「The Datk Sands」(以下、本作)は、2018年に米GMT社から出版されたシミュレーションゲームである 。テーマは北アフリカ戦役で、1940年から42年までの北アフリカ戦を再現する。デザインはTed S.Raicer。WW1を扱った傑作「Paths of Glory」や、WW2東部戦線を扱った「The Dark Valley」のデザイナーとしても知られている。
本作のシステムは、デザイナー氏の前作である「The Dark Valley」のものを踏襲している。移動、攻撃、増援、補給等のチットをカップに入れて、そこから1枚をランダムに引いて、決められた行動を行うというシステムを採用している。このシステムのおかげでゲームの流れが流動的になり、それが流動的な砂漠戦を再現するのに適している。なお、一方のチットが連続して出続けることの弊害を避けるため、原則としていずれか一方のチットが2回連続して出た場合、次は相手のチットになる。
ゲームスケールは1Turn=1~2ヶ月、1Hex=4.5又は9マイルである。Hexスケールに幅があるのは、主戦場であるトブルク周辺を含む中央マップは1Hex=4.5マイル、それ以外のマップは1Hex=9マイルと差をつけているためである(当然移動コストも異なる)。1ユニットは大隊~師団を表す。
シナリオは4本で、それぞれ2~3Turnの長さである。他に1940年から42年12月までの北アフリカ戦全般を描いたキャンペーンシナリオがある。プレイ時間は不明だが、シナリオの場合は2~6時間、キャンペーンなら20~40時間ぐらいかかるのではないだろうか。
今回、一番簡単そう(と思われる)シナリオ1「コンパス」をVASSALでプレイしてみた。これは、1940年12月に開始された英軍によるリビア進攻戦を再現するシナリオである。史実は英軍が圧倒的な勝利を収めたことになっているが、果たしてどうなることやら。
1Turn(1940年12月)

悩んだ末、英軍が選んだのは「移動1/2」である。可能な限りイタリア軍戦線に浸透し、次の移動に備える。
次に英軍は「優先アクション」で「オーコナー」チットを選択した。英軍部隊はエジプト領内に展開するイタリア軍の背後に回り込み、イタリア軍の連絡線を遮断する。2ヵ所でイタリア軍を撃破した英軍は、リビアに向けて進撃路を開いた

次に引いたのは「枢軸軍戦闘」。1ヵ所攻撃できる場所がある。英軍Selby自動車化歩兵連隊(3-3-8)に隣接している場所だ。2-1で攻撃する。結果はDR。Selbyは荒地を抜けて後退していく。
その後、枢軸軍のチットが2回続いたが、ルール18.7.2の制約(同一陣営は連続2回までしかアクションを実施できない)に引っかかって無効になる。その後に「補給」を引いた。エジプト領内のイタリア軍は一挙に補給切れとなる。

次が「枢軸軍1/2移動・戦闘-1」。枢軸軍は「移動1/2」を選択する。
次に「英軍移動・戦闘」を引いたが、既に英軍は移動を2枚使った後だったので「戦闘」しかない。「戦闘」を選択したものの攻撃は実施せず。
次に「枢軸移動」。リビア国境から後退してトブルク前面に2線からなる防御ライン構築する。
その後のチット引きは省略するが、Turn終了時、英軍の最前線はソルーム(Sollum 2141)まで到達。リビア国境を望む地点である。
2Turn(1941年1-2月)
英軍は主導権チットとして「英軍移動」を選択した。エジプト国境に守備兵を残しつつ、英軍主力はリビア領内に侵攻する。
英軍は「優先アクション」で「オーコナー」チットを選択した。イタリア軍戦線に向けて前進する英軍。戦車部隊を含むイタリア軍3ユニットを包囲した英軍は、これを包囲殲滅した。イタリア軍の戦線に大穴が開く。
次に「枢軸軍移動1/2・戦闘-1」を引いた。枢軸軍は「移動1/2」を選択して部隊を後退させる。しかし完全な戦線を引くのは難しい。トブルクへ向けて突破のチャンスが広がる英軍なのであった。

その次に「補給」を2枚連続で引いた。影響なしだ。
次に「枢軸軍移動1/2・戦闘-1」を引いた。枢軸軍にとっては僥倖である。トブルクを守る防衛ラインを構築する。
次に引いたのが「英軍1/2移動・戦闘-1」。一歩遅かったか。英軍はトブルクまであと2ヘクスに迫ったが、そこで力尽きた。第2Turn終了時の状況が以下の通りである。
トブルクを取れなかったので「イギリス軍の限定的勝利」となった。多分英軍指揮官たる私は、英本土に戻り、デスクワークで軍職を終えることになりそうだ。
感想
ルール量的には中級ゲームだが、ゲームの流れはシンプルである。チットの動きに支配されるので、運に左右される部分が大きい。ルール18.7.2項によって完全な「運のし」ゲームではなく、制約条件を見越した動きが必要になる。ただし、このシナリオで英軍が「史実通りの勝利」を収めるのは、かなり難しいのではないかと思っている。次には他のシナリオにもチャレンジしてみたい。
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