戦争の帰趨を決する転換点として後世に記憶されている。
『Roads to Gettysburg II』(以下、本作)は、こうした歴史的背景を踏まえつつ、ゲティスバーグ会戦そのものと、その前段階となる行軍・機動をも含めて再現するウォーゲームである。プレイヤーはミードかリーとして決断を下し、歴史的な戦いに挑むことになる。
今回プレイしたのは、シナリオ5「Battle of Gettysburg」だ。本作はゲティスバーグの戦いについて戦いそのものだけではなく、戦い前後の状況を再現する作品だが、その中でこのシナリオ5はまさにゲティスバーグの戦いのクライマックスとなった7月1日~3日の戦いのみを扱ったシナリオである。本作の中でも比較的小規模なシナリオなので、GCACWシリーズの入門用としても適したシナリオといえる。
GCACW(Great Campaigns of the American Civil War)シリーズについて少し説明しておきたい。このシリーズは、米南北戦争の戦いを旅団規模を中心としたスケールで描いた作品群である。1Hexは実際の1マイル、1Turnは1日に相当し、1ユニットは、大隊~師団規模の部隊を表す。
ゲームシステムの特徴は、主導権と活性化、そして疲労レベルで、両プレイヤーは毎回ダイス(1d6)を振り合い、出目の大きいほうが麾下の1グループを活性化できる。同じ目の場合は南軍側が活性化できるので、南軍のほうが動きやすい。活性化の際には、ダイスを振って移動力を決め、その移動力の範囲内で移動や戦闘を行う。この移動力決定の際にも南軍が北軍よりも優位になっており、南軍の質的優位が強調させるようなシステムになっている。また移動力が固定ではなくダイス目によって決まるというのも本シリーズの特徴で、出目が小さいと移動もままならない。それを補うために強行軍のルールがあるのだが、これも下手をすると麾下部隊の大量脱走を招く恐れがある。
疲労が細かく表現されているのも本シリーズの特徴で、各ユニットは0~4の疲労レベルを持っている。ユニットが何らかの活動を行うと疲労レベルが1レベル上昇し、疲労レベルが4レベルに達したユニットはそれ以上活性化できない。しかし裏を返せば、疲労レベルが3以下なら何度でも活性化可能ということになる。これは個々のユニットが強力な南軍にとっては有利に働く。事実、1turnに2度も3度も南軍部隊が襲い掛かってくる様を見た日には、北軍プレイヤーは「やっとられんわ」という気持ちになるかもしれない。
戦闘は基本的には1ユニット対1ユニットの戦いになる。両軍の戦力比、指揮値の差がDRMとなり、両軍がダイスを振ってその差分で戦闘結果を判定する。出目差がマイナスなら攻撃側敗北、0~+1で痛み分け、+2~+3で攻撃側辛勝、+4以上で攻撃側大勝利という感じだ。一般に北軍は南軍に比べて1ユニットあたりの戦力が小さく、さらに士気値も不利なので、北軍側から積極攻撃を仕掛けるのは難しい。逆に南軍は+2ぐらいの修正値なら普通にゲットできるので、南軍による攻撃が主体となる。
攻撃の最重要になるのが「側面攻撃」の概念である。これは要するに包囲のことで、完全包囲の場合は攻撃側に+4のDRMが得られる。これはかなり大きく、戦闘の結果を左右しかねない。特に機動力において北軍に勝る南軍にとって側面攻撃は切り札的な存在であり、北軍戦線の一翼を突破して敵後方に回り込み、前線に残る北軍部隊を包囲殲滅のするのが南軍の常套戦術になる。一方の北軍にとっても運よく主導権を得た瞬間、敵中に突出してきた南軍部隊を包囲攻撃し、手痛い打撃を与えるチャンスが生まれてくる。
今回のプレイはVASSALによる通信対戦で、筆者は北軍を担当した。このシナリオは南軍がゲティスバーグへ向けて進撃して来る内容で、北軍はゲティスバーグを守り切るか、最悪でもゲティスバーグに隣接するヘクスを支配すれば勝機が見えてくる。
[USA_Buford_25]下の写真はゲーム開始時の状況である。写真中央やや左にゲティスバーグの街並みが広がる。ゲティスバーグに布陣するのは北軍Buford将軍麾下の第1騎兵旅団。そして北軍の増援部隊が南方と南東方向からゲティスバーグへ向けて急いでいる。しかし南軍の先鋒Hill将軍麾下のHeth師団がゲティスバーグから7マイルの地点に既に到達している。脆弱な騎兵旅団ではHeth師団の猛攻を支えることが到底できないだろう。
第1Turn(1863年7月1日)
シナリオ特別ルールで、北軍はTurn開始時に軍司令官活性化アクションを実施できる。これはMeade将軍の指揮範囲内にあるユニット10個までを選択し、ダイスを振って決めた移動力範囲で移動できるというものだ。この時出目が良ければ最大7Hex移動でき、北軍の歩兵師団をゲティスバーグの守りに入れることも可能であった。しかし今回出目は最低の1。軍移動ルールによって出目2が保証されているので、3移動力を使うことができたのは不幸中の幸いと言える。
この移動によりRaynolds将軍麾下の第1軍団とHoward将軍麾下の第11軍団がゲティスバーグ南方に戦線を張った。
そしてゲーム開始。南軍は予想通りHill将軍麾下のHeth師団がゲティスバーグに猛攻を仕掛けてきた。北軍Buford麾下の第1騎兵旅団は無理をせずに戦闘前退却を行う。それでも南軍のゲティスバーグ突入を一時的にせよ足止めした。
次に主導権を握ったのは北軍。Raynolds将軍麾下の第1軍団がゲティスバーグの周辺に布陣する。しかし北軍の第1軍団と第11軍団の間に大きな間隙が出来てしまい、ヤバイ状況になる。
幸いなことに、その直後にも北軍が主導権を得て、第11軍団を第1軍団の左翼に展開させたが、後から思えばヤバイ瞬間であった。
南軍はゲティスバーグの東方が手薄と見。Ewell将軍麾下の第2軍団を北軍の右翼にぶつけてきた。さらにLongstreet将軍麾下の南軍最強の第1軍団が、総司令官であるLee将軍を伴ってゲティスバーグに向けてきたのである。ゲティスバーグに近づいたLongstreetは、早速北軍第1軍団を攻撃する。その犠牲になったのは、北軍Wadsworth師団で、ゲティスバーグ前面から追い払われて、方法のていで後退していった。
続いてRobinson師団も撃破され、北軍第1軍団は事実上半身不随の状態である。ゲティスバーグ周辺の北軍も一掃され、ゲティスバーグの周辺は南軍が支配していた。この時点でのVPは、南軍7VP、北軍1VPである。
とはいえ、この時期、戦線後方から続々と北軍の増援部隊が到着し、戦線背後を固めつつあった。兵力も十分であり、南軍に対する反撃体勢も整いつつある。まだまだ負けたとは思っていない。否、十分に勝てると思っている北軍なのであった。
つづく









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