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Eastern Fleet(以下、本作)は、Avalanch Press社が2001年に発表したシミュレーションゲームである。同社のSecond World War at Sea(SWWAS)シリーズの1作で、テーマは1942年におけるインド洋における日米海軍同士の対決である。スケールやシステムはSWWASシリーズと共通であり、1スクエア36海里、1Turn=4時間、1ユニット=1隻(駆逐艦以上)、航空機1個中隊(約12機)である。
SWWASシリーズの特徴は、海戦ゲームにもかかわらず、ブラインドサーチやダミー方式を用いていないことである(選択ルールや特別ルールでダミーを使用する場合もある)。つまり同じマップ上に両軍艦隊が配置された状態でプレイする。Victory Gamesのフリートシリーズに近いイメージである。もちろん、実際に攻撃するためには「索敵」を行って「発見」する必要がある。しかし索敵はダイス1個で決まるので、扇形索敵を自身で実施する必要はない。なお情報の不確実性を再現するために、両軍のTF(Task Force)は任務に応じて事前プロットが必要になる。
今回、作戦シナリオNo.4「South of Ceylon」をプレイしてみた。これは日本軍の南雲機動部隊によるセイロン島攻撃を再現するヒストリカルシナリオである。下名は連合軍を担当した。

JP_CV02日本軍の主力は正規空母5隻を有する強力無比な南雲機動部隊。さらに軽空母「龍驤」を有する南遣艦隊がベンガル湾での通商破壊戦に任じる。そしてペナンからラングーンへ向かう総計41隻の大輸送船団。その兵力は空母5、軽空母1、水上機母艦1、高速戦艦4、重巡7、軽巡4、駆逐艦24、敷設艦1、潜水艦5、輸送船41に達し、空母艦載機も約350機を数えた。
[RN_CV07]対する英軍は、空母が「フォーミダブル」「インドミダブル」の2隻と旧式の「ハーミーズ」。そのうち「ハーミーズ」は艦載機の運用能力に難があり、実質的には空母としては利用できない。戦艦は比較的高速の「ウォースパイト」と低速のR級戦艦4隻。総兵力は空母2、軽空母1、戦艦5、重巡2、軽巡6、駆逐艦15、護衛駆逐艦6、モニター艦1、潜水艦2等である。空母艦載機は96機で、日本艦隊の1/3にも満たない。しかも英艦載機の性能は日本機のそれに比べるとお話にならないぐらい劣っている。
英軍にとって頼みの綱は基地航空兵力で、ダイス目によって変動があるものの、100~200機の航空兵力がインド周辺に展開している。敵のCAPをかいくぐることができれば、金星を上げる可能性もある。

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上記の状況を鑑み、英軍が立てた作戦はこうだ。
(1) 日本空母の攻撃圏内に東洋艦隊の主力を入れない。常に敵空母との間合いを意識しつつ、極力日本空母を牽制する。
(2) 反撃の主力は基地航空兵力とする。また強力なCAP隊を持つ南雲機動部隊ではなく、比較的CAPの弱体な小沢麾下の南遣艦隊を狙う。

第1日目(1~6Turn)(1942/4/4)

NE_CL02セイロン島南方から近づく日本機動部隊に対して、セイロン島のトリンコマリ、コロンボ両港からは慌ただしく艦隊が出航していく。コロンボからは重巡「コーンウォール」「ドーセットシャー」が5隻の駆逐艦/護衛駆逐艦と共に出航。トリンコマリからは空母「ハーミーズ」、モニター艦「エレバス」等計4隻が出航していった。またトリンコマリに在泊していたオランダ海軍の旧式巡洋艦「スマトラ」は単独で西へ向けて出港した。「スマトラ」は機関損傷によって6ノット程度の速度しか出せなかったため、他艦の足手まといにならないようにするためだ。
インド南西部に浮かぶアッズ諸島の秘密基地からは、空母2、戦艦5を含む英東洋艦隊の主力が出撃していく。彼らの主な任務は日本艦隊の攻撃だが、先にも述べた通りまともに戦えば勝ち目は薄いので、日本艦隊を牽制しつつ、弱小の日本軍別動隊を攻撃する機会をうかがう。

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JP_A6M2日本艦隊の行動であるが、ベンガル湾で小沢の南遣艦隊と潜水艦が通商破壊戦を実施し、この日だけで計23隻もの商船を撃沈又は拿捕した。英軍はセイロン島に展開していた基地航空兵力の主力を急遽インド本土のマドラスに展開し、対潜哨戒と索敵に努めた。しかし折から天候が悪化してきており、航空索敵は悉く奏功しなかった。
その間、南雲機動部隊は空母艦載機でセイロン島南部を攻撃。コッガラにある英軍航空基地を繰り返し爆撃する。しかし空母機の対地攻撃力は限定されたものなので、航空基地を完全に無力化するには至らなかった。

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第2日目(7~12Turn)(1942/4/5)

なおも天候は優れなった。日本の空母機はコッガラに対する攻撃を再開する。対空砲火によって計12機の日本機が撃墜されたが、彼らは屈せず攻撃を繰り返し、遂にコッガラを無力化することに成功した。

RAF_Bfrtベンガル湾方面であるが、ようやく回復しつつある天候の中、英軍のカタリナ飛行艇が小沢麾下の南遣艦隊をマドラス東方約150海里に発見した。チャンスである。マドラス基地からは次々と攻撃隊が発進していく。
第1波攻撃隊は、12機のハリケーン戦闘機に援護された12機のボーフォート雷撃機である。彼らは日本側のCAPを上手く躱して日本艦隊上空に侵入。輪形陣の真ん中にいる軽空母「龍驤」に対して必死の雷撃を敢行したが、惜しいかな命中魚雷を得ることはなかった。

「あんな物凄い対空砲火をこれまで見たことがない」

基地に帰還したボーフォートの搭乗員が語った言葉である。それでも強力な対空砲火を浴びながらもボーフォートの全機が無事帰還したのは大きな収穫であった。

RN_Sword第2波攻撃隊は、軽空母「ハーミーズ」から陸上基地に移されていたソードフィッシュ12機(1個中隊)である。彼らはボーフォートよりも遥かに低速であるため、ボーフォートとは別行動を取らざるを得なかった。目標地点に到達したソードフィッシュ隊は、しかし目指す敵艦を見つけることができず、空しく引き上げるしかなかった。

一旦マドラス基地に帰投したボーフォート雷撃機は、再び魚雷を装備し、西日の差し込む滑走路を再び発進していった。目指すは150海里彼方の小沢艦隊。今回は2個中隊(計24機)のハリケーン2型戦闘機が護衛のために同行する、

JP_CVL06夕闇の迫る海上で小沢艦隊を発見した英攻撃隊は、輪形陣の中心に位置する軽空母「龍驤」に向けて突進した。「龍驤」を発進した九六式艦上戦闘機12機がボーフォート雷撃機を迎え撃つが、火力に劣る九六艦戦ではボーフォート雷撃機を阻止できない。激しい対空砲火の中、何とか魚雷発射に成功したボーフォート雷撃機は、遂に1本の45cm魚雷を「龍驤」に命中させた。魚雷は「龍驤」の船体中央付近で爆発。水線下に大穴を開けて「龍驤」に大浸水を引き起こした。魚雷命中によって全ての動力が失われた「龍驤」は懸命なダメコンの甲斐なく、約1時間後にベンガル湾の海にその姿を没した。今次大戦で日本海軍が失う最初の空母になったのである。

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つづく

写真06_インド洋作戦