北岬沖海戦(Battle of North Cape)は、1943年12月26日、援ソ船団を攻撃するためにノルウェーを出撃したドイツ戦艦「シャルンホルスト」と、それを迎え撃った英艦隊の戦いである。英艦隊の主力は新鋭戦艦「デューク・オブ・ヨーク」。結果は周知の通り「シャルンホルスト」の沈没。この戦い以降、ドイツ海軍の大型水上戦闘艦が連合軍の水上部隊と交戦することはなかった。
この北岬沖海戦を「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)でシナリオ化してみたい。今回はVASSALを使ったテストプレイで、プレイスタイルはソロプレイである。
状況
この戦いは、船団攻撃に出た「シャルンホルスト」以下のドイツ艦隊が、情報不明のままノルウェー北方海域を彷徨い、有力な英艦隊に捕捉されたという戦いである。兵力的にはドイツ海軍が「シャルンホルスト」1艦のみ(駆逐艦5隻が護衛についていたが、途中で分離してしまった)。対する英艦隊は新鋭戦艦「デューク・オブ・ヨーク」の他、巡洋艦4隻、駆逐艦4隻という布陣であった。いわば「宇宙戦艦ヤマト vs ガミラス冥王星艦隊」のようなシチュエーションである。尤もガミラス冥王星艦隊とは違い、英艦隊は性能面でも「シャルンホルスト」を凌駕しているが・・・。この戦いを再現するに当たって最初に悩んだのはバランスと勝利条件である。そもそも兵力的に大差がある上、性能面でも差がついている(「シャルンホルスト」の28cm主砲では、「デューク・オブ・ヨーク」に致命傷を与えるのは難しい)ので、まともに戦えば勝負にならない。そこでゲームバランスで調整することになる。
勝利条件はドイツ側を中心に考えた。ドイツ側の勝利条件は以下のいずれか一方を達成すれば勝利とした。
(1) 「シャルンホルスト」が生き残ること。
(2) 英艦隊に一定以上の損害を与えること。
まず(1)については、「シャルンホルスト」が「デューク・オブ・ヨーク」よりも僅かに優速なため、運が良ければ逃げ切れることにした。それを阻むのが英バーネット中将率いるフォース1である。重巡1、大型軽巡2からなるバーネット戦隊は、丁度ラプラタ沖海戦におけるハーウッド戦隊の役割を担うことになる。つまり傷ついた熊を追い詰める猟犬だ。ただしこの熊には凶暴な爪(28cm主砲)がある。戦艦相手には些か威力不足のこの主砲も巡洋艦相手なら十分な威力を発揮する。英艦隊としては「シャルンホルスト」を逃がさなように追い詰めながらも、不用意に近づいて大損害を被れば、せっかく「シャルンホルスト」を撃破しても、上記(2)の条件に抵触して負けてしまう。「シャルンホルスト」を逃がさないようにしつつ、自艦の損害を回避する。そのあたりが本シナリオにおける英艦隊の難しい所かもしれない。
一方のドイツ艦隊。「シャルンホルスト」の生き残りが第一条件だが、英艦隊が「損害を顧みず」突撃してきた場合、生き残りは極めて難しい。そこで英艦隊から距離を取りつつ、適宜反撃を加えて敵を近づけないようにする必要があるだろう。
ドイツ艦隊は2通りの選択肢がある。1つは「デューク・オブ・ヨーク」を無視して逃げに徹し、バーネット戦隊に打撃を与える方法。この方法では「デューク・オブ・ヨーク」がフリーハンドになるため、一方的に砲撃を受ける危険性がある。首尾よく「デューク・オブ・ヨーク」の射程外に逃げきれれば良いが、そうでなければ史実通りなぶり殺しだ。ただ仮に「シャルンホルスト」が撃沈されても、バーネット戦隊に壊滅的な打撃を与えることができれば、勝利条件的には勝利できる可能性はある。
もう1つは「デューク・オブ・ヨーク」と積極的に交戦する方法である。主砲口径の違いによって不利は否めないが、「シャルンホルスト」にも有利な点はある。それは主砲の射程距離だ。「シャルンホルスト」の主砲である28cmSK C/34は、55口径の長砲身であり、最大射程40km以上を誇っていた。これは「デューク・オブ・ヨーク」の主砲である14-inch (35.6 cm) Mark VIIの最大射程距離約35kmを上回っていた。すなわち速度に勝る「シャルンホルスト」は交戦距離を自由に選択でき、自身が有利な距離で「デューク・オブ・ヨーク」と交戦することが可能なのである。これは「シャルンホルスト」の主砲口径の小ささをかなり補完できる可能性があった。加えて「デューク・オブ・ヨーク」を含めたキング・ジョージV級戦艦は、主砲に重大な欠陥を抱えていた。特に新たに開発した4連装砲は故障頻発で信頼性が低く、その欠陥は開戦後5年目を迎えていた1943年末になっても解消していなかったのである(シナリオではそのことを再現して「デューク・オブ・ヨーク」の主砲火力をカタログ値の約80%としている)。
この方法の欠点は、バーネット戦隊にフリーハンドを与えてしまうこと。巡洋艦の主砲で「シャルンホルスト」に致命傷を与えるのは無理だが、それでも3隻がまとめて撃ってきたら累積損害によって「シャルンホルスト」も無視できない損害を覚悟しなければならない。しかもバーネット戦隊の3隻のうち2隻が6インチ砲12門を備えた大型軽巡だ。その主砲は1発あたりの威力は小さくても、大量に命中すれば損害は免れない。特に非装甲部のクリティカルヒット(10発に1発の割合で発生する)を食らえば戦闘力に無視できない影響が出る。
これらを考慮し、最初のテストではドイツ艦隊は最初のプラン、つまり「デューク・オブ・ヨーク」は相手にせず、バーネット戦隊と戦う戦術を採用した。うまくいけば逃げ切れるかもしれない。それだけを期待して。
テスト状況
1Turn
英巡洋艦3隻に追われるドイツ戦艦「シャルンホルスト」は、南南西から接近する新たな艦影を捉えた。それは英戦艦「デューク・オブ・ヨーク」を主力とする戦艦1、軽巡1、駆逐艦4からなるブルース・フレーザー大将麾下のフォース2である。最大戦速で距離を詰めた「デューク・オブ・ヨーク」は距離12,000m(8Hex)で「シャルンホルスト」に対して初弾を発砲した。艦首6門の36cm砲から放たれた主砲弾は、「シャルンホルスト」の後方で水柱を上げた。2Turn
速度に勝る「シャルンホルスト」は、「デューク・オブ・ヨーク」の攻撃を逃れようと左に転舵して「デューク・オブ・ヨーク」を艦尾に見る形にした。英艦隊は「デューク・オブ・ヨーク」が13,500mまで開いた距離から艦首方向の36cm砲で「シャルンホルスト」を撃ちまくる。しかし射撃精度が悪く、命中弾が得られない。北方から「シャルンホルスト」を追っていた英艦隊フォース1(重巡1、軽巡2)も「シャルンホルスト」の左舷前方から主砲射撃を開始した。重巡「ノーフォーク」が放った20cm砲弾1発が「シャルンホルスト」の射撃指揮所に命中。一時的に「シャルンホルスト」の砲戦能力を奪った。
3Turn
主砲・副砲が沈黙した「シャルンホルスト」に対して、英艦隊は猛砲撃を浴びせる。「デューク・オブ・ヨーク」の主砲弾1発が「シャルンホルスト」に命中したが、距離が遠かったことなどもあって「シャルンホルスト」の装甲板に跳ね返された。また距離7,500mまで近づいたバーネット中将のフォース1は激しい砲撃を浴びせかけ、20cm砲弾3発、15cm砲弾7発を「シャルンホルスト」に命中させたが、その過半が戦艦の重装甲に跳ね返された。英巡洋艦2隻(「ノーフォーク」「シェフィールド」)は右舷方向に魚雷を発射した。
4Turn
英巡洋艦の放った魚雷7本は惜しくも目標をそれた。「シャルンホルスト」は左60度旋回。真北に針路をとる。ノルウェーとは反対方向だが、まずは後方から迫る「デューク・オブ・ヨーク」を引き離したい。「デューク・オブ・ヨーク」との距離は13,500mである。「デューク・オブ・ヨーク」の放った36cm砲弾の1発が「シャルンホルスト」の艦尾に命中。小さな誘爆を引き起こした。「シャルンホルスト」が北に向けて回頭したため、バーネット中将麾下のフォース1は「シャルンホルスト」と並行砲戦を試みるべく左へ回頭する。しかし回頭中は一時的に射撃を停止せざるを得ない。その間隙をついて「シャルンホルスト」がバーネット戦隊を猛射する。28cm砲弾2発が「ノーフォーク」に命中したものの、「ノーフォーク」の損害は比較的軽微であった。また15cm砲弾1発が「シェフィールド」を直撃したが、こちらも比較的軽微な損害で済んだ。
つづく







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