米軍から見た沖縄特攻作戦

ロビン・リエリー/小田部哲哉訳 並木書房

米軍から見た沖縄特攻作戦 本書は「米軍から見た沖縄特攻作戦」というタイトルを掲げているが、実際にページを開いてみると、その中心にあるのはRPS(レーダー・ピケット・ステーション)に立つ米駆逐艦群と、そこへ殺到する特攻機との死闘である。日本側の史料だけでは断片的にしか把握できなかった「特攻攻撃の実態」を、米軍のアクションレポートや戦闘詳報をもとに克明に再現している点が、本書最大の価値だと感じた。

特攻と聞くと、多くの日本人は空母への体当たりや壮絶な最期を思い浮かべがちだ。しかし本書が描くのは、そうしたイメージとは異なる、沖縄周辺の洋上で孤立した駆逐艦を襲う特攻機の現実である。レーダー・ピケット艦は、米艦隊を守るために前方に突出して配置され、最も危険な位置で特攻の矢面に立たされた。そこに向かってくる特攻機の動き、迎撃の混乱、被弾の瞬間、乗員の奮闘――その一つひとつが米側の視点から淡々と記録されており、読むほどに「特攻とは何だったのか」という問いが立体的に迫ってくる。

米軍側の苦戦ぶりも随所に描かれている。特攻は決して「無意味な自爆」ではなく、米軍にとっては現実的な脅威であり、特に駆逐艦以下の小型艦艇には甚大な損害を与えた。しかし、だからこそ本書を読み進めるほどに、日本側が数千機もの航空機と若い搭乗員を失って得た戦果の小ささが、重く胸にのしかかってくる。沈めたのは数隻の駆逐艦、損傷させたのも一部例外を除けば殆どが駆逐艦以下の小型艦艇――その冷徹な数字を前にすると、怒りにも似た感情が湧き上がる。

特攻隊員の勇気や覚悟を否定するつもりはまったくない。だが、彼らの命を「戦略」として扱った側の判断が、果たしてどれほどの合理性を持っていたのか。本書は米軍側の資料を通じて、結果として特攻が日本の戦局を変える決定打にはなり得なかったことを、静かだが確かな筆致で示している。だからこそ、読み終えた後には、特攻という作戦がもたらした「失われた未来」の大きさに、深い無念さを覚えずにはいられなかった。

本書は、特攻を美化するでも、断罪するでもなく、ただ事実を積み重ねる。その事実の重さが、読者に考えることを強いる。特攻とは何だったのか、日本はなぜそこに至ったのか、そして同じ過ちを繰り返さないために何を学ぶべきなのか――。本書は、その問いを静かに突きつける一冊だった。

お奨め度★★★★



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