『Submarine』(以下、本作)は、WW2期における潜水艦戦を扱う戦術級ウォーゲームである。本作は、1976年にBattleline社から発表され、その後1977年に当時ウォーゲーム界最大のメーカーであったAvalon Hill社から発売されて広く知られるようになった。
プレイヤーは潜水艦側と護衛艦/輸送船団側に分かれ、潜水艦の隠密行動と護衛側の探知・対潜攻撃という非対称の構図を中心にゲームが展開する。潜水艦側は盤上に姿を見せず、プロットによって移動や魚雷発射を行い、護衛側はソナー(アスディック)による探知を試みながら船団を守る。潜水艦が探知されると盤上に姿を現し、そこからは追跡と攻撃の緊迫した戦闘が始まる。この隠匿移動と探知の緊張感こそが本作の最大の魅力といえる。
本作が扱う歴史的背景は、WW2大西洋および太平洋における潜水艦戦である。大西洋ではドイツUボートによる通商破壊戦と連合軍の護衛作戦が、太平洋ではアメリカ潜水艦による日本商船・艦艇への攻撃作戦が中心となる。もちろんドイツやアメリカ以外にも当時の主要海軍国(日英仏伊)の潜水艦がデータかされている。ゲームには国別ルールや夜戦、対潜兵器の違いなどが盛り込まれており、通常のソーナーや爆雷以外に、レーダーや短波レーダー、改造型ソーナー、スキッドやヘッジホッグといった対潜兵装も登場する。潜水艦側も、音響追尾魚雷や回走魚雷などが登場し、連合軍側にも対抗手段としてフォクサーなどが登場する。
ゲームシステムは基本ルールと上級ルールに分かれていて、基本ルールでは潜水艦がマップ上に表示されて隠匿移動なし。そういった意味で基本ルールはあくまでも練習用と考えた方が良い。
本作の醍醐味は上級ルールで、上述した潜水艦の隠匿移動ルールが導入される他、1Turnの長さが30秒から51秒に拡大されている。
「え、上級ルールの方が大雑把なゲームなの?」
と、一瞬勘違いしそうだが、実は違う。1Turnの長さが大きくなったことで艦の駒かい速度差が表現できるようになり、さらに長い時間の潜水艦戦をも再現できるようになった。もちろん実際の潜水艦戦は数分で終わるものではなく、数時間から場合によっては数日に及ぶこともある(例えば「信濃」を撃沈した「アーチャーフィッシュ」は、接触から雷撃開始まで約7時間を要している)。本作のスケールでそのような長期戦を再現することは不可能だが、潜水艦戦の最も派手な部分を再現したゲームだといえよう。1ユニットは潜水艦や水上艦船1隻を表し、魚雷や爆雷は1本1発単位で解決する。1ヘクスは実際の100ヤードとなっている。
コンポーネントは、3枚の大型マップとカウンターシート、ルールブックの他、潜水艦の位置、深度などを記録するログシート、国別に用意されたデータカードなどで構成され、重厚なつくりになっている
本作の特徴としてまず挙げられるのは、隠匿移動による高い緊張感である。潜水艦側は完全に姿を隠したまま行動し、護衛側は限られた情報を頼りに敵の位置を推測しなければならない。この構図は対人戦で特に盛り上がり、複数の護衛艦プレイヤーが協力して潜水艦を追い詰める展開は非常にドラマチックである。
一方で欠点として、シミュレーションとしての精密さは必ずしも高くなく、実際の潜水艦戦の挙動とは異なる部分も多い。また、潜水艦側のプロット作業が重く、護衛側は情報不足によるストレスを感じることもあるため、プレイヤーの好みによって評価が分かれる作品ともいえる。
なお本作のルールは、発売当時は「上級編」とみられていたが、現在の視点で見ると意外とシンプルである。ルールに精通したプレイヤーが1人参加していれば、初見でもプレイ不可能ではない。また個々のシナリオは20〜30Turnと長く設定されているが、慣れると1Turnの所要時間が短く、半日程度でシナリオ1本を完遂できる。
用意されているシナリオは戦術シナリオ12本とキャンペーンシナリオが1本。ただし戦術シナリオのいくつかは裸船団への攻撃や対潜部隊による潜水艦に対する攻撃といった練習用シナリオである。キャンペーンシナリオは複数の護衛艦、潜水艦が登場し、大西洋を押し渡る輸送船とUボートの戦いを8つの連続したゲームで再現する。さらに歴史シナリオに加えて「Design Your Own」シナリオも用意されており、プレイヤーが独自の作戦を構築することも可能である。
他の潜水艦ゲームと比較すると、『Submarine』は戦術級潜水艦ゲームの古典として独自の位置を占めている。たとえば、GMTの『Silent Victory』や『The Hunters』はソロ専用の潜水艦キャリアゲームであり、遭遇表や戦闘表を用いた物語性の強いプレイが中心であるのに対し、『Submarine』は対人戦の緊張感と隠匿移動の駆け引きを重視している。また、Avalon Hillの『Attack Sub』は冷戦期の潜水艦戦を扱う軽量級カードゲームであり、ヘクス戦術級の重厚さを持つ『Submarine』とは方向性が異なる。こういった点において、『Submarine』は現在でも代替の少ない独自の魅力を持つ作品であるといえる。
群狼(ウルフパック)
1941年3月初旬の1週間の間に、ドイツ軍は優秀な潜水艦艦長3名を失った。U-99の"オットー"クレッチマー、U-100のヨハイム・シェプケ、そしてスカパフロー奇襲で英戦艦「ロイヤルオーク」を撃沈したU-47のギュンター・プリーンである(クレッチマーは捕虜で、他2名は戦死)。このシナリオは、クレッチマー、シェプケ、プリーンの3名が援ソ船団OB293を攻撃する場面を再現するものである。今回は4名でプレイし、両軍2名ずつ。うp主はドイツ側を担当したルールは上級ルールを採用したが、魚雷の隠匿ルールは使用しなかった。魚雷隠匿ルールを導入するとかなりプレイアビリティが悪化するので、仕方がないといえよう。とはいえ、魚雷の隠匿ルールなしだとUボートで護衛艦艇を攻撃するのはかなり困難になる(護衛艦側は魚雷の針路を見て自由に回避できるから)。
登場兵力
ドイツ軍はUボート3隻。全てVIIB型で600隻以上生産されたUボートの代名詞VIIC型のベースとなったモデルである。英軍は護衛艦4隻と輸送船やタンカー計18隻が登場する。護衛艦はI級とJ級の駆逐艦が各1隻とブラックスワン級、フラワー級のコルベット艦が各1隻だ。全艦がレーダーを装備している。しかしスキッドやヘッジホッグといった前投兵器は装備していない。
ゲームの展開
船団に対するUボートの配置はある程度ランダムに配置される。3隻のUボートは、1隻が船団のほぼ正面、1隻が船団のど真ん中、そして1隻が船団左翼に位置していた。英船団は一斉に右回頭する。本作の問題点の一つとして「船団が自由に回頭でき過ぎる」という問題がある。潜水艦側から見て船団の針路を読めないので、魚雷を当てるのが甚だ困難なのだ。ルールブックには「1回のシナリオで回頭できる回数を決めておけばよいのでは」という提案がされていたが、これだと今度は一定回数回頭してしまうと、あとは船団は回頭できないのでUボートのカモになる。
この問題については、あとでもう一度考察したい。
第1Turnに船団左翼に位置していたU-99が、いきなり英護衛艦「グラディオラス」(フラワー級)のソーナーで探知されてしまう。船団に対する襲撃行動を取ろうとした矢先の出来事だったので、ドイツ側は慌てる。
「グラディオラス」は速力を上げてU-99を追う。しかし速度を上げたためにソーナーが聴音できなくなり、U-99を失探してしまう。その時、船団中央に潜んでいたU-100が放った魚雷1本が船団に迫る。しかし船団側の突然の右旋回でU-100の狙いはそらされてしまう。
かまわず「グラディオラス」は僚艦「スターリング」(ブラックスワン級)と共同で大量の爆雷をばらまく。しかし急速潜航したU-99は爆雷攻撃を回避。さらに大量の爆雷を投下したことで水中がかき乱され、英護衛艦のソーナーは全く効力を失ってしまった。
その頃、船団前方から目標を狙っていたU-47が潜望鏡を上げた。レーダーでU-47の潜望鏡を捉えたイギリス軍であったが、距離が遠いので対応できない。急いでU-47に向かった駆逐艦「ジャベリン」(J級)は、なんと回頭中の味方輸送船と衝突。両船とも航行不能となってしまう。
U-47の放った魚雷1本がタンカーに命中。このタンカーは沈没こそ免れたものの、航行不能に陥った。
その後、Uボートの攻撃で航行不能になった3隻が撃沈され、英軍は駆逐艦1隻、輸送船1隻、タンカー1隻を失った。しかしUボートの放った魚雷は、その大半が目標を捕捉できず、空しく走り去った。英軍も何度かUボートを探知するも、通常型爆雷でUボートに有効打を与えるのは難しく、結局Uボート全艦を取り逃がしてしまう。
勝利得点はドイツ側が44、イギリス側が16で、差は28。50点差以上でドイツ軍の勝利なので、このシナリオは英軍が勝利した。
つづく





