Next War Poland(以下、本作)はGMT社が2017年に発売したシミュレーションゲームである。同社が精力的に発売を続けているNext Warシリーズの第4弾で、共通のゲームシステムとゲーム毎の固有ルール群からなる。

Next Warシリーズは現代戦を扱ったシリーズゲームで、21世紀前半の陸海空立体戦を比較的難解なルールで再現する。陸上ユニットは大隊~旅団規模で移動・戦闘を繰り返すシステム。ただし主導権システムに特徴があり、主導権が発生した場合、両陣営とも1Turnに最大3回移動・戦闘できる。逆に主導権が発生しない場合は1Turnに1回のみの移動・戦闘になる。従って主導権の有無によってゲーム展開が大きく変わる。
写真10航空システムはエリア方式。1ユニットは機種別に1個中隊程度の規模を表し、空戦値、戦闘支援値、爆撃値等でレーティングされている。1Turnに1回制空戦闘があり、制空戦闘は長距離ミサイル戦、中距離ミサイル戦、ドッグファイトの3段階で解決する。例えばMiG-31フォックスハウンドは空戦力3と平凡だが、長距離ミサイル戦が可能なためNATO新鋭機に対してもアウトレンジで射撃を実施できる。
一方で海軍システムはかなり抽象化されており、空母戦闘群、水上打撃群、揚陸作戦群等を表すユニットからなる。例えば米海軍は空母戦闘群2個、水上打撃群1個、揚陸作戦群3個の計6ユニットが登場する。海軍作戦は、水上戦闘は勿論、対地支援や巡航ミサイルによる対地攻撃等もルール化されており、米空母をミサイル攻撃で撃沈することも一応可能となっている。

写真9Next Warシリーズで特徴的なルールの一つにSOF(特殊部隊)に関するルールがある。これはデルタフォース、SAS等の少人数特殊部隊に関するルールで、現代戦を特徴づけるルールの1つだ。飛行場や核施設等への襲撃、攻撃目標マーカーの設置、あるいは偵察任務に従事する。上手く利用すれば戦局を有利に転換できるが、任務終了時に帰還チェックがあり、運が悪いと敵に捕まって帰ってこれない。ちなみに米英の特殊部隊は練度が高く、高い確率での生還が期待できる。

ここまでがNext Warシリーズ共通のルールになるが、本作(NWP)で特徴的なルールの一つに戦略ディスプレイがある。これは戦場周辺の戦略的な状況を表すルールだ。本作のメインマップはフルマップ1枚で、これは主戦場となるポーランド北東部一帯を表している。戦略ディスプレイとはメインマップ周辺の地域を表しており、具体的には北海、デンマーク、ドイツ、スウェーデン、バルト三国、ベラルーシ西部、そしてロシア本土の一部を表している。これらはエリアで区切られており、陸上エリアと海上エリアに分かれている。戦略ディスプレイ上に配置されたユニットは、特別ルールに従って移動・戦闘を行う。

今回、このNext War Polandを4人(各陣営2人ずつ)でプレイすることになった。選択したシナリオは「戦術的奇襲」。選択ルールは避難民を導入し、化学兵器ルールは使用しないこととした。またハウスルールとして戦略ディスプレイ上では、非友好エリア(敵支配又は敵ユニットが存在するエリア)に進入時に停止及び非友好エリアから非友好エリアへの直接移動を禁止とした。下名はNATO軍を担当し、ポーランド本土の地上部隊を指揮する。

注意:Next War Polandのオリジナルの米軍増援表には重大な誤記がある。改定後の増援表は、以下のサイトからダウンロード可能である。

https://www.gmtgames.com/p-569-next-war-poland.aspx

ゲーム開始前

写真11このシナリオはロシア軍によるミサイル攻撃から幕を開ける。ロシア軍はNATOの核施設を第一目標として弾道ミサイルによる大規模攻撃を実施した。しかし強固に防御された核施設は大きな損害はなく、ロシア軍による弾道ミサイル攻撃はほぼ徒労に終わった。
続いてロシア軍の巡航ミサイルがNATOの防空網に襲いかかる。こちらはかなり奏功し、NATOの防空施設にかなりの損害を与えた。

写真1

1Turn

写真12ロシア軍による侵攻が始まった。バルト三国とポーランド。いずれもソ連時代にはロシア帝国の支配下にあった地域である。一方は同じ国家として、もう他方は衛星国として。バルト三国にはロシア西部軍管区の5個師団が、ポーランドにはロシア中央軍管区の3個師団とベラルーシの2個機械化軍団2個が侵攻する。さらにロシア戦略コマンドに所属する4個空中機動師団が全体作戦を援護する。
バルト三国では早くも激戦が始まり、Turnの終了時にはバルト三国の約1/3がロシア軍の支配下となった。

写真3
 

写真13空ではNATOの航空兵力とロシア・ベラルーシ連合の航空兵力が激突する。冷戦時代ならばさしずめ「量対質」の戦いと言ったところになるのだが、21世紀の今日、ロシアと西側諸国の間でテクノロジー面での大きな差異は殆どない。むしろ質的な面ではロシア側の航空機の方が優秀と思える部分もあるぐらいだ。それらMiG-31フォックスハウンドが放つ長距離ミサイル、卓越した空戦性能を持つSu-27フランカー。これらの優秀機を相手にしてNATOの航空兵力は苦戦を強いられた。ミサイルを食らって次々と爆発四散するNATO戦闘機。

写真2


写真14状況を打開するためにNATO軍は巡航ミサイルによる反撃を決意する。潜水艦に乗った特殊部隊が密かにロシア国内に侵入し、目標となる航空基地にターゲットマーカーを配置する。続いて米本土を発進したB-52H、B-1Bの各重爆撃機が巡航ミサイルを抱えてロシア外周に接近し、次々と巡航ミサイルを発射する。さらにステルス性能を持つB-2A爆撃機がレーダー網を掻い潜ってロシア本土に侵攻し、大重量誘導爆弾をロシア本土の航空基地に投下していく。滑走路が破壊され、地下化された格納庫が大重量徹甲爆弾によって撃破されていく。一連の攻撃でNATOはようやく制空権奪取の端緒を掴んだ。

写真15ポーランドに侵攻したロシア軍に対し、ポーランド軍は後退戦術で対応する。ポーランド東部は放棄して同中部を流れるヴィスラ川の線まで後退する。そしてドイツから応援にかけつけた米第82空挺師団、第2騎兵機甲連隊、第1騎兵師団所属の機甲旅団などもヴィスラ川の防衛ラインに加わる。一方のロシア軍は避難民を押しのけて前進を続けるが、それでも避難民の影響により前進は捗らなかった。

写真6


写真16ロシア軍の空挺師団がデンマーク領内のボーンホルム島に空挺降下を実施した。エーレスンド海峡からバルト海に出た出口を占める島嶼で、バルト海の交通を扼する要域である。北海から出撃してきた米海兵隊が直ちにボーンホルム島に急行し、単独で守備していたロシア軍空挺大隊を強襲上陸によって撃破した。

写真4

写真5


なおこのTurn、NATO軍による本格的軍事介入(トランペット第5条発動)を期待したが(確率30%)、NATO首脳は優柔不断で動かない。

2Turn

写真17天候は晴れ。制空権を巡る両陣営の争いは兵力に勝るNATO側の勝利に終わり、戦場における航空優勢をNATO側が握った。余勢を駆ってNATO軍はロシア側防空網に対する防空制圧任務を開始する。2隻の空母から発進したEA-18Gグローラーの編隊がSAM陣地に対してHARM対レーダーミサイルを叩き込む。B-2Aステルス爆撃機もSAM網に対して誘導爆弾による攻撃を行う。その後方地域では、ロシア本土の航空基地群に対して巡航ミサイルが降り注ぐ。

写真18ロシア軍は、スカゲラク海峡を抜けてバルト海に侵入してきた米空母に対する乾坤一擲の反撃を決意。巡航ミサイルの大量投入により米空母の撃破を図ったが、米空母部隊の防空網に阻まれて大きな戦果はなし。さらに潜水艦を投入して米空母撃破を狙うも、失敗。米空母の反撃によって貴重な潜水艦が失われた。
NATOの制海権バルト海南部まで広がり、ドイツからポーランド北岸、バルト諸国に至る海上交通線を確保した。

写真8


写真19陸上では逆に戦況はロシア軍有利に進攻している。バルト三国はロシア軍の猛攻によって最早風前の灯。ポーランドでも西へと進むロシア・ベラルーシ領内に進攻。その一部は首都ワルシャワを指呼の間の所まで到達した。NATO軍は空中機動可能な米第82空挺師団を急遽ワルシャワ方面に派遣し、同地の守備を固める。

写真7


このTurn、NATO軍による本格的軍事介入(トランペット第5条発動)を期待したが(確率40%)、NATO首脳は相変わらずの優柔不断で、今回もまた動かなかった。

ポーランドに崩壊の危機が迫る。

(つづく)