ポケット海軍年鑑:日英米仏伊独軍艦集1937年版
海軍研究者編
今でいえば「世界の艦船」別冊のような本。1937年といえばスペイン内戦の真っ最中で、日中戦争が始まった年。後から振り返れば「戦争へ一直線の暗い世相」と思えるが、紙面は拍子抜けするほど「明るい」。ワシントン軍縮条約は日本にとって不平等条約で、無条約時代になったことで「各国が国情に応じた海軍の整備が可能になったことは、自衛権の立前上誠に慶賀すべきこと」とし、まさかこの2年後に世界大戦がはじまり、4年後には太平洋戦争が始まろうとしていたとは、少なくとも紙面から感じることはできない。紙面を見ると、現在の「世界の艦船」別冊ほど細かくはないにしても、そこそこ細かい諸元が記載されている。特に海外の艦艇については現在の我々が知り得る情報に近いレベルの情報は記載されている。その一方で日本艦の情報はかなり制限されており、航空機の搭載数や魚雷発射管の口径等はさりげなく隠されている。
当時は未だに戦艦中心と思われがちであるが、航空母艦(当時は空母ではなく航母と呼んだらしい)の威力や対空兵装の必要性についても触れられており、航空機が相応に有用な存在だとみなされていたことがわかる。
我々は少ない小遣いを使って「世界の艦船」別冊を購入しそれこそ貪るように読んだものだが、当時の軍国少年達も本書を読んで似たような感慨を得ていたのだろうか。
お奨め度★★★
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