「死」とは何か
シェリー・ケーガン 柴田裕之訳 文響社
人は必ず死ぬ。これは100%真実である。遠くない未来に人は「不死」になるかもしれないが、今の所「不死」はSFの世界での出来事である。しかし我々の多くは「死」から目を背けて生きてきた。本書では「死」というテーマに真正面から取り組んだ著作である。「死」とは何か。「魂」や「死後の世界」は実在するのか。「死」は悪い事なのか。「死」が悪い事だとすれば、何故「死」が悪い事なのか。「不死」は果たして望ましい状態なのか。「死に直面して生きる」というのはどういうことなのか。「死」は恐れるに足る事象なんか。「自殺」は果たして不道徳な事なのか・・・。こうした「死」に纏わる様々なテーマに対して、科学的かつ哲学的立場から論じたのが本書である。
無論、死生観とは結局個々人の問題であり、万人が納得する答えなどはない。従って本書での著者の主張を全面的に支持する必要も受け入れる必要もない。ただそのことが本書の価値を下げるものではない。本書を読むことにより、「死」に対する我々自身の考え方を深めることができることは間違いない。そういった意味から本書は万人に奨めることができる著作であるといえよう。
お奨め度★★★★
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