『South China Sea: Modern Naval Conflict in the South Pacific』(以下、本作)は、近未来の南シナ海を舞台にとした政治的、軍事的対立を扱うSLGで、2017年にCompass Gamesから出版された。プレイヤーは中国、米国、マレーシア、フィリピン、ベトナムといった地域の主要アクターを担当し、南シナ海周辺海域における政治的、軍事的な対立を扱う。
本作の特徴は、紛争開始前の政治的対立と紛争発生後の軍事的対決が同じゲーム上で再現されている点である。まず政治フェイズでは、最大6Turnの政治Turnを戦い、外交カードと交渉を駆使して情勢を自陣営に傾ける。2人プレイの場合、プレイヤーは米国陣営と中国陣営を担当するので、外交は基本的にゼロサムゲームになる。一方、各国を各個人が担当するマルチプレイヤーモードでは、グローバルパワーである米中と、ローカルパワーであるマレーシア、フィリピン、ベトナムの思惑が複雑に絡み合い、必ずしも単純なゼロサムゲームにはならないところが興味深い。
政治フェイズでは、「航行の自由作戦」、「中国沿岸警備隊の行動」、「武器売却」などの過激な行動を行うと、確率1/3で武力衝突が発生する。武力衝突が発生すると、政治フェイズはその時点で終了し、軍事フェイズに移行する。ちなみに政治フェイズが終わるまで武力衝突が発生しない可能性もあり、その場合は政治フェイズ終了時点でのVPによって勝敗が決まる。
軍事フェイズに入ると、舞台は1ヘクス45海里、1ターン3〜7時間という作戦級SLGが始まる、1ユニットは、航空機約24機、艦艇1~6隻、地上部隊は1個大隊を表す。戦闘システムは海空戦と地上戦で別システムになっていて、海空戦はミサイル戦が中心になっている。ミサイル戦では、攻撃力に2d6を加え、相手のMD(ミサイル防御値)を引いて、その結果が相手に与えるステップロスになる。例えば攻撃力4、2d6=8、MD=10の場合、4+8-10=2となり、相手は2ステップを失う。
シナリオは政治フェイズの有無や軍事フェイズの規模によって複数用意されており、メインのシナリオはシナリオ4「南沙諸島ミサイル危機」である。シナリオの本数は計5本で、中には短時間で終わるミニシナリオもある。
今回、本作のメインシナリオの「南沙諸島ミサイル危機」を2人でプレイしてみた。うp主は米国陣営を担当する。
まずは外交カードで政治プレイをする。米国陣営は、ベトナムで「軍事演習」を行い、有事の際にベトナムを米国陣営に引き込むための根回しをする。そして「航行の自由作戦」を発動し、紛争ぼっ発を狙ったが、不発。その後中国陣営はマレーシアで軍事演習を実施。さらに「武器輸出」により緊張を高めたが、ここでも紛争は起こらず。
結局政治Turnが終わるまで紛争は勃発せず、そのままゲーム終了となった。この時点でのVPは8VPである。ちなみにこのゲームのVPは10VPがニュートラルで、それより小さい場合は米国陣営が、それより大きい場合は中国陣営が有利となる。今回の8VPというのは、ベトナムの勝利となった。ちなみに5人プレイの場合、ベトナム、マレーシア、フィリピンといったローカル勢力は、米中どちらか一方が大勝しないようにVP調整する必要がある。
さすがに政治Turnだけでは面白くないので、軍事Turnもプレイしてみることにした。軍事Turnは通常のウォーゲームにおけるTurn、Hex制を採用しているが、海空戦がメインなので手順がやや特殊である。まず両軍が陣営順に海空軍の移動を行った後、海空戦、地上移動、地上戦の順番に進んでいく。ここで肝になるのは移動順で、常に中国、米国、中小国の順になる。ここで重要なのは中国と米国の移動順。常に中国の後に米国の移動になっているので、米国側は中国側の移動を見た後で移動できる。これはあとで動く米国側に圧倒的なアドバンテージを与える。
一例をあげよう。潜水艦で魚雷攻撃を行うケースを考える。潜水艦の魚雷攻撃の射程距離は0Hex。つまり目標と同一Hexにいなければならない。しかし中国の潜水艦が米艦隊と同一Hexに進入しても、その次の移動で米国艦隊は逃げてしまう。だから中国潜水艦が米艦隊を雷撃するチャンスはまずない。逆に米国の潜水艦は比較的容易に中国艦隊を捕捉できる。さらに艦対艦のミサイルでは、一般的に米艦隊の方が対艦ミサイルの射程距離で勝っているので、米艦隊は容易に中国艦隊をアウトレンジできる。
一応本作には移動妨害ルールがあり、水上艦から5hex以内なら敵潜水艦、水上艦の移動を妨害できる可能性がある。とはいえ、移動順による有利・不利の違いは大きく、これは後に実戦で証明されることになる。
ゲームの話に戻ろう。
第1turnは両軍とも巡航ミサイル攻撃を実施できる。逆に第2Turn以降は巡航ミサイルを使用できない。これは米中双方のGPSネットワークが無力化されるため、としているが、デザイナーの狙いは弾薬管理の煩雑さを解消することだと思う。これは旨い方法で、面倒な弾薬管理ルールなしで巡航ミサイル攻撃を再現できるのは嬉しい。
中国軍は巡航ミサイルをベトナムのカムラン湾に叩き込む。ベトナムはまだ参戦していなかったが、「軍事演習」カードによっていつでも参戦できる状況なので、中国側は先手を取ってきたわけだ。この攻撃によって北ベトナム防空システムは壊滅。ベトナム空軍の虎の子Su-30Mk2フランカー戦闘機も地上で撃破されてしまう。なお、中国軍が先制攻撃を仕掛けたので、米国側が1VPを獲得する。
米国側も巡航ミサイル攻撃を実施する。目標は南沙諸島の中国軍だ。主目標はSAM陣地でこれを無力化した後、要塞とJ-11フランカーを地上撃破した。
ベトナムの参戦を受けて中国軍の大規模攻撃隊がカムラン湾に飛来する。潜水艦を除くベトナム海軍は、この攻撃でほぼ壊滅。わずかに潜水艦のみが難を逃れて南に退避していった。
このTurn終了時点でマレーシアが中国側に立って参戦する。これで米国+ベトナム連合vs中国+マレーシア連合の戦いとなる。

F-35ライトニング戦闘機の攻撃でMiG-29戦闘機隊を撃破したが、Su-27フランカーの編隊は生き残った。またサンダカン基地を出撃したマレーシア艦隊に対しては米空母部隊の水上部隊が対艦ミサイルによる攻撃を実施し、その悉くを海の藻屑とした。
隠匿配置されていたバージニア級攻撃型原潜が中国艦隊を捕捉した。雷撃戦で揚陸艦にダメージを与えたものの、そのあとの対潜攻撃を受けて海の藻屑となってしまう。やはりこの種のゲームでは火力集中がとにかく大事だと悟った次第。
「隠密性?、なにそれ、美味しいの?。」
[US-DDG-Zumwalt-2]米艦隊は南沙諸島への攻撃に先立って対地ミサイルによる地上攻撃を実施した。長距離巡航ミサイルとはまた違う種類の攻撃らしいが、米海軍のタイコンデロガ級の巡洋艦とズムウォルト級駆逐艦、中国海軍では55型(南昌級)駆逐艦がこの種の攻撃力を持っている。この攻撃で前方展開していた中国海軍J-31戦闘機は地上で撃破された。
さらに南沙諸島の中心地というべきヒューズ礁に対して米空母機が攻撃を加える。J-31戦闘機がこれを迎え撃つが、ステルス性能に勝るF-35ライトニングの先制攻撃を受けてJ-31は撃墜されてしまう。
つづく



本作の特徴は、紛争開始前の政治的対立と紛争発生後の軍事的対決が同じゲーム上で再現されている点である。まず政治フェイズでは、最大6Turnの政治Turnを戦い、外交カードと交渉を駆使して情勢を自陣営に傾ける。2人プレイの場合、プレイヤーは米国陣営と中国陣営を担当するので、外交は基本的にゼロサムゲームになる。一方、各国を各個人が担当するマルチプレイヤーモードでは、グローバルパワーである米中と、ローカルパワーであるマレーシア、フィリピン、ベトナムの思惑が複雑に絡み合い、必ずしも単純なゼロサムゲームにはならないところが興味深い。
政治フェイズでは、「航行の自由作戦」、「中国沿岸警備隊の行動」、「武器売却」などの過激な行動を行うと、確率1/3で武力衝突が発生する。武力衝突が発生すると、政治フェイズはその時点で終了し、軍事フェイズに移行する。ちなみに政治フェイズが終わるまで武力衝突が発生しない可能性もあり、その場合は政治フェイズ終了時点でのVPによって勝敗が決まる。
軍事フェイズに入ると、舞台は1ヘクス45海里、1ターン3〜7時間という作戦級SLGが始まる、1ユニットは、航空機約24機、艦艇1~6隻、地上部隊は1個大隊を表す。戦闘システムは海空戦と地上戦で別システムになっていて、海空戦はミサイル戦が中心になっている。ミサイル戦では、攻撃力に2d6を加え、相手のMD(ミサイル防御値)を引いて、その結果が相手に与えるステップロスになる。例えば攻撃力4、2d6=8、MD=10の場合、4+8-10=2となり、相手は2ステップを失う。
シナリオは政治フェイズの有無や軍事フェイズの規模によって複数用意されており、メインのシナリオはシナリオ4「南沙諸島ミサイル危機」である。シナリオの本数は計5本で、中には短時間で終わるミニシナリオもある。
今回、本作のメインシナリオの「南沙諸島ミサイル危機」を2人でプレイしてみた。うp主は米国陣営を担当する。
政治Turn
まずは外交カードで政治プレイをする。米国陣営は、ベトナムで「軍事演習」を行い、有事の際にベトナムを米国陣営に引き込むための根回しをする。そして「航行の自由作戦」を発動し、紛争ぼっ発を狙ったが、不発。その後中国陣営はマレーシアで軍事演習を実施。さらに「武器輸出」により緊張を高めたが、ここでも紛争は起こらず。
結局政治Turnが終わるまで紛争は勃発せず、そのままゲーム終了となった。この時点でのVPは8VPである。ちなみにこのゲームのVPは10VPがニュートラルで、それより小さい場合は米国陣営が、それより大きい場合は中国陣営が有利となる。今回の8VPというのは、ベトナムの勝利となった。ちなみに5人プレイの場合、ベトナム、マレーシア、フィリピンといったローカル勢力は、米中どちらか一方が大勝しないようにVP調整する必要がある。
1Turn
さすがに政治Turnだけでは面白くないので、軍事Turnもプレイしてみることにした。軍事Turnは通常のウォーゲームにおけるTurn、Hex制を採用しているが、海空戦がメインなので手順がやや特殊である。まず両軍が陣営順に海空軍の移動を行った後、海空戦、地上移動、地上戦の順番に進んでいく。ここで肝になるのは移動順で、常に中国、米国、中小国の順になる。ここで重要なのは中国と米国の移動順。常に中国の後に米国の移動になっているので、米国側は中国側の移動を見た後で移動できる。これはあとで動く米国側に圧倒的なアドバンテージを与える。
一例をあげよう。潜水艦で魚雷攻撃を行うケースを考える。潜水艦の魚雷攻撃の射程距離は0Hex。つまり目標と同一Hexにいなければならない。しかし中国の潜水艦が米艦隊と同一Hexに進入しても、その次の移動で米国艦隊は逃げてしまう。だから中国潜水艦が米艦隊を雷撃するチャンスはまずない。逆に米国の潜水艦は比較的容易に中国艦隊を捕捉できる。さらに艦対艦のミサイルでは、一般的に米艦隊の方が対艦ミサイルの射程距離で勝っているので、米艦隊は容易に中国艦隊をアウトレンジできる。
一応本作には移動妨害ルールがあり、水上艦から5hex以内なら敵潜水艦、水上艦の移動を妨害できる可能性がある。とはいえ、移動順による有利・不利の違いは大きく、これは後に実戦で証明されることになる。
ゲームの話に戻ろう。
第1turnは両軍とも巡航ミサイル攻撃を実施できる。逆に第2Turn以降は巡航ミサイルを使用できない。これは米中双方のGPSネットワークが無力化されるため、としているが、デザイナーの狙いは弾薬管理の煩雑さを解消することだと思う。これは旨い方法で、面倒な弾薬管理ルールなしで巡航ミサイル攻撃を再現できるのは嬉しい。
中国軍は巡航ミサイルをベトナムのカムラン湾に叩き込む。ベトナムはまだ参戦していなかったが、「軍事演習」カードによっていつでも参戦できる状況なので、中国側は先手を取ってきたわけだ。この攻撃によって北ベトナム防空システムは壊滅。ベトナム空軍の虎の子Su-30Mk2フランカー戦闘機も地上で撃破されてしまう。なお、中国軍が先制攻撃を仕掛けたので、米国側が1VPを獲得する。
米国側も巡航ミサイル攻撃を実施する。目標は南沙諸島の中国軍だ。主目標はSAM陣地でこれを無力化した後、要塞とJ-11フランカーを地上撃破した。
ベトナムの参戦を受けて中国軍の大規模攻撃隊がカムラン湾に飛来する。潜水艦を除くベトナム海軍は、この攻撃でほぼ壊滅。わずかに潜水艦のみが難を逃れて南に退避していった。
このTurn終了時点でマレーシアが中国側に立って参戦する。これで米国+ベトナム連合vs中国+マレーシア連合の戦いとなる。

2Turn
フィリピン南方海域、別名スル海。かつて太平洋戦争末期のレイテ沖海戦で日本艦隊が米艦隊との決戦を求めてレイテへ向けて進撃した海域である。今、その海域を空母3隻を基幹とする米機動部隊が西へ向けて進んでいた。マレーシア参戦の報を受けて、マレーシア領ボルネオ北部サンダカン基地に対し、米空母部隊は攻撃隊を発進させた。南沙諸島への攻撃に先立ち、その障害になるボルネオ島に駐留するマレーシア海空軍を無力化するのが目的である。
F-35ライトニング戦闘機の攻撃でMiG-29戦闘機隊を撃破したが、Su-27フランカーの編隊は生き残った。またサンダカン基地を出撃したマレーシア艦隊に対しては米空母部隊の水上部隊が対艦ミサイルによる攻撃を実施し、その悉くを海の藻屑とした。
3Turn
隠匿配置されていたバージニア級攻撃型原潜が中国艦隊を捕捉した。雷撃戦で揚陸艦にダメージを与えたものの、そのあとの対潜攻撃を受けて海の藻屑となってしまう。やはりこの種のゲームでは火力集中がとにかく大事だと悟った次第。
「隠密性?、なにそれ、美味しいの?。」
[US-DDG-Zumwalt-2]米艦隊は南沙諸島への攻撃に先立って対地ミサイルによる地上攻撃を実施した。長距離巡航ミサイルとはまた違う種類の攻撃らしいが、米海軍のタイコンデロガ級の巡洋艦とズムウォルト級駆逐艦、中国海軍では55型(南昌級)駆逐艦がこの種の攻撃力を持っている。この攻撃で前方展開していた中国海軍J-31戦闘機は地上で撃破された。
さらに南沙諸島の中心地というべきヒューズ礁に対して米空母機が攻撃を加える。J-31戦闘機がこれを迎え撃つが、ステルス性能に勝るF-35ライトニングの先制攻撃を受けてJ-31は撃墜されてしまう。
つづく





