「戦略級銀英伝」は1995年に旧Game Journal40号の付録ゲームとして発表された作品である。マップは雑誌の裏表紙を利用したA4版。カウンターはシール方式で個数は245個。意外と多い。マップには銀英伝の舞台となった銀河系宇宙の一部が描かれており、マップの両端には帝国の首都星オーディンと自由惑星同盟の首都ハイネセンが描かれている。マップはエリア方式で通行可能なのは航路が描かれている部分のみ。原作をご存じの方にとっては常識だが、マップの中央部に通行可能な領域がイゼルローン回廊とフェザーン回廊の2か所のみとなっており、この2か所が所謂「チョークポイント」になっている。
1Turnは地球歴の3ヶ月(この時代、地球は宇宙の田舎と化しているが、暦については帝国・自由惑星同盟の双方とも地球歴を使用している)、1ユニットは約2000隻の宇宙艦を表している。ちなみにこの世界では1個艦隊は数千隻から数万隻の規模で、帝国、同盟共十数個の艦隊を保有している。
先日、この「戦略級銀英伝」をVASSALで通信対戦してみましょう、ということになり、練習も兼ねてソロプレイしてみた。ソロプレイなので数Turnだけプレイするつもりが、展開がドラマチックなので思わずはまってしまった。
実はAARを仕上げた後に気づいたのですが、戦闘ルールに重大なミスがありました。近距離を距離0のみと思い込み(実際には0~1が近距離)、戦艦を過大評価、空母を過小評価をしております。正しいルールでプレイすると、戦艦が一度懐に飛び込まれると、殆ど対象不能になるのですが、そのことを誤解しておりました。以下の駄文はそのつもりでお読み下さい。
第1Turn前半(UC796/RC487:1-3月)
序盤は、作品冒頭のアスターテ会戦から始まる。自由惑星同盟3個艦隊24ユニットに対し、銀河帝国の「常勝の天才」ラインハルト・ローエングラム(3-2-3★★、攻撃修正-防御修正-イニシアチブ修正、星の数は階級、以下同じ)率いる1個艦隊8ユニットは、3倍の敵艦隊を撃破できるか・・・。ここでラインハルトが勝利を収めると、ラインハルトが大将に昇進し、指揮下におけるユニット数が8から10に増える。負ければそれがない。たった2ユニットの違いだが、直後に同盟側に「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリー(3-3-4★)が登場してくるので、2ユニットの差は大きい。しかも戦術能力では、ラインハルトはヤンよりも劣っているのだ・・・。
必勝を期したラインハルトは、麾下の艦隊を全て戦艦でそろえるという「大艦巨砲主義」で臨んだ。戦艦は射程が長いので先制攻撃を仕掛けることができる反面、攻撃力自体は小さいので中近距離では他の艦よりも能力が劣る。ラインハルトは全部を戦艦にして先制攻撃で同盟艦隊を撃破することで、同盟艦隊の攻撃による損害を極小化するのが狙いである。これはラインハルトの能力が同盟軍3中将(パエッタ、パストーレ、ムーア)(いずれも1-1-1★★)よりも勝っていることがその背景にある。
対する同盟軍は3個艦隊を以下のように編成してラインハルトを迎え撃つ。能力の劣る同盟軍でラインハルトを打ち破るのは難しいが、3倍兵力の強みを利用してラインハルトの艦隊を少しずつでも削っていく作戦だ。
第1陣はパストーレ中将の第4艦隊。全艦を戦艦とし、遠距離戦闘でラインハルトと相対する。命中率は低いが、自身が全滅する間に1ユニットでも2ユニットでもラインハルト艦隊に損害を与えておきたい。
第2陣はムーア中将の第6艦隊(ヤンの親友ラップ少佐が参謀として勤務している)。これは戦艦と巡航艦を半数ずつ配置し、巡航艦の高い命中率でラインハルト艦隊に出血を強いる。
最後はパエッタ中将麾下の第2艦隊(ヤン自身が参謀として乗務している)。これは全てを巡航艦とし、接近戦に持ち込んでラインハルト艦隊を撃破する。ここでラインハルトを戦死させれば自由惑星同盟はサドンデス勝利になるし、負傷させて退場させれば、その後の戦いがぐっと楽になる。
勝負のアスターテ会戦に入る直前、銀河帝国は軽い失望感を味わうことになる。このゲーム、毎Turn新たな将軍をランダムに登用できるのだが、引いてきたのが「無能な貴族」の代表ともいうべきリッテイハイム公(1-0-0★★)。「娘が美人」ということで有名な有名なリッテンハイム公。リッテンハイム公は(本人の希望とは関係なく)イゼルローン要塞守備隊司令官に就任した。これでは宮廷活動も思うようにできまい・・・。
さあいよいよ決戦だ。アスターテ星系に進出してきたラインハルト麾下の銀河帝国第2艦隊(まだ単なる上級大将の身分なので、親衛艦隊は使わない)。それに対して自由惑星同盟も3個艦隊で迎え撃つ。ここで決戦を回避すれば、ラインハルトは労せずして昇進を得る。危険でも戦うしか道はない(と思う)。
まず最初にパストーレ中将の第4艦隊がラインハルトと対峙する。戦艦同士の砲撃戦。しかしラインハルトが圧倒的に強力であった。ラインハルトの艦隊は1艦も損なうことなくパストーレの艦隊を文字通り壊滅させた。パストーレ中将は負傷しつつも辛くも脱出船に乗って戦場を離脱する。
続いてムーアの第6艦隊がラインハルトに挑む。今度は戦艦と巡航艦の混成部隊だ。が、これまたラインハルトの敵ではない。巡航艦による2度の射撃チャンスを得たが、悲しいかな命中なし。その間にラインハルト艦隊の猛攻を受けてムーア艦隊は壊滅した。ムーア中将もまた脱出船に乗って戦場を離脱する。
最後に残ったのはパエッタ中将麾下の第2艦隊。しかし1艦も損していないラインハルト艦隊に対し、同兵力でまず勝ち目はない。パエッタ中将は後退を決意。ラインハルトはアスターテ星系を支配した。後にアスターテ会戦と呼ばれる艦隊決戦は、「常勝の天才」ラインハルト公ローエングラムの歴史的な大勝利に終わり、彼の名は銀河に知れ渡った。
「汝、ローエングラム公ラインハルトを帝国元帥に任ず。また、帝国宇宙艦隊副司令長官に任じ、宇宙艦隊の半数を汝の指揮下におくものとす」
惑星オーディンに帰還したラインハルトを待っていたのは、元帥への昇進式であった。二十歳の元帥は古今の歴史で空前の出来事であったが、彼にとっては彼自身の野望のほんの第1歩に過ぎなかった。
第1Turn後半(UC796/RC487:1-3月)
アスターテでの大敗を喫した自由惑星同盟は、「エル・ファシルの奇跡」として名の知れた若き少将ヤン・ウェンリーを登用。第13艦隊を編成してイゼルローン要塞に向かわせた。ヤンの判断では現有兵力でのラインハルト艦隊撃破は困難と判断し、ラインハルトの戦死又は負傷を狙った作戦を行うこととした。すなわちヤン艦隊はその編成を全て戦艦とし、長距離射撃によるラインハルト艦隊の減衰を狙う。またラインハルト艦隊の隙をついてムーア中将の第2艦隊(先のアスターテ会戦の生き残り)をアスターテ星系に派遣し、同星系の奪回を狙う。イゼルローン要塞付近でヤンとラインハルトは激突する。ヤンの作戦は図に当たった。当初は兵力で優位に立っていたラインハルトが優位に戦いを進めていたが、次第に指揮能力に勝るヤン艦隊が優位にたってきた。ヤン艦隊は数こそ少ないものもその射撃は的確であり、ラインハルト艦隊の戦艦を次々と撃破していった。ラインハルト艦隊は結局残り1ユニットまで減らされてしまい、這う這うの体でイゼルローン回廊から撤退するしかなかった。ラインハルトの旗艦「ブリュンヒルト」もヤン艦隊の砲撃により撃破され、ラインハルト自身も重傷を負って命かながら戦場を離脱する他なかった。
ラインハルト艦隊を撃破したヤンは、引き続いてイゼルローン要塞に対する攻略作戦に着手する。難攻不落といわしめたイゼルローン要塞。しかし今回ヤンは奇策を以てイゼルローン要塞を攻め、全く自軍の出血を見ることなく同要塞を陥落せしめた(第7次イゼルローン攻防戦)。ヤンはこの戦いの功績によって中将に昇進した。
つづく
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