米軍カラーフィルムが捉えた日本軍の艦船・航空機・軍事施設
織田祐輔 イカロス出版
本書は、太平洋戦争中に米軍がガンカメラやムービーカメラで撮影した日本軍の艦船・航空機・軍事施設のカラー映像を解析し、静止画と解説としてまとめた資料集である。これらの映像は米国立公文書記録管理局(NARA)に保管されているが、多くは撮影日時や対象が未整理のままであり、著者は戦闘報告書などと照合しながら、映像に映る艦艇・航空機・施設の詳細や撮影場所・日付を特定していると説明されている。
本書には、2024年に新たに発見された「カラーフィルムが捉えた戦艦大和」の映像をはじめ、ヨークタウン、ホーネット、タイコンデロガなど米空母部隊による攻撃・空戦・雷撃・爆撃の記録が多数収録されている。掲載されている写真はカラーが中心で、一部モノクロ映像も含まれている。
本書を読み進めるうちにまず感じたのは、写真そのものは決して鮮明とは言えないにもかかわらず、カラー映像が持つ生々しさが圧倒的だということだった。白黒写真ではどうしても「歴史の一場面」として距離を置いてしまいがちだが、色がついた瞬間、そこに写る艦船や航空機が急に“現在のもの”として迫ってくる。錆びた船体の色、海面に散る油膜、爆炎の赤――それらが視覚的なリアリティを伴って迫り、戦場の空気を直接吸い込んでしまったような錯覚すら覚える。
特に胸を締めつけられたのは、米軍機の機銃掃射にさらされる日本艦船の姿である。写真は不鮮明であっても、そこに写る光景はあまりに悲惨だ。上空から降り注ぐ曳光弾の軌跡、その下で懸命に対空射撃を行う乗員たちがどんな思いでいたのかを想像すると、ページをめくる手が自然と重くなる。ガンカメラが捉えた映像は、撃つ側の視点であるがゆえに、戦争の非情さがより鮮烈に突き刺さる。撃つ者と撃たれる者の距離があまりに近く、そこにあるのは戦術でも戦略でもなく、ただ「生と死」が交錯する瞬間そのものだ。
さらに本書では単に写真を紹介するだけではなく、攻撃に晒される日本艦船の個艦名や日本機の搭乗員までも特定し、戦争の実態を明らかにしようとしている。これまで単に「駆逐艦xx沈没」とか「航空機x機未帰還」といった言葉で表現されていただけの戦争の実態が、生々しい事実として伝わってくる。
本書は、戦史研究の資料として非常に価値が高い一方で、読み手に強い感情を呼び起こす作品でもある。戦争を知識としてではなく、「色を持った現実」として突きつけてくる点に、本書の最大の意義があるのだと思う。
お奨め度★★★★