Iron Curtain(以下、本作)は、SCSシリーズの1作で、西ドイツ周辺で起こり得た東西両陣営の直接対決を作戦レベルで再現した作品である。本作の特徴は、年代別にシナリオが複数用意されている事で、1945年、1962年、1975年、1983年、1989年の各シナリオの中から、好みの時代を選択してプレイできるようになっている。
以前に1962年シナリオの対人戦 を紹介した。そこで今回は別のシナリオをプレイすることになった。
で、選んだのは1989年シナリオ。1989年といえば正にベルリンの壁が破壊され、冷戦が終結した年として知られている。世界平和にとっては誠に慶賀な年であったが、一方で激動の年でもあった。ソヴィエト連邦が地上から姿を消したのは、この2年後の1991年である。湾岸戦争が始まったのが1991年で、その時にはまだソヴィエト連邦自体は健在であった。まあ、今となってはどうでも良い話ではあるが・・・。
このシナリオは。ヴェトナム戦争で打撃を受けていた米陸軍の再建がほぼ完了し、質的な面では冷戦時代を通じて米軍が最も充実した時期である。M1エイブラムス、M2ブラッドレー、AH-64アパッチ、F-15イーグル、F-16ファルコン等の我々が大好きな「スーパーウェポン」達が揃い踏み。対する東側陣営もT-80、BMP-2、MiG-29、Su-27といった新兵器群で武装し、まさに「スーパーウェポン同士の華麗な激突」。トムクランシーの名作小説「レッドストームライジング」が描いた世界がそこに広がる。
今回はVASSALを使ったソロプレイを試みてみた。
準備段階
一部のシナリオを除いて本作では、"Run Up"と呼ばれる準備期間がある。この期間では両軍とも部隊の前線展開を行い、防衛体制を固める。WTO軍は鉄のカーテン近くに部隊を展開させる。NATOは逆に部隊を後方に下げる。前線に置いても包囲殲滅されてしまうからだ。今回、Run Upの期間が10Turnと長かったため、両軍ともかなり期待通りの展開ができた。NATOにとって嬉しかったのは、Run Up第6Turnの増援に登場する西ベルリン守備隊を配置できたこと。これによって西ベルリンの長期抵抗が期待できる(かもしれない)。1Turn(X Day)
戦争が始まった。WTO軍は鉄のカーテンを超えて西側に侵攻する。WTO軍は開戦当初から化学兵器を大々的に使用する。西ベルリン、ハンブルグ、ハノーバー、カッセルといった都市部に対して化学兵器が使用された(あな、オソロシや)。化学兵器の攻撃が功を奏したのか、西ベルリンは一撃で陥落。ハノーバーのNATO軍は何とか持ちこたえたが、カッセルは陥落。大都市ハンブルグの一部にもWTO軍が浸透してきた。NATO軍は主に航空攻撃でWTO軍の侵攻に対応する(WTO側は制空権を確保できる見通しなしと判断し、このTurn、航空部隊の温存を図った)。6ユニットもの対地攻撃機を投入して対地攻撃を実施したが、今一つ出目が振るわず、戦果が伸びない。その一方で虎の子のA-10攻撃機とF-15戦闘機が撃墜されてしまう。
本作での航空部隊は一応機種名つきで登場するが、能力的にはシンプルで「制空戦闘能力の有無」「対地攻撃能力の有無」「全天候能力の有無」の3種類しかない。F-15でもF-104でも「制空戦闘能力=あり」という点で全く同じだ。そのような中、A-10のような一部の機種は対地攻撃能力が2回実施可能。すなわち通常の2倍の対地攻撃能力を有していることになる。
地上でも局地的な反撃を行い包囲攻撃でWTO軍機械化部隊数個を撃破する。NATOの反撃は一撃離脱に徹し、戦闘が終わった後、全移動力で都市部や後方地帯に下がっていく。前線に残っていたらWTO軍の攻撃で包囲されてしまうからだ(ZOCが弱くて移動力が大きいので包囲攻撃を避けることはできない)。
「通常移動で前に出て叩き、拡張移動で後ろに下がる」
本作での基本的な戦術スタイルだが、このようなプレイスタイルがプレイ時間の長大化を招いている点は否めない。
2Turn(X+3 Day)
WTO軍の攻撃は早くも下火になる。NATO軍主力が大きく後退したため、WTO軍が前進したい所だが、前に出ると裸になり、包囲殲滅されるのは必定。必然、前進はへっぴり腰になる。ハノーバーに対する攻撃は成功しWTO軍がハノーバーを支配する。しかしハンブルグ、ブレーメンのNATO軍は持ちこたえる。NATO軍は突出してきたWTO軍部隊を個別攻撃して包囲殲滅していく。この時点でWTO軍が失った兵力は、開戦以来9個師団、3個旅団/連隊、2個ヘリコプター旅団に達した。NATO側の損害も決して少ないものではなく、機甲旅団9個、機械化旅団5個、西ドイツ郷土防衛旅団4個、西ベルリン守備隊4個旅団、その他航空兵力等を失っていた。
3Turn(X+6 Day)
NATO空軍が大暴れ。自慢のAir Land Battle(空地戦)ドクトリンでWTO軍第2梯団を空から叩く。航空攻撃によって第2梯団の半数近くが撃破されてしまい。しかしその一方でNATO側は米空軍のF-16 1ユニットとフランス空軍のMirage F1 1ユニットを失い、ベルギー空軍のF-16 1ユニットが大損害を被った。次のTurnあたり、WTO軍戦闘機隊が反撃に転じるチャンスとなる。WTO軍は例によってへっぴり腰侵攻。キールとブレーメンは未だ落ちず、南方では漸くニュールンベルグが陥落した。その一方でNATO側の機動反撃によってWTO軍はこのTurnだけで機械化師団9個、旅団/連隊2個、ヘリコプター2個旅団を失う。
さらにWTO軍にとって痛かったのはNATO航空戦力による航空攻撃だ。前線後方から戦場へ向かうWTO軍第2梯団がNATO軍航空戦力による阻止攻撃を受け、数個師団の機甲部隊が撃破されてしまう。
後から振り返ると、このTurnが事実上の決戦であったように思う。両軍とも「ヘッぴり腰」で戦っていたが、特にWTO軍はここで化学兵器投入を含む全力攻撃でハンブルグ、ブレーメンを落し、戦線をベルギー国境まで進めておくべきであった。それこそ「損害を顧みずに」だ。
つづく
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