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ツクダホビーから1990年に発表された「ラグナロック作戦」(以下、本作)は、田中芳樹氏の小説「銀河英雄伝説」(以下、銀英伝)の一場面であるラグナロック作戦を作戦級で描いたシミュレーションゲームである。
今回、この「ラグナロック作戦」をVASSALでソロプレイしてみた。以下はその記録である。

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16Turn

ルンビーニ星系付近で同盟軍アッテンボロー艦隊を帝国軍の遊撃艦隊が捕捉した。ミュラー大将率いる12,000隻の艦隊である。兵力的には帝国軍が2倍の兵力である。しかし両艦隊の交戦は竜頭蛇尾の結果に終わり、両軍とも約1000隻の艦艇を失ったに終わった。
イゼルローン方面からロイエンタール上級大将の18,000隻がロフォーテン星系に到着。ロフォーテンに集結した帝国軍の主力艦隊はローエングラム公直率の第1線兵力が68,000隻(ラインハルト、ミッターマイヤー、ロイエンタール各提督が指揮)、後方警戒及び予備兵力はワーレン、ミュラー、シュタインメッツ各提督が率いる29,000隻である。

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17Turn

惑星ウルヴァシーで暴動が発生した。勝利を目前にして帝国軍は足踏み状態となる。鎮圧のためにシュタインメッツ艦隊がウルヴァシーへ向かう。
帝国軍は第1線兵力を集結させて前進を開始した。目指すは同盟の首都星ハイネセンである。リューカス星域まで前進してきたラインハルト艦隊とロイエンタール艦隊の計48,000隻に対し、チャンスと見たヤン艦隊は攻撃を開始した。兵力は32,000隻。帝国軍の2/3であるが、戦術の妙で補うしかない。
帝国軍の「縦深陣」に対して、ヤンは「側面包囲」で裏をかいた。最初の一撃で帝国軍5,000隻を撃破したヤン艦隊。損害は2000隻である。まずは幸先良し。さらに本格的な戦闘ではラインハルトの「側面防御」に対してヤンは「突撃」を実施。悉くラインハルトの裏をかくヤンなのであった。

「キルヒアイス、俺はここまでしか来られない程度の男だったのか」

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18Turn

リューカス星系の決戦場のミッターマイヤー艦隊が合流した。これで決戦場における帝国軍の艦隊は定数68,000隻、実数56,000隻となった。それに対してヤン艦隊は定数32,000隻、実数29,000隻である。兵力的にはヤン艦隊は半数。しかも帝国軍はなおも後方から増援部隊が近づいてきている。ヤンは現有兵力での戦術的勝利をあきらめて撤退行動に入る。しかしその瞬間をラインハルトは待っていた。

「いまだ、全軍突撃せよ」

猛烈な砲火がヤン艦隊を襲う。これまで整然とした陣形を保っていたヤン艦隊は、退却に入った瞬間に混乱が生じた。ラインハルトはこの攻撃で最高のダイス目12を出した。この追撃戦でヤン艦隊は9,000隻(9ステップ)にも及ぶ損害を出した。ミラクルヤンらしからぬ失敗と言えるかもしれない。

このリューカス星系の戦いはラグナロック作戦最大の宇宙会戦となった。参加兵力は帝国軍が68,000隻、同盟軍が32,000隻である。損害は帝国軍が18,000隻、同盟軍が14,000隻。参加兵力の多い帝国軍の方が損害が多いという奇妙な結果になったが、戦いそのものの勝者がどちらかなのかは明らかであった。

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19Turn

帝国軍はハイネセンに対する最後の攻勢を開始した。先行していたミッターマイヤー艦隊がランテマリオ星系を占領し、そこに帝国軍の補給基地を建設した。ハイネセンを密かに出撃したヤン艦隊がランテマリオ星系への奇襲攻撃を企てたが、肝心な所で行動チェックに失敗し、千載一隅の機会を逃した。

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20Turn

最終Turnである。現在帝国が支配している同盟有人惑星は17ヶ所。あと1ヶ所。首都星ハイネセンを帝国軍が支配すれば帝国軍が勝利する。ただしそのためには同盟軍有人惑星を1つも失うことができない。同盟軍には神出鬼没のヤン・ウェンリーとアッテンボローが健在である。
ラインハルトの親衛艦隊がハイネセンに侵攻した。ハイネセンを守る同盟軍ビコック大将は衛星軌道での抵抗をあきらめて惑星上に避難した。制宙権を確保した帝国艦隊はハイネセンの同盟軍首脳部に対して降伏を勧告。オーベルシュタイン上級大将の策謀もあって同盟政府のトリューニヒト最高評議会議長が降伏を受諾。自由惑星同盟政府は銀河帝国に全面降伏し、ここに100年以上続いた銀河帝国と自由惑星同盟との戦いが終結した。

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感想

プレイ時間は記録を含めて約10時間。対人戦ならこの半分ぐらいだろう。序盤のプレイ感覚は軽かったが、両軍ともユニット数が増えてくると、やや重くなる。特に中盤以降両軍の艦隊決戦が頻発するようになると、プレイ時間は一気に伸びてくる。やはり戦術チットを選ぶ部分に時間がかかるようだ。

今回はソロプレイで試したが、ダミールールや戦術チットルールがあるので、本来はソロプレイ向きではない。本当の魅力は対人戦でしかわからないだろう。ソロプレイで感じたのは、ダミールールが強烈。一旦ヤンをダミーの海に逃がしてしまうと、捕捉するのが極めて困難になる。例えばヤンがフェザーンに突入し、フェザーンを占領することも不可能ではない。そして一旦それを許すと、帝国軍はイゼルローン方面から補給を通さない限り補給切れになってしまうので苦しくなる。単純な兵力比では帝国が3:1以上で有利なのだが、能力の違いやダミールールによって帝国側が決して楽勝ではない。このあたりの処理の仕方は上手い。

ルールについては危険宙域について移動に関する制約を記したルールを見つけることはできなかった。補給線を通さないルールがあるのでそれだけで十分ということなのだろうか。実際には殆ど影響がないのだが、危険宙域に自由に出入りできるというのはやや違和感がある。
あと、ダミーの移動についてだが、ルールの書き方がやや曖昧である。ルールには「ダミーが表している本当の部隊の能力で移動できる」とあるが、では本物のダミーはどのように動くのだろうか。基本的には自由に移動できると考えた方が良いと思うが(そうでなければダミーとそれ以外が容易にバレてしまう)、対戦の際には事前に調整しておいた方が良いと思う。

全般的にルールは比較的優しくプレイ感覚は軽い。それでいてプレイバランスは良好で原作の雰囲気も程よく再現されている佳作である。


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