SilentVictory


「Silnet Victory」はGMT社が2015年に発売したシミュレーション・ウォーゲームだ。テーマは太平洋戦争での潜水艦戦で、プレイヤーは米潜水艦の艦長となり、ゲームシステムが操る日本軍と戦う。ルールブックをざっと読み、早速プレイしてみた。

準備

最初にゲーム開始時期と指揮する艦を選ぶ。当然ながら戦争後半の方が生き残り易くなるし、艦の性能も向上する。しかしどうせプレイするなら戦争初期の苦しい時期を戦ってみたい。という訳で選んだ時期は1941年12月。真珠湾攻撃直後だ。選択した艦(ボート)は、米潜水艦「トライトン」(USS Triton SS 201)。タンバー級潜水艦の1艦である。史実では1943年2~3月に失われた(原因は不明だが、日本側対潜艦艇による攻撃という見解が強い)艦だが、果たして史実を覆すことができるか。
USS_Triton_SS-201


第1回目の哨戒

まずは司令部から命令を受ける。与えられた命令は「マーシャル諸島への哨戒」。潜水艦「トライトン」は、焼けただれた真珠湾を跡にした。
マーシャル諸島近海に入って最初の夜、いきなり大物と遭遇した。特設空母「八幡丸」(ゲーム上は空母「雲鷹」)である。こんな大物がなぜマーシャル諸島にいるのか不思議であったが、千載一遇のチャンスである。
私は夜間浮上攻撃を決意。しかも危険だが艦首発射管と艦尾発射管から計10本の魚雷を一斉発射した。5発の魚雷が目標に命中した。撃沈確実、のはずだったが、正常に爆発したのは2発のみ。敵の特設空母はギリギリで持ちこたえた。
さあ、これからが大変だ。敵駆逐艦の爆雷攻撃である。しかし幸運にも日本側護衛艦は「トライトン」を発見できなかったようだ。明後日の方向で威嚇のための爆雷音が響くが、「トライトン」に実害はない。慌てふためく日本軍を尻目に「トライトン」は無事戦場を離脱した。

雲鷹


10日後の夜、単独航行中の貨物船を発見した。3,900t級の貨物船「宇土丸」である。護衛が着いていないのでカモだ。目標に思いきり近づき、艦首発射管から魚雷4本を発射した。小型貨物船に対してやや過剰だが、不発が怖いので確実に仕留めておきたい。3発が命中し、そのうち2発が爆発する。目標の貨物船は大きく傾き、沈没した。「トライトン」最初の撃沈戦果である。

3日後の早朝、そろそろ哨戒任務も終わりに近づいた頃、またもや大物を発見した。戦艦「扶桑」である。撃沈するチャンスである。しかし魚雷の数が乏しい。しかも今回は既に十分な戦果を残している。危険だ。しかし戦艦を見逃すのは惜しい。艦長である私は決断した。

「攻撃する。魚雷戦用意」 目標が大物なので、今回も艦首と艦尾から計10本の魚雷を一斉発射することにした。これで魚雷は全弾撃ち尽くすことになる。中距離まで接近して10本の魚雷を斉射する。4発が「扶桑」に命中した。しかし爆発したのはたったの1発だけ。当然ながら「扶桑」は沈没しない。
さあ日本軍の反撃だ。その前に「トライトン」は緊急潜航を行う。しかし魚雷を斉射したのがいけなかった。しかも前回の「八幡丸」の時とは違って今回は昼間である。魚雷の航跡を発見した日本駆逐艦は猛烈な爆雷攻撃を仕掛けてきた。最初の攻撃で爆雷2発が「トライトン」の至近距離で爆発する。対空用機銃とディーゼルエンジンが損傷を受けた。しかも日本の駆逐艦は未だに頭上にいる。もうダメか・・・。

しかしここで奇跡が起こった。日本の駆逐艦が「トライトン」をロストしたのである。彼らはしばらく頭上を旋回していたが、数発の爆雷を遠方で投下した後、諦めて去っていった。
数時間後に「トライトン」は浮上した。周囲に敵艦の姿はない。まさに「九死に一生を得る」とはこのことである。

写真01


その後、機銃の修理は失敗したが、エンジンは修理に成功。ジョンストン島近海で日本機による攻撃を受けたが(なぜこんな海域に日本機が・・・)、急速潜航によって事なきを得た。
哨戒任務を終了して真珠湾に入港したのは翌1942年の1月である。今回の哨戒によって挙げた戦果は以下の通りである。

撃沈:3,900t級貨物船
大破:特設空母「八幡丸」(20,000t)
中破:戦艦「扶桑」(29,3000t)

我々は真珠湾で「潜水艦戦闘哨戒記章」(Submarine Combat Patrol Insignia)を受け取った。

第2回目の哨戒

次の哨戒は1942年3月のことであった。「ミッドウェー近海の哨戒」が任務である。獲物が少なそうに思えるのが残念だ。東シナ海や日本本土近海に行ってみたいものである。
とにかく魚雷を再搭載して出撃する。
最初の遭遇は出港から2週間後の午後であった。ミッドウェー西方海域を航行中に護衛を伴った小型貨物船(2,300t級)を発見したのだ。昼間の襲撃は危険なので、夜間を待って襲撃を加えるべく、夜を待つ。しかし何たることか。夜になる前に目標を見失ってしまったのだ。何たる失態・・・・。

その3日後の夜。我々は再び目標に遭遇した。今度も護衛を伴った小型貨物船(3,100t)である。獲物が小さいのでリスクを避けるため中距離からの潜航雷撃戦を実施する。艦首から6本の魚雷を発射する。目標への命中コースを描いたのは4本。しかしまともに作動したのは1本のみであった。目標はしぶとくも生き残っている。
一旦急速潜航で敵の反撃を躱す。
敵の護衛はどうやら損傷した船を見捨てたようだ。洋上に漂う敵船に対して魚雷は勿体ない。浮上して砲撃で仕留めよう。76mm砲弾を50発ほど叩き込んで目標を撃沈した。

写真02


その後1週間の間に2度に渡って敵船団と遭遇したが、いずれも昼間の遭遇であり、夜を待っている間に敵を逃がしてしまう。
1ヶ月後に真珠湾に帰投した「トライトン」。今回は僅か1隻の撃沈であり、最小限の成功と呼べるものであった。

撃沈:3,200t級貨物船

つづく

Silent Victory Sink 'Em All アメリカ潜水艦史 海上護衛戦
太平洋戦争 喪われた日本船舶の記録 Carrier Battle - Philippine Sea