モンテリマール(以下、本作)は、Compass Gamesが精力的に発売を進めているCSS(Company Scale Series)の1作品である。同じシリーズの作品としては、太平洋の島嶼戦を舞台とした"Saipan", "Tinian", "Guam"、カスピ海ノヴォロシスクでの上陸作戦を扱った"The Little Land"などがある。さらには2020年に発売された最新の"The Fulda Gap"は、1985年に想定されていた西ドイツにおける東西対決をテーマとしている。
CSSのシステムについては、 既に紹介している ので、簡単に記すと、1Turnは2時間(夜間は除く)、1Hexは500mに相当し、1ユニットは1個中隊である。基本システムはチットドリブンで、師団や連隊に相当する活動チットをカップに入れてチットに従って部隊が行動する。チットを購入するためには「発令ポイント」(Dispatch Point)と呼ばれるポイントを消費する。
今回プレイ、本作をVASSALによる遠隔対戦でプレイすることになった。プレイしたシナリオは、シナリオ3「Openning Blows」。1944年8月22日に行われたドイツ第11装甲師団によるモンテリマール北方への突破作戦を扱う。ドイツ軍はモンテリマール北方に展開する米タスクフォースバトラーを撃破しつつ、北に向けた突破口を啓開することを目指す。米軍の目的はその阻止にある。このシナリオは比較的広い範囲(フルマップ2枚)を扱うが、登場兵力が少なめで、またプレイ時間も短い(全8Turn)。従って本格的なキャンペーンシナリオへ進むためのステップアップには最適である。
今回の参加者は計2名(米独各1名)。私は独軍を担当する。
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午前中に3Turn程プレイした際、ルール間違いがあったため、午後に仕切り直しとなった。午前中のプレイで米軍砲兵の恐ろしさ(まるで旅順要塞を攻撃する白襷隊のようになる)を思い知らされたドイツ軍担当(の私)は、十分な兵力が揃うまで性急な攻撃は避けることにした。そしてこちらの砲兵射撃で前線の米軍陣地をつぶした後、歩兵を前進させる戦術を採用することにした。そのためこのTurnは砲兵陣地の展開とモンテリマール市街への兵力集結を行う。0900
ドイツ軍はモンテリマールに砲兵陣地を展開した。主攻撃目標である300高地、294高地を射程距離に収める。また第11偵察連隊(AufAbt、部隊名が緑色バーのユニット)を戦線右翼に前進させて米軍の出方を伺う。1100
このTurn、ドイツ軍は特別増援を得る。第15装甲連隊か第111装甲擲弾兵連隊のいずれかだ。前者はパンター中戦車2ユニットを装備する戦車部隊。後者はハーフトラックに乗った機械化歩兵の集団だ。当然前者が欲しい所だが、ダイスは無情にも第111装甲擲弾兵連隊を示していた。断るわけにもいかないので、増援を受け取っておく。なおVPを余分に支払えば、次のTurnに第15装甲連隊も手に入る。モンテリマールに展開したドイツ軍の砲兵部隊が射撃を開始した。目標は米軍の陣取る300高地と294高地である。激しい砲撃が高地全体を包み、米守備隊の視界を奪っていく。頃合い良しと見たドイツ軍は、攻撃の主力である第110装甲擲弾兵連隊(部隊名が赤色バーのドイツ軍ユニット)に前進を命じた。ハーフトラックに乗った装甲擲弾兵が北へ向けて前進を開始する。
1300
ドイツ軍第110装甲擲弾兵連隊はパンツァーファウストで前面に立ちふさがる米軍M8装甲車部隊を撃破した。さらにこのTurn、ドイツ軍期待の第15装甲連隊(部隊名がオレンジ色バーのユニット)がついに登場してくる。第15装甲連隊はただちに出撃。戦線右翼に展開し、米軍M8グレイハウンド装甲車を射程内に捉えた。1500
先に前進していたパンター戦車は、米軍の装甲車をまさに瞬殺した。さらに先に増援で到着したドイツ軍第111装甲擲弾兵連隊(部隊名が黄色バーのユニット)も進撃を開始。300高地とローヌ川の間を進撃していく。しかし米軍もさるもの。自慢の砲兵火力を総動員してドイツ軍を阻止せんとする。砲撃を浴びたドイツ第111装甲擲弾兵連隊が立ち往生する。さらに自慢のパンター戦車も砲火に包まれ、にっちもさっちも行かなくなる。本作に限らずCSSシリーズのゲームは、砲兵による間接射撃が極めて強力である。観測が容易な上、指揮系統に関するルールが緩いため、防御力の微弱は装甲車を敵歩兵連隊に横付けして、それを観測者にして間接射撃を誘導するなどということが容易に実施できてしまう。さらに砲撃が仮に外れであっても、そのヘクスに弾着マーカーを置くことができる。これがまた強力で、弾着マーカーが置かれたヘクスでは火力減少が適用される(爆風などで視界が遮られる)上、2ヘクス以上離れた目標への射撃能力を失う。さらに移動力も制約される(例えば米軍の重砲から集中砲火を浴びれば、移動力が0になる)ので、着弾位置から離れることすらできなくなる。高性能を誇るパンター戦車であっても、米軍のM7プリースト自走砲部隊に一度狙われたら、そこから脱することは甚だ困難になる。そういった意味では、CSSはまさに「砲兵のためのゲーム」と言えるかもしれない。
感想
今回は時間の関係でここまでとした。残り3Turnあるが、ドイツ軍にとってはかなり厳しい状況といえる。先にも書いた通り米砲兵の威力が大きいため、目標に近づくのが困難なのだ。対策としてはとにかく多くの目標を一度に攻撃し、米砲兵隊の射撃能力を飽和させるのが良いように思える。今回は午前中にルールミスがあったため、それを除いたプレイ時間は3~4時間であった。シナリオは全8Turnなので、最後までプレイすれば6~7時間程度かかりそうである。それでも1日あれば十分に終わる時間だ。
本作を含めてCSSはルール自体は至ってシンプルだ。射撃システム等はあの「PanzerBlitz」よりも考え方はシンプルかもしれない。ただし作戦戦術級ゲームという性格上、ルールがやや多いことは否めない。歩兵、戦車、砲兵といった各種兵科の違い、火器の射程距離、師団レベルにおける指揮統制の問題など、様々な要素がルール化されているためだ。
気になったのは砲兵の威力である。本文でも触れたが本作での砲兵は極めて強力だ。特に米軍は連隊戦闘団レベルで重砲火力が与えられているため(ドイツ軍では重砲は師団レベル)、極めて柔軟な運用が可能になってくる。要するに「重砲が迫撃砲のような手軽さで」バンバンぶっ放して来るのだ。重砲が強力なことは理解できるが、防御時で果たしてこれほど強力なものなのかは疑問なしとしない。
似たような話が 同じCSSのSaipanでも起こっている。 ここでは日本軍と米軍の違いはあるが、やはり米軍の上陸部隊が海岸線でサイパンを守る日本の砲兵部隊にたたかれ、上陸時点で半数近い損害を被るという結果になっている。この時はルール適用に一部ミスがあったようだが、それにしてもCSSにおける砲兵の威力はちょっと・・・。
今回は対面対戦ではなくVASSALを使った遠隔対戦であったが、概ね快適なプレイ環境であった。1度か2度同調切れが発生したが、すぐに気づいて回復できたので影響はなかった。実際にマップを使ってプレイするよりもむしろ快適であったとさえ思える。特に今回のようにマップが広くてそこそこ駒が多いゲームでは、通常のプレイスタイルよりもVASSALの方が楽に思えることが多い。コロナウィルスによって緊急避難的に広まりつつあるVASSALによる通信対戦であるが、コロナウィルス収束後でも1つのプレイの形として定着するかもしれない。
なお、今回は時間の関係でシナリオ完了とはいかなかったが、VASSALなのでデータは残っている。機会があればソロプレイでも良いので最後までプレイしたいものである。
つづく
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