Red Storm(以下、本作)は、2019年に米国GMT社から発売されたシミュレーションゲームだ。テーマは1987年における東西ドイツ上空における航空戦闘。所謂「第3次世界大戦モノ」のゲームだ。ご存知の通り、第2次世界大戦から凡そ半世紀に渡って繰り広げられた米ソ両大国による冷戦は、遂に本物の戦争(熱戦)に発展することなく終結を迎えた。従って本作で扱っているような東西両陣営による大規模な空中戦闘は遂にぞ発生しなかった。そういった意味において、本作は過去に起こりえたであろう戦いを扱った、いわば「仮想戦」ゲームといえる。
フルマップ2枚には東西ドイツ国境地帯のその周辺が描かれている。マップの西端にはライン川が流れ、エッセン、デュッセルドルフ、ボン等が描かれている。マップ東端は東ドイツの都市エアフルト。南端はヴュルツブルク、北端はミュンスターあたりになる。1Hexは実際の2.5海里、1Turnは実際の1分間、1ユニットは1~4機の航空機を表している。
今回プレイしてみたのは、3番目のシナリオ「RS3:First Strike」だ。開戦劈頭におけるWP軍によるNATO前線部隊に対する航空攻撃を扱ったシナリオである。WP側の戦爆連合編隊が最前線のNATO機械化部隊を攻撃。それをNATOの戦闘機と防空ネットワークが迎え撃つシチュエーションだ。このシナリオは、他のシナリオに比べると規模が小さく、それでいて本作による主要登場人物(戦闘機、対地攻撃機、SEAD機、SAM、対空火器など)が一通り登場するので、初級ゲームとして適していると考えた。なお、今回はVASSALによるソロプレイである。
ゲーム開始前手順
ご存知の通り、本作の基本システムは、GMT社のDown TownやElusive Victoryと同じだ。ゲーム開始前に防空ネットワークをプロットし、攻撃側は攻撃計画を設定する。ゲームが始まれば、基本的には当初設定した配置、計画通りにゲームを進めることになる。従って初期の配置や計画が極めて重要な意味を持つ。一番最初が"Weather Phase"で本来ならここで天候を決定するのだが、このシナリオでは天候は「晴天」で固定となっているので、この手順は飛ばす。
その次に行うことは"Ground Planning Phase"で、SAM、AAAなどの防空ネットワークの配置だ。本作ではSAMやAAAは初期隠匿状態で配置される。そして敵の航空機が射程距離内に入ってきたときに活動を開始し、正体を明らかにする。このシナリオでは両陣営にSAMやAAAが登場するので、それぞれプロットする。
次に行うのが"ISR Phase"。ISRとはIntelligence, Surveillance, and Reconnaissanceのことで、要するに情報収集だ。ISRが認められた側(このシナリオではWP側)は、ISR Table(PlayAid#4)を振って、そこに示された数のSAM、AAAなどの位置を露見させることができる。ダイスを振った結果は"Exceptional"で、WP側にとって最高の結果となった。NATOは、SAMの40%、Fire Canの40%、AAAの25%(いずれも端数切上げ)を露見させなければならない。このシナリオでNATO側にFire Canは登場しないので、SAMとAAAが露見を余儀なくされる。そして次の"Ground Deployment Phase"で地上部隊の展開を行う。
セットアップ時の状況
次が"Raid Plannig Phase"。この段階で両プレイヤーはそれぞれの航空部隊を編成し、攻撃側は侵攻計画を作成する。さらにRally PointやOrbit Pointを計画する。Rally Pointは士気阻喪した航空部隊が回復するための場所。Orbit Pointはシナリオ開始時に航空機を配置する位置になる。Orbit PointはRally Pointの役割も果たす。
ダイス判定の結果、NATOの戦闘機は米空軍のF-15A"Eagle"とベルギー空軍のF-16A"Falcon"がそれぞれ1個編隊(2機)ずつ。WP軍は戦爆連合40機。護衛戦闘機はMiG-23MLDが計12機、SEADはSu-24とMiG-27が各4機、爆撃本隊がSu-17M4、Su-25、MiG-23MLDの計20機である。40対4。一見すると「圧倒的じゃないか」。
ちなみにこの時は小隊毎に航空機の種類をダイスで判定したが、これはどうやらタスク単位で決めるのが正しいらしい。そのため上記のようなバラバラな編成ではなくなる。確かにエリア88じゃあるまいし、攻撃隊の構成機種がバラバラというのも変だが、これを適用すると益々機種判定のダイスの影響が大きくなってしまう。
ようやく終わりが見えてきた。次は"SEAD Phase"。これは事前の対空制圧攻撃を示す。本シナリオではWP側にSEAD攻撃が認められている。SEAD Table(PlayAid#4)を振った結果は"Average"。SAM/Radarが3ヵ所、AAAが2ヵ所が攻撃目標になる。Nike-SAM 1個大隊が5Turn使用不能、対空火器陣地1つも5Turn使用不能となった他、NATOの頼みの綱であった早期警戒レーダーが破壊されてしまう。
"Early Warning Phase"。両プレイヤーがEarly Warning Table(PlayAid#4)を見ながらダイスを振って早期警戒状態を決定する。WP軍の早期化警戒レベルは"Minimal Warning"、NATOは"Average Warning"である。WPプレイヤーは、Early Warning Tableに従ってIngressヘクスから2ヘクス以内のヘクスを公開する。またMedium以上の高度から進入するWP軍機は自動的に発見状態になる。
"Air Deployment Phase"。航空機の配置を行う。NATO側は数少ない迎撃戦闘機を低高度に配置する。
"Radar Phase"。必要に応じてレーダーのON/OFFを行う。NATOは全てのレーダーをOFF状態にする。
ゲーム開始
1-5Turn
ソ連軍の編隊が盤上に侵入する。NATOの迎撃編隊は超低空から迎撃のためにソ連側編隊に近づいていく。6Turn
国境線に近づいてきたNATO迎撃編隊に対し、国境付近に展開していたWP軍SAM部隊が作動を開始した。しかし超低空を飛ぶNATOの編隊を捕捉できない。7Turn
米空軍のF-15A"Eagle"の編隊が距離20海里でMiG-23MLD"Flogger K"の4機編隊を捕捉した。直ちにAIM-7Mスパローミサイルが発射される。しかし発射された2発のミサイルは、目標のMiG編隊を僅かに逸れた。そしてWP軍攻撃編隊の先鋒部隊が今、国境線を超えた。8Turn
WPの編隊が続々と国境を越えて西ドイツ上空に侵入してくる。NATO軍はSAMのレーダーを次々とOnにしていく。9Turn
WP編隊の正面に回り込んだ米空軍F-15A 2機編隊が再びAIM-7Mスパローミサイルを発射する。今度は1発がMiG-23MLDを直撃。MiG-23は四散した。そのMiG編隊は混乱(Disordered)する。しかしF-15Aもここでスパローを撃ち尽くす。SEAD任務を担うMiG-27M"Flogger J"がNATOにの統合防空システムに挑む。対レーダーミサイルKh-25MPの1発がHawk地対空ミサイル部隊を狙う。一方のHawk地対空ミサイル部隊は、MiG-27Mから発射されたKh-25MPを見て即座にレーダーをシャットダウンした。これでKh-25MPは目標を見失い迷走の末自爆する。対レーダーミサイルの直撃を免れたHawk部隊であったが、レーダーをOFFにしたため一時的にせよ無力化される。
つづく
コメント