Frederick the Great(邦題「フリードリヒ大王」、以下本作)は、1975年にSPI社から発表されたシミュレーションゲームである。プロイセンのフリードリヒ大王がオーストリア、フランス、ロシア等と戦った7年戦争を1シナリオ1年で再現する。本作は、その後Avalon Hill社から再版され、そのライセンス版が日本でもHobby Japanから発売された。私が今手元に持っているのは、そのHobby Japan版である。
システム詳細については、こちらの記事を参照されたい。
今回、本作を初めて対人戦をプレイしてみた。
前回は1757年シナリオ(シナリオ2)の戦いを紹介した。まだ少し時間があったので、別のシナリオをプレイすることになった。選択したシナリオは、シナリオ3「1758年シナリオ」である。今回は下名がプロイセン軍を担当する。
しかし戦闘結果はオーストリア軍にとって厳しい結果となった。戦闘による損害は双方とも5戦力ずつ。しかし指揮能力の差がモノを言ってオーストリア軍は2戦力分の捕虜を出して後退。戦闘に生き残った28戦力は全て戦意喪失状態となってしまう。こうなってしまうとオーストリア軍は苦しい。毎Turn士気回復のチェックが可能ではあるが、その成功率は1/6に過ぎない。そして士気回復するまでは一切の攻勢作戦は実施不可能なのだ。
最初の激突は、そのフェルディナンド率いるハノーヴァー軍とスービス将軍(Soubise 0-1-1)率いるフランス軍の戦いである。兵力はほぼ互角の両軍であったが、指揮能力の差がモノを言ってハノーヴァー軍が勝利した。スービス麾下のフランス軍は回復不能の損害を被った。
プラハ(Prague 1125)近郊では、プロイセン軍のハインリッヒ将軍(Henry 2-1-2)がオーストリア軍のセルベロニ将軍(Serbeloni 0-1-1)麾下の部隊を捕捉した。兵力はほぼ同等の両軍であったが、指揮能力の違いが圧倒的であった。しかも本作の戦闘システムは、戦闘規模が小さいほど指揮官能力差が出やすい。結果は一方的でオーストリア軍は完膚なきまでに撃破され、セルベロニ麾下の部隊は回復がほぼ不可能な程の損害を被った。
まるでアスターテ会戦におけるラインハルト・ローエングラムの如き各個撃破戦術である、と書けば、自画自賛が過ぎるだろうか?。
ルールブックを読んだとき、ルールのまとめ方が大胆過ぎて「本当に大丈夫なの?」と思った。その典型例が消耗ルールである。プレ20世紀を扱うゲームでは、多くの場合「消耗」の概念が取り入れられている。これは当時の貧弱な兵站組織とそれに起因する分進合撃を再現するためのルールだ。そして一般的には狭い地域に大兵力を集中すると激しい消耗を強いられるということで過剰な兵力集中抑制を図っている。 ところが本作での消耗は、いかなる場合でも「1スタック1戦力」なのである。ということは巨大なスタックを1個作った方が中規模スタックを複数個作るよりも消耗を低く抑えられるということになる。勢いゲームは「巨大スタック同士のぶつけ合い」になるのでは、という危惧があった。
結果を書けば、上記の危惧は完全な杞憂に終わった。これは特に兵力の大きい反プロイセン陣営に当てはまるのだが、巨大スタックを作ると必然的に軍の最高指揮官の元に全兵力が集まることになる。最高指揮官が優秀であれば良いのだが、そうでない場合も多い。さらに巨大スタックは攻城戦にも不利である。そんなこんなで巨大スタック戦術が唯一無二の戦術になるようなことはなかった。 本作で面白いな、と思った点はいくつかあるが、その1つはプロイセン陣営と反プロイセン陣営の性格の違いである。プロイセン陣営は兵力の絶対量では劣るものの合戦時の指揮能力、機動力、そして回復力で勝っている。反プロイセン陣営はその逆である。従ってプロイセン陣営としては速やかに敵主力を決戦に引き出して、それを完膚なきまでに叩きたい(これは比喩ではなく、相手がフランス軍は神聖ローマ帝国軍なら十分に可能である)。逆に反プロイセン軍は決戦を避けつつフリードリヒを疲弊させながら、多正面攻勢でプロイセンの領土を少しずつ侵食していきたい所だ。
もう1点面白かったのは、シナリオの時期によって両軍の置かれている状況が全く違ってくるということだ。今回プレイした1757年シナリオと1758年シナリオを比較しても、、例えばオーストリア軍の最高指揮官がカールからダウンに変わっている。後者の方が遥かに優秀なので、オーストリア軍は初めてフリードリヒとの正面対決を戦略の1つとして検討することが可能になった。 逆にハノーヴァー軍の最高指揮官も1757年シナリオではカンバーランドだった所を、1758年シナリオではフェルディナンドに変わっている。フェルディナンドは能力が高く、その結果西部戦線の様相が一変した。このあたりの劇的な変化が面白い。
「フリードリヒ大王」はシンプルなゲームである。移動ルールや戦闘ルールは明確で、しかもスタック数は少ない。Turn数は比較的多いが、各Turnで動けるスタックが少ないため1Turnの所要時間は短い。1Turn10~15分、シナリオの所要時間は3~4時間程度なのではないだろうか。そしてスタック数が少ないため個々のスタックの重みが増し、1つの決断の重みを味わうことができる。
「フリードリヒ大王」は間違いなく傑作ゲームだ。そう感じた。
システム詳細については、こちらの記事を参照されたい。
今回、本作を初めて対人戦をプレイしてみた。
前回は1757年シナリオ(シナリオ2)の戦いを紹介した。まだ少し時間があったので、別のシナリオをプレイすることになった。選択したシナリオは、シナリオ3「1758年シナリオ」である。今回は下名がプロイセン軍を担当する。
シナリオ3(1758年)
1Turn
このシナリオはシュフィドニツァ(Schweidnitz 1631)をプロイセン軍が包囲している状態から開始される。シュフィドニツァを包囲しているのは、プロイセン軍のツァイテン将軍(Zeithen 1-1-1)である。攻城戦はすぐに成功し、シュフィドニツァはプロイセン軍の支配する所となった。2Turn
オーストリア軍の名将ダウン将軍(Daun 1-2-3)が大兵力を率いてシレジア方面に侵攻してきた。35戦力(10万人以上)の大兵力である。大胆にもダウン将軍は、フリードリヒに対して決戦を挑んできたのである。その時フリードリヒ麾下の兵力は22戦力(6~7万人)。戦力比は1.5倍以上であった。オーストリア軍の狙いは、必ずしも無謀だとも言い切れなかった。しかし戦闘結果はオーストリア軍にとって厳しい結果となった。戦闘による損害は双方とも5戦力ずつ。しかし指揮能力の差がモノを言ってオーストリア軍は2戦力分の捕虜を出して後退。戦闘に生き残った28戦力は全て戦意喪失状態となってしまう。こうなってしまうとオーストリア軍は苦しい。毎Turn士気回復のチェックが可能ではあるが、その成功率は1/6に過ぎない。そして士気回復するまでは一切の攻勢作戦は実施不可能なのだ。
4Turn
西部戦線ではプロイセン陣営のハノーヴァーと反プロイセン陣営のフランスが激突する。場所はライン川河畔のヴェセル(Wesel 2104)。前回はフランス軍の大兵力に苦しめられたハノーヴァー軍であったが、今回は違う。フリードリヒに近い能力を持つフェルディナンド将軍(Ferdinand 2-2-2)がハノーヴァー軍に加わり、指揮官の能力では完全にハノーヴァー軍有利になった。最初の激突は、そのフェルディナンド率いるハノーヴァー軍とスービス将軍(Soubise 0-1-1)率いるフランス軍の戦いである。兵力はほぼ互角の両軍であったが、指揮能力の差がモノを言ってハノーヴァー軍が勝利した。スービス麾下のフランス軍は回復不能の損害を被った。
プラハ(Prague 1125)近郊では、プロイセン軍のハインリッヒ将軍(Henry 2-1-2)がオーストリア軍のセルベロニ将軍(Serbeloni 0-1-1)麾下の部隊を捕捉した。兵力はほぼ同等の両軍であったが、指揮能力の違いが圧倒的であった。しかも本作の戦闘システムは、戦闘規模が小さいほど指揮官能力差が出やすい。結果は一方的でオーストリア軍は完膚なきまでに撃破され、セルベロニ麾下の部隊は回復がほぼ不可能な程の損害を被った。
5Turn
先の敗戦から回復したダウン将軍率いるオーストリア軍が再びフリードリヒに決戦を挑んできた。戦力はオーストリア軍27戦力対プロイセン軍18戦力。今回も戦闘比は3:2である。そして今回もフリードリヒの指揮能力によってプロイセン軍が勝利。プロイセン軍の損失2戦力に対し、オーストリア軍は3戦力の損失と3戦力の捕虜を出した。6Turn
西部戦線ではハノーヴァー軍がフリードリヒ顔負けの大機動戦を展開していた。まず後方地帯を移動中のフランス軍シェヴェール将軍(Chevert 0-1-1)麾下の4戦力を、ハノーヴァー軍フェルディナンド将軍麾下の10戦力が奇襲攻撃を実施し、これを撃破した。返す刀でフランス軍コンタード将軍(Contades 1-1-1)麾下の10戦力と対峙した。兵力は互角の両者であったが、今回もまたフェルディナンドの優れた指揮能力がフランス軍を圧倒した。コンタード軍は大損害を被った。まるでアスターテ会戦におけるラインハルト・ローエングラムの如き各個撃破戦術である、と書けば、自画自賛が過ぎるだろうか?。
7Turn
フランス軍は最後の望みをかけてデストリーズ将軍(D.Eesterss 0-1-1)麾下の部隊をフェルディナンドにぶつけてきた。しかし能力的にはこれまで戦った将軍達と比べて特に優れている訳でもないデストリーズがフェルディナンドに勝てるわけもない。フェルディナンドは今年何度目かの勝利をフランス軍に対して収めた。この時点でフランス軍、オーストリア軍で行動可能な部隊はほぼ皆無となり、反プロイセン陣営は敗北を認めた。感想
ここでは、2回の対戦両方についての感想を書く。ルールブックを読んだとき、ルールのまとめ方が大胆過ぎて「本当に大丈夫なの?」と思った。その典型例が消耗ルールである。プレ20世紀を扱うゲームでは、多くの場合「消耗」の概念が取り入れられている。これは当時の貧弱な兵站組織とそれに起因する分進合撃を再現するためのルールだ。そして一般的には狭い地域に大兵力を集中すると激しい消耗を強いられるということで過剰な兵力集中抑制を図っている。 ところが本作での消耗は、いかなる場合でも「1スタック1戦力」なのである。ということは巨大なスタックを1個作った方が中規模スタックを複数個作るよりも消耗を低く抑えられるということになる。勢いゲームは「巨大スタック同士のぶつけ合い」になるのでは、という危惧があった。
結果を書けば、上記の危惧は完全な杞憂に終わった。これは特に兵力の大きい反プロイセン陣営に当てはまるのだが、巨大スタックを作ると必然的に軍の最高指揮官の元に全兵力が集まることになる。最高指揮官が優秀であれば良いのだが、そうでない場合も多い。さらに巨大スタックは攻城戦にも不利である。そんなこんなで巨大スタック戦術が唯一無二の戦術になるようなことはなかった。 本作で面白いな、と思った点はいくつかあるが、その1つはプロイセン陣営と反プロイセン陣営の性格の違いである。プロイセン陣営は兵力の絶対量では劣るものの合戦時の指揮能力、機動力、そして回復力で勝っている。反プロイセン陣営はその逆である。従ってプロイセン陣営としては速やかに敵主力を決戦に引き出して、それを完膚なきまでに叩きたい(これは比喩ではなく、相手がフランス軍は神聖ローマ帝国軍なら十分に可能である)。逆に反プロイセン軍は決戦を避けつつフリードリヒを疲弊させながら、多正面攻勢でプロイセンの領土を少しずつ侵食していきたい所だ。
もう1点面白かったのは、シナリオの時期によって両軍の置かれている状況が全く違ってくるということだ。今回プレイした1757年シナリオと1758年シナリオを比較しても、、例えばオーストリア軍の最高指揮官がカールからダウンに変わっている。後者の方が遥かに優秀なので、オーストリア軍は初めてフリードリヒとの正面対決を戦略の1つとして検討することが可能になった。 逆にハノーヴァー軍の最高指揮官も1757年シナリオではカンバーランドだった所を、1758年シナリオではフェルディナンドに変わっている。フェルディナンドは能力が高く、その結果西部戦線の様相が一変した。このあたりの劇的な変化が面白い。
「フリードリヒ大王」はシンプルなゲームである。移動ルールや戦闘ルールは明確で、しかもスタック数は少ない。Turn数は比較的多いが、各Turnで動けるスタックが少ないため1Turnの所要時間は短い。1Turn10~15分、シナリオの所要時間は3~4時間程度なのではないだろうか。そしてスタック数が少ないため個々のスタックの重みが増し、1つの決断の重みを味わうことができる。
「フリードリヒ大王」は間違いなく傑作ゲームだ。そう感じた。
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