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「White Star Rising」(以下、本作)は。Lock'n Road社が2010年に発表したシミュレーションゲームである。テーマはWW2欧州西部戦線における戦術戦闘で、1944年6月のノルマンディ上陸戦から1945年のドイツ国内戦闘までを計20本のシナリオで再現する。
本作は、Lock'n Road社が発売している"Nation at War"シリーズの1作品で、同シリーズの作品はいずれも同一システム、同一スケールとなっている。1Hexは実際の150m、1Turnは実際の5~15分間を現し、1ユニットは1個小隊(数両の車両又は数十名の歩兵)を現している。本作の詳しいシステムについては、 Game Journal誌#75(2020年6月発売予定) に掲載される予定なので、そちらを参照されたい。
今回、本作のシナリオをいくつかプレイしてみた。

前回の記事は--->こちら

NAN-White 6/06/1944 - Juno Beach: Normandy, France

シナリオの概要

時間がまだあったので、もう一本ぐらいシナリオを試してみよう、ということになり、選択したのがこのシナリオである。1944年6月6日、D-Day。ノルマンディ上陸作戦当日のジュノービーチにおけるカナダ軍とドイツ軍の戦いを描いたシナリオで、両軍とも歩兵を中心とした部隊になる。ただしカナダ軍の増援としてシャーマン戦車1個中隊が登場し、ドイツ軍には拠点や地雷原といった防御施設が登場する。カナダ軍はゲーム終了までに4ユニット以上を盤外から突破させなければならない。なお、このシナリオはオリジナルのゲームに付属しているシナリオではなく、COMPENDIUMと言う名のエキスパンション・キットにて紹介されているシナリオである。

下名はドイツ軍を担当する。

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Setup

ドイツ軍の目的はカナダ軍の盤外突破阻止である。カナダ軍がどこから突破を図るかわからないので、 横一列に拠点を並べて歩兵部隊を配置した。

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1Turn

前回のシナリオ でもそうだったが、今回もカナダ軍のチットを引く前に第1Turnが終了してしまった。

2Turn

カナダ軍が上陸を開始する。しかしイベントの影響により全戦力の半数弱が海上で足止めを食ってしまう。前進するカナダ軍に対し、ドイツ軍守備隊は機関銃を乱射し、その足止めを行う。

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3Turn

カナダ軍は一列になって谷間の道路を突き進む。そこに仕掛けてあったドイツ軍の地雷原が爆発するも、カナダ軍は地雷の存在を無視して強引以前進してきた。

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4Turn

カナダ軍の増援部隊であるシャーマン戦車1個中隊が登場する。しかし隘路にカナダ軍が群がっているため、戦車部隊が前進できずにいる。そこにドイツ軍の銃砲火が集中し、カナダ軍に新たな損害が出る。

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5Turn

カナダ軍の地雷除去戦車が隘路に前進してきた。それに対してドイツ軍の50mm対戦車砲が射撃を実施。地雷除去戦車をステップロスさせた。

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6Turn

カナダ軍の地雷除去戦車がドイツ軍の地雷原を1ヘクス分掃討することに成功した。しかしその直後に50mm対戦車砲による射撃で地雷除去戦車が撃破されてしまう。

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7Turn

カナダ軍の一部が隘路を抜けて戦線後方に躍進する。しかしその直後に突破したカナダ軍の一部がドイツ軍の攻撃によって撃破されてしまう。この時点で勝利を諦めたカナダ軍の投了でゲーム終了となった。

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感想

戦車があまり出てこない歩兵戦闘のシナリオであったが、雰囲気は良い感じで出ている。ただし時間的制約や地形障害を突破する必要のあるカナダ軍の方が苦しい展開になることは間違いなさそう。もし私がカナダ軍を担当した場合は、ドイツ軍の間を抜けるようなことをせず、ドイツ軍の陣地を踏みつぶしながら前進する方法をとることになるだろう。

ゲーム全般の感想

簡単なルールでWW2の戦術戦闘を上手く再現した佳作である。本作の場合、戦闘システムがかなり特殊で(CRTすら使わない)、「こんなに大雑把でWW2に登場する戦車の性能差を上手く表現できるのだろうか?」と疑問を感じたが、プレイしてみると結構戦車の性能差が上手く表現されていることに驚いた。さらに単なる兵器の強弱だけではなく、例えば「シャーマン戦車は車高が大きいため地形効果を使いにくい」などという点までそれっぽく表現されている点も評価したい。
さらに本作は単なる戦車対戦車のゲームではない。歩兵はもとより、対戦車砲や迫撃砲、さらに盤外砲撃や航空支援、防御施設まで表現されている。
チットを利用したゲームエンジンも上手く機能している。一般のゲームなら移動手順をプレイヤーが任意に設定できるので、ともすれば「整然過ぎる戦術戦闘ゲーム」になり勝ちであった。しかし本作の場合、チットによって移動順がランダムになるので、予定調和的な攻撃が実施できない。

「歩兵が突入する前に戦車で支援射撃をしておいて・・・」

的な計画が移動順の齟齬によって破綻していく様は、まるで本物の戦闘を見ているような錯覚を感じることすらある。

Nation at Warシリーズには、今回プレイした西部戦線だけではなく、東部戦線やアフリカ戦線を扱った作品もあるらしい。機会を見つけてこれらの作品についても是非プレイしてみたいものである。