ヴィレル・ボカージュ-ノルマンディ戦場写真集
ダニエル・テイラー/岡崎淳子訳 大日本絵画
本書は、ヴィレル・ボカージュの戦いをめぐる膨大な記録写真を丁寧に整理し、撮影地点まで特定して再構成した点で、資料として非常に価値の高い一冊だった。とくに英軍車両の鮮明な写真が多く、クロムウェル戦車やユニバーサルキャリアの細部まで確認できるのは、戦史研究だけでなく模型制作の観点から見ても貴重である。ページ数こそ多くはないものの、写真の密度と情報量は期待以上で、当時の戦場の空気がそのまま切り取られているような迫力があった。
一方で、文章表現はややわかりにくく感じられた。戦闘の流れや部隊の動きを追っているはずなのに、説明が急に飛んだり、文脈がつながりにくい箇所が散見される。これは原著の構成に起因するのか、翻訳の問題なのか判断がつかないが、読み進めるうえで多少のストレスを覚えたのも事実である。写真の価値が高いだけに、文章がもう少し整理されていれば、戦闘の再現性がさらに高まっただろうと思う。
総じて、写真資料としての価値は非常に高く、ヴィレル・ボカージュ戦を具体的に理解するうえで欠かせない一冊である。ただし、文章の読みにくさがあるため、写真中心の資料として割り切って読む方が、この本の魅力を素直に味わえるのではないかと感じた。
お奨め度★★★