ツクダホビーから1990年に発表された「ラグナロック作戦」(以下、本作)は、田中芳樹氏の小説「銀河英雄伝説」(以下、銀英伝)の一場面であるラグナロック作戦を作戦級で描いたシミュレーションゲームである。
銀英伝といえば、ハードSFというよりはスペースオペラの範疇に入る作品である。また宇宙戦艦ヤマトや機動戦士ガンダムのような「兵器」に焦点を当てた作品ではなく、「人物」に焦点を当てた作品といえる。その銀英伝を舞台とした本作も、「兵器」ではなく「人物」に焦点を当てたデザインとなっている。
本作のマップは銀河系の半分が二次元のHexマップで描かれている。1Hexのスケールは不明だが、1Turnは地球時間の約10日間に相当する。また宇宙艦の移動力は、1Turnに4~12Hex移動可能である。1ユニットは約2,000隻の宇宙艦を表す。
本作の基本システムは、戦国時代を扱ったゲームである「謙信上洛」や「真田軍記」に近いものになっている。すなわち両軍とも指揮官を中心とする複数ユニットからなる「艦隊」を形成し、艦隊単位で行動する。艦隊の能力は、指揮官の能力によって左右され、指揮官には攻防能力の他、行動力というパラメータがある。スタック制限はなしなのでその気になれば全戦力を一か所に集中できる(何万隻も艦隊といっても宇宙は広いのだ)。
本作の基本的な手順は、手番側通常移動-->非手番側リアクション移動-->手番側強行軍移動-->手番側戦闘、となっている(これを帝国、同盟の順に繰り返す)。通常移動以外では行動力チェックが必要で、2D6で行動力以下の出目が必要になる。ちなみに同盟軍のヤンとアッテンボローは行動力10で最高、一方の帝国軍は「疾風」ウォルフことミッターマイヤーの行動力9が最高で、主人公ラインハルトとロイエンタールが行動力8、その他の帝国軍将官が行動力7となっている。これを見る限り同盟軍の方が「フットワークが軽い」と言える。
戦闘システムはファイヤーパワー方式。結果はステップロス数によってあらわされる。指揮能力によってダイス目が修正される他、戦術の組み合わせによるダイス修正もある。例えば攻撃側が「突撃」を仕掛けてきて、防御側が突撃に強い「縦深陣」を敷いたとすると、攻撃側のダイスは-2(不利になる)、防御側のダイスは+1(有利になる)になる。その時、威力を発揮するのが「ミラクルヤン」ルール。戦術は計7種類あるのだが、ヤンが参加している場合、同盟側はダイス1個を振る。帝国側は出目に等しい枚数の「使わない」戦術チットを公開しなければならない。例えば出目が6なら、使わない戦術チット6枚を公開することになるから、帝国側がどの戦術チットを使うか同盟側には丸わかりである。さらに同盟軍は「ユリアン」チットなるものがあり、それを使うことでダイス目を自動的に6にできる。ちなみに戦術能力でもヤンは他の帝国軍将帥を圧倒しており、同数の対決なら「ミラクルヤン」に対抗できる帝国軍指揮官は存在しない。そう、主人公のラインハルトを含めて。
他にはイベントルールがある。同盟側に増援部隊が登場したり、帝国占領下の惑星で暴動が発生したりするが、一番デカイのは「カイザー発病」。主人公であるラインハルトが病気で寝込んでしまう。そうなるとラインハルトが入院して動けなくなるばかりか、帝国軍の他の将帥も士気が落ちて能力が下がってしまう。同盟側としてはラインハルトが入院中に決戦を仕掛けておきたい所だ。
今回、この「ラグナロック作戦」をVASSALでソロプレイしてみた。以下はその記録である。
1Turn
帝国軍の先鋒たるロイエンタール上級大将(4-4-8★★★、攻撃能力、防御能力、行動力、指揮順位、以下同じ)麾下の3個艦隊がイゼルローン要塞前面に展開する。イゼルローン要塞を守るヤン大将(5-6-10★★★)は、ダミー艦隊を出撃させて帝国軍の攪乱を図る。さらに首都ハイネセンからは同盟軍貴重な予備兵力であるパエッタ中将(2-2-5★★)麾下の第1艦隊が出撃していく(無能なパエッタが珍しく2回連続で強行軍チェックに成功した)。ソロプレイだからもどかしいのだが、ロイエンタールのキモチとしては、「ヤンがイゼルローンに残っているのかどうかわからない」といったところだろう。
2Turn
イゼルローン要塞を順当に包囲したロイエンタール上級大将の帝国艦隊。しかし要塞内に籠るヤン艦隊の正体はわからない。そこでイゼルローン要塞を遠巻きに包囲し、降伏勧告を実施した。ヤンが要塞内にいる場合は、降伏勧告が成功しないのでその存在がわかる。出目は3で「降伏せず」だった。これによりイゼルローン要塞にヤンが残っていることがほぼ明らかとなった。そこでヤンはイゼルローンを包囲するロイエンタール艦隊に対して突破戦闘を仕掛けた。イゼルローン要塞近傍での戦いでは、要塞の耐久力(10)を自らの戦力に追加できる。従って通常よりもヤンが有利に戦えるのだ。ヤン艦隊は2度にわたって軌道突破を仕掛けた。帝国軍は8ステップを失ったが、ヤンも3ステップを失った。
このあたり、大昔のGame Journalの記事等から「ダミーを置いてロイエンタールを怯ませる」戦術が再現できるかと思ったが、ルールブックを読み直すと「帝国軍ユニットに隣接されるとダミーは消える」とある。従ってヤンの影武者をイゼルローン回廊に配置しても、意外と簡単にバレてしまうのではと思う。だから上記のような面倒な事はやらなくても良いはず・・・。
ということに気が付いたのは、ゲームがかなり進んだ後であった。
3Turn
帝国軍ラインハルト元帥(5-4-8★★★★)本隊がフェザーン回廊に姿を現した。艦艇54,000隻からなる大艦隊である。ラインハルトはフェザーンに侵攻し、フェザーンを無血占領した。イゼルローン要塞では、ヤン艦隊は再び出撃する。ミラクルヤンが冴えてロイエンタールが手の内を読まれたので、ロイエンタールは無理な追撃を行わず、「縦深陣」というやや退嬰的な戦術を採ってきた。ヤンも兵力的に苦しくなってきたので「撤退」を宣言して後退。ティアマト星系でヤン艦隊は、かつての上官パエッタ中将麾下の第1艦隊と合流し、戦力を強化した。
ロイエンタール艦隊は大きな損害を被ったが、ヤンなきイゼルローンを占領し、一息つく。
4Turn
帝国軍はフェザーンに補給基地を築いて後方拠点にする。またフェザーン守備用としてトゥルナイゼン中将(2-2-6★)麾下の艦艇2000隻を残置した。そしてラインハルト自ら率いる親衛艦隊がフェザーン回廊を抜けて自由惑星同盟領内に侵入する。フェザーン回廊から最も近い有人惑星はレサヴィク星系。ラインハルト艦隊の前方を進む「疾風ウォルフ」ことミッターマイヤー上級大将(4-3-9★★★)麾下の艦隊がレサヴィク星系に到達したが、レサヴィク星系は降伏に応じなかった。5Turn
帝国軍を災厄が襲った。「カイザー発病」である。ラインハルト艦隊はフェザーンへ逆戻りとなる。帝国艦隊はレザヴィク星系に対する降伏勧告を継続するが、レサヴィク星系なおも降伏に応じない。その頃、イゼルローン方面からは同盟軍のダミーマーカーが近づいてきた。果たしてダミーの正体は本物か?。
6Turn
カイザー・ラインハルトはなおも病床にいる。帝国軍はダミーの正体を明らかにするため、レサヴィク星系を強襲するミッターマイヤーとミュラーの艦隊は、同星系を陥落させた。しかしその間にも多数のダミーが帝国艦隊を脅威する。戸惑う帝国軍将兵。7Turn
カイザー・ラインハルトはなおも病床にいる。帝国軍は同盟領内での地歩を広げようと、マーロヴィア星系、ルシアーナ星系に侵攻する。つづく







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