Game Journal No.99『秀吉兄弟!外伝 決戦!山崎&賤ケ岳合戦』(以下、本作)は、「幸村外伝」システムを基盤に、山崎合戦と賤ケ岳合戦という秀吉台頭の二大決戦を一冊に収めた作品である。どちらの戦いも、秀吉不在の序盤を弟・秀長が支え、やがて秀吉が戦場に姿を現すことで戦局が劇的に変化するという歴史的ドラマを、増援のランダム性や離反判定といった仕組みを通じて再現している。プレイヤーは、毎回異なる展開を生む増援の到着順に翻弄されながら、秀吉兄弟の政治力と軍事力が織りなす物語を追体験することになる。
ゲームシステムは軽快で扱いやすく、ZOCや戦闘、地形効果といった基本要素を押さえつつ、鉄砲・騎馬・槍といった兵科の特性を活かした戦術的な駆け引きが楽しめる。山崎合戦では、明智方が鉄砲隊で前線を支えながら後方の騎馬や槍で反撃を狙い、羽柴方は増援の投入先を慎重に見極める必要がある。賤ケ岳合戦では、序盤の柴田方の攻勢が強力である一方、中盤以降は羽柴方の増援が続々と登場し、戦局が反転していく。特に秀吉登場時に発生する離反判定は、政治的駆け引きが戦場に直接影響を及ぼすという戦国時代らしい緊張感を生み出している。
スケールはルールに明記されていないが、1ユニットが数百名~千名前後、1Turn=1時間前後、1Hex=数百メートルといった感じである、Turn数は、山崎合戦は8ターン、賤ケ岳合戦は12Turnで、ユニット数も少なく、プレイ時間は1〜3時間程度に収まる。マップはハーフサイズで、カウンター数も控えめなため、取り回しが良く、ソロプレイにも適している。
総じて本作は、秀吉台頭の二大決戦を、軽快なシステムと高いリプレイ性を備えた形式で再現した意欲作である。短時間で遊べる手軽さと、歴史的ドラマを体験できる深みが両立しており、戦国合戦ゲームの中でも独自の魅力を放つタイトルとなっている。
今回、本作の中から山崎合戦のシナリオをソロプレイしてみた
1Turn
秀吉方は足の速い黒田官兵衛、神子田正治を先行させて要衝宝寺と大山崎を押さえる。また高山右近、中川清秀両隊は天王山を目指す。
2Turn
両軍が接触。小競り合いが始まるも、大きな進展はなし。3Turn
秀吉軍の前衛部隊が登場し、光秀陣営に総攻撃を加える。しかし光秀の鉄砲隊に阻まれて大きな前進はできず。さらに折角天王山を制圧した高山右近も、明知鉄砲隊の攻撃を受けて山頂から撃退されてしまう。
4Turn
秀吉本隊がマップに登場するも、秀吉側は明智側防衛ラインの突破に苦しむ。5Turn
ようやく秀吉隊の一部が明智側防御線をわずかに切り裂いた。その間隙を抜けて中川清秀、堀秀政が前進する。しかしその後方には明智側の予備隊が待ち構えていた。
6Turn
次第に羽柴勢が明智勢を圧迫しつつあるものの、今一つ綺麗に突破が決まらない。そして残り時間が少ない。7Turn
遂に羽柴勢が明智勢の前線を突破した。各地で包囲された明智勢が動けなくなる。とはいえ、残り僅かに1Turnしかない。果たして勝敗の行方はいかに?8Turn
最終Turnである。明智勢をほぼ壊滅状態に追い込んだ羽柴側であったが、勝利条件である円明寺川の対岸へ秀吉側2ユニットを渡河させるかどうかはまだまだ微妙な所だ。
まず淀川河畔の湿地帯では、明智側の反撃によって羽柴側の橋頭堡が潰された結果、こちら側から円明寺川を渡河できる可能性はほぼ潰えた。
残るは円命寺街道の戦いである。黒田官兵衛、池田恒興による明智隊に対する攻撃。この戦闘で明智勢を撃破するか、少なくとも3Hex以上の後退を強いれば、秀吉側が勝利できる。
が、しかし、
戦闘結果は無情のB1。それでも士気チェックに耐えた羽柴側に対して明智勢は士気チェックに失敗。2Hexの後退を余儀なくされる。その間隙をついて黒田官兵衛が円明寺川の渡河に成功したが、そこまでだった。
秀吉側で渡河に成功したのが1ユニットだけだったので、勝利条件的には明智側の勝利に終わった。ただ、もしあと2Turn戦いが続いていれば、明知側の前線は完全に崩壊していただろう。
感想
ルールはシンプルでわかりやすい。ただし後退ルールの書き方が不明瞭である。後退ルールは戦闘後前進と同じルールが適用されると解釈すべきだろう(そうしないと矛盾が生じる)。その点を除けば、軽快にプレイできる好ゲームだ。
序盤、羽柴側がなかなか突破できなくてやきもきする。明智側の鉄砲隊が強力なので、特に開豁地が広がる大山崎周辺では明智側の鉄砲隊が猛威を振るう。羽柴側としては、兵力の優位を生かすため、地形の悪い山岳地帯に兵力を展開していく必要がある。
バランスは比較的良好で、両方に勝つチャンスがある。今回は明智側が勝利したが、ダイス目によれば羽柴側にも十分勝機がある。盤面全体ではいつかは羽柴側が明智側を撃破することになるが、そのタイミングによって勝敗が決まる感じだ。逆に最後まで明智側が前線を支えている状況では、羽柴側の勝利は覚束ないだろう。
そんなこんなで、短時間で山崎の戦いを楽しめる好ゲームといえる。個人的には、GJ96号「決戦!幕末維新」よりも本作の方が面白いと思う。
つづく







