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1987年9月27日、チェコとの国境に近い西ドイツ領内。ソ連第30親衛機械化歩兵師団の戦車大隊が西に向けて進撃を続けていた。森林地帯に待ち伏せるのは、ドイツ連邦軍(FRG)のレオパルド2A4。ドイツ連邦軍誇る新鋭戦車である。数は僅か4両だが、その威力を発揮できるか。

という訳で現代戦車戦ゲームの傑作「MBT」シリーズ。その拡張キットである「FRG」のソロプレイである。選択したシナリオは、シナリオ13「Over Hill-and-Date」。森林地帯を進撃するソ連軍増強戦車大隊。T-64BV戦車13両、BMP-1P歩兵戦闘車9両からなる。それを迎え撃つドイツ連邦軍は、最新鋭のレオパルド2A4戦車4両と歩兵部隊。西ドイツ軍にとっては、数少ない戦車数を歩兵で如何に補うかがポイントとなるだろう。なお、選択ルールは7.1士気ルールを除いて全採用としたが、ルールの適用を忘れている場合があるかもしれない。

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1Turn

T-64BV_179このシナリオは、マップの北部が平地、南部が森林地帯となっている。森林地帯の方が視界が効かないため、突破に時間がかかるが、NATOの優れた長距離射撃能力が生かしにくい。その一方で平地は移動が容易だが、NATO側の防御射撃に晒されるリスクがある。

ソ連側は兵力の優位を生かすため、平地を強引に突破することにした。MBT(主力戦闘戦車)を前に立てて、IFV(歩兵戦闘車両)はその後方から前進する。IFVには歩兵を乗車させたままとし、戦車部隊の交戦状況を見ながら、必要に応じて下車戦法を使う予定だ。
進入するソ連軍戦車に対し、高地に布陣する西ドイツ軍のレオパルドが、距離1000m(10Hex)からまず初弾を発射する。命中率70%が期待されたが、初弾は残念ながら外れであった。さらにミラン対戦車ミサイルの分隊が距離1400m(14hex)からミサイルを発射したが、これまた外れである。

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2Turn

Leopard2A4_186お互いに視界内に両軍の戦車が布陣した。数で劣るレオパルドだったが、高度の優位とCIS(車長用独立視察装置)の利点を生かすため「射撃」命令を採用する。対するソ連軍は、数の優位を生かすべく「Shprt Halt」(移動・射撃)命令を採用した。
主導権はNATOが得た。射撃フェイズ。レオパルドが発砲する。距離10hex(1000m)。今度は命中した。120mm滑腔砲から放たれたAPFSDS弾がT-64の車体側面を綺麗に貫通した。しかしあまりに威力が大きかったためか、徹甲弾は車体を貫通した後、反対側から突き抜けてしまい、狙われたT-64は九死に一生を得た。 別のレオパルドが放った120mm徹甲弾も目標に命中。今度は砲塔に誘爆を生じてT-64は炎上。NATOは漸く最初の獲物を得た。
ソ連軍の反撃。8両のT-64が移動しながらレオパルドを狙う。距離1000~1100m(10~11Hex)。強力な125mm徹甲弾がレオパルドを襲う。3発の徹甲弾がレオパルドに命中した。そのうち2発は強固な砲塔装甲が跳ね返したが、3発目が脆弱な車体側面に命中。レオパルドは爆発炎上する。もう1両にも徹甲弾3発が命中したが、こちらは強固な前面装甲が全て跳ね返した。射撃を行ったT-64のうち、2両が早くも弾薬欠乏状態となった。これらの車両には以後-3の命中修正が適用される。
ソ連軍はじわじわと前進してレオパルドとの距離を詰めていく。NATOは森林地帯を守っていたレオパルド2両を北に向かわせると共に、ミラン対戦車ミサイルの1個チームを増援として送りこむ。

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3Turn

T-64BV_179T-64BVの主砲では、重装甲を誇るレオパルド2A4の前面装甲を打ち抜けないことを悟ったソ連軍。「射撃」はレオパルドの前側面に展開した3両のT-64に託し、残りの大半は「移動」を選択した。下手に撃って弾切れになるよりは、有利な場所を得るような機動を実施した方が得策という判断である。 今回も主導権はNATOが得た。増援で現れたレオパルドが距離1200m(12Hex)から徹甲弾発射。T-64BVの左側面に命中して、1両を撃破した。さらにもう1両のT-64BVが撃破され、これでソ連軍の損害は3両となった。しかしT-64BVの反撃によりレオパルド1両が被弾。そのショックでクルーが戦車を捨てて脱出してしまう。 早くも戦車戦力の半数を失った西ドイツ軍に暗雲が漂う。

写真04


4Turn

ZM_Cmd_ShortHalt主導権はまたもやNATOである。NATO側は「Short Halt」を選択。敵の移動に対応できるようにした。レオパルド2両が射撃を実施。1発がT-64BVの履帯に命中。走行不能となったT-64からクルーが脱出する。4両目の戦果。 山を越えてNATOの背後に回り込まんとする2両のT-64に対してミラン対戦車ミサイル2発が発射された。2発とも目標に命中。1両のT-64BVは砲塔に損傷を被ったが、辛うじて撃破を免れた。もう1両は履帯に命中を受けて走行不能となる。
前進してきたソ連軍戦車に対し、生き残った2両のレオパルドが各々移動して新たな射点につく。そこを狙ってT-64BVが1600mの距離から射撃を実施したが、レオパルドの至近距離に土煙を上げただけであった。

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5Turn

WG_HalfSQ始めてソ連側が主導権を握った。先に射撃できることよりも後に移動できるメリットの方が大きい。相手の動きを見てから動けるからだ。
T-64BV 3両が森に潜むミラン対戦車砲チームに対して距離500mから制圧射撃を行う。しかし森に潜むミサイルチームは頑強であり、制圧できなかった。走行不能になったT-64BVからも900m(9Hex)の距離からレオパルドに対して徹甲弾が放たれたが、そのAPFSDS弾はレオパルドの車体前面に命中して空しく弾かれた。
レオパルドからの反撃はT-64BV 1両に命中し、これを炎上させた。5両目の撃破である。動けないT-64が1両あるので、ソ連軍の中で移動可能なT-64は計7両を残すのみとなった(初期戦力が13両)。
ソ連軍の戦車部隊が大きく展開してレオパルドの左右に展開する。レオパルドは少しでも命中率を避けるべく森の中に逃げ込んだが、それでも両翼を取ったソ連軍戦車からの十字砲火は免れない。

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6Turn

BMP-1P_243主導権決定に先立ってレオパルドはスモークディスチャージャーを作動させる。これは自身を隠す煙幕だ。100%の効果は期待できないが、それでも相手からの射撃の命中率を少しでも低減できる。こちらの射撃も妨害されるので諸刃の剣ではあるが・・・。
NATOが主導権を奪い返した。狙いすましたレオパルドの主砲弾が、目標に命中・・・、ではなく、目標前面に空しく土煙を上げた。さすがのレオパルドでも、自身と相手の両方が動いている状況下でしかも煙幕の効果があっては百発百中とはいかない。
ソ連軍の反撃、主体はレオパルドの右前方に回り込んだ3両のT-64BVである。距離800mは現在の戦車にとっては至近距離と言って良い。しかし煙幕の存在、地形障害、さらにはレオパルド自身の回避行動により命中率はかなり低下している。3両の戦車からの射撃は悉く外れ。レオパルドの周囲に空しく着弾するだけであった。さらに正面から3両のT-64BVが600m以内の近距離から射撃を加えたが、これも命中しない。
戦車戦の間隙を縫って歩兵を乗車させた数両のソ連軍BMP-1P歩兵戦闘車が西に向けて走る。それを待ち構えていた西ドイツ軍ミラン対戦車ミサイルチームが2発のミサイルを発射。両方ともBMPに命中し、2両のBMPが一瞬にして燃え上がる残骸と化した。乗車していた歩兵たちは辛くも地獄から脱出に成功する。もっともその西ドイツ軍対戦車ミサイルチームの方も、発射を捉えたソ連軍自走砲反撃を受けて、1チームが壊滅してしまうのだが・・・。生き残ったBMP-1の4両がさらに前進を続ける。

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7Turn

Leopard2A4_186主導権はNATOである。ソ連軍はレオパルドに対して間接射撃を実施した。もとより装甲車両相手に間接射撃の効果は期待薄だが、着弾煙によって少しでも相手の射撃を妨害しようとする腹である。
NATOの射撃。レオパルドから放たれた徹甲弾はT-64BVの前面装甲を貫いたものの、運悪く反対側に突き抜けてしまって効果なしだった。別のレオパルドが停止中のT-64BVを狙ったものの、こちらは運悪く外れである。
ソ連側の射撃。3両のT-64BVが森に潜むレオパルドを狙う。2両は狙いを外したが、最後の1両(既に走行不能となっている車両)が放った125mm徹甲弾がレオパルドの車体側面に命中した。弱点を撃ち抜かれたレオパルドは爆発炎上。遂に残った西ドイツ軍戦車は僅か1両となってしまう。
最早ソ連軍としては残敵掃討に近い状態である。歩兵戦闘車は歩兵を降ろして下車戦闘。戦車部隊は左右に展開して残り1両のレオパルドを刈り取るべく布陣する。西ドイツ軍歩兵の放ったミラン対戦車ミサイルがBMP-1P目指して発射されるが、ミサイルは目標を逸れた。
そのミサイルチームもT-64BVからの反撃を受けて壊滅してしまう。
不用意にケツを晒したT-64BVに対してドイツ軍歩兵が200m(2Hex)の距離からパンツァーファウストを発射したが、これまた惜しくも狙いを外れた。

西ドイツ軍は生き残ったレオパルドで現地点を死守させつつ、機械化歩兵を後方に再展開し、敵戦車の側面や後面からパンツァーファウストで狙い撃ちすることにした。

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(つづく)

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