「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)で地中海の戦いを再現してみる。
[CW_BB7a.png] 今回挑戦するのは「カラブリア沖海戦」。イタリア側では「プンタ・ステロ沖海戦」と呼ばれる戦いだ。シナリオの序文からこの戦いの背景を見てみよう。
1940年6月10日、イタリアは英仏両国に宣戦を布告した。ドイツ軍によるフランスへの侵攻とその成功に乗じる形での宣戦布告である。
英海軍はマルタ島から出発する船団を護衛すべく、アレキサンドリアから地中海艦隊が出撃。マルタ島へ向かう。英地中海艦隊の出撃を察知したイタリア海軍も、北アフリカへ向かう味方船団を守るために戦艦2隻を含む約50隻の大艦隊を出撃させた。
7月9日1515。英伊両艦隊が接触した。巡洋艦同士の砲撃戦が始まり、やがて両軍の戦艦が戦闘に加入してきた。地中海を廻る海戦の中では最大規模の戦いであるカラブリア沖海戦の幕が開いたのである。
とまあこんな感じの戦いである。Wikipediaによれば、参加兵力は英艦隊が25+2隻、伊艦隊が31+3隻となっている。しかしWikipediaには、特にイタリア側の参加艦艇について合計49隻分の艦名が記載されている。その他にもこの戦いは戦闘序列からして悩ましいのだが、良い資料が見つかった。Vincent O'Hara氏の書いた 「Struggle For the Middle Sea」 だ。この本はWW2地中海における個々の海戦を手際よくまとめている。個々の海戦での戦闘序列に加えて各艦の損傷状況が整理されて紹介されており、非常にありがたい。
もう1冊紹介すると、Marcus Faulkner氏の 「War at Sea - A Naval Atlas 1939-1945」 も参考になった。これはWW2における東西の海戦についてその動きを地図上で示した内容だが、文章だけではなかなか理解できない両軍の位置関係を平面的に理解するのに大変役立った。
この戦いの特徴としては、お互い非常に大規模な艦隊同士が激突しながら、戦果・損害が双方とも極めて小さかったことが挙げられる。これはお互いに接近戦を避けて約20km前後の長距離砲戦に終始したことと、特にイタリア側が僅かな損害を受けただけですぐに逃げ出す癖があったからである。これを再現するため、本シナリオでは勝利条件でイタリア側を厳しくし、比較的軽い損害を受けただけでもイタリア側が士気阻喪して撤退してしまうことにした。これによりイタリア側が士気阻喪を避けるために消極的な戦いをするよう仕向ける狙いである。
もう1つ。お互い大兵力を持ちながらもダラダラとした感じの海戦が続いたこともこの戦いの特徴である。そこで両軍の布陣をお互い縦深配置とし、序盤は巡洋艦同士の交戦になるようにした。さらに両軍とも序盤の指揮値を少なめに設定し、Turnが進むにつれて徐々に指揮値が増えていくようにした。
なお本シナリオでは、いわゆる「イタリア海軍は練度が低い」的なルールは適用していない。イタリア海軍の練度については、確かにいくつかの戦いで「ヘボい」面を見せることもあるが、地中海の戦い全般を通じて言えば練度が低いという明確な事象は少ない。むしろ、(例えばシルテ湾海戦やパンテレリア沖海戦のように)英海軍よりも練度的には高いと思わせる場面も少なくない。従って魚雷命中モードをやや低めに設定したことを除けば、イタリア海軍は平均的な技量を持っていると評価している。
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前置きはこれぐらいにして、では早速始めてみよう。
テスト状況
序盤、伊艦隊は4つのグループに分かれている。英艦隊に近い順に第4,8戦隊(軽巡4隻)、第7戦隊(軽巡4隻)、第5戦隊(戦艦2隻)、第1,3戦隊(重巡6隻)だ。それぞれには駆逐艦4隻からなる駆逐隊が各1個随伴している。第4,8戦隊に所属するのは、ジュサーノ級軽巡2隻とアブルッチ級軽巡2隻。前者は基準排水量約5,000トンの中型軽巡洋艦で、後者は同9,600トンの大型軽巡だ。6インチを8門、10門装備し、火力は優秀だが、装甲防御にやや難がある。
第7戦隊はモンテクッコリ級軽巡2隻とダオスタ級軽巡2隻。基準排水量はそれぞれ7,500トン、8,700トン。武装はジュサーノ級とほぼ同じだが、防御力ではジュサーノ級よりも優れている。
第5戦隊に所属する戦艦2隻は、いずれもコンテ・ディ・カブール級の戦艦。伊海軍では最も古い戦艦で、就役は1914~15年である。就役当時は速度21ktの弩級戦艦であったが、1930年代に実施した大改装によって最大速度28ktの高速戦艦に生まれ変わった。主砲口径も就役当時の30.5cmから、32cmに拡張された。しかし砲力と装甲では、今回登場する英戦艦(特に「ウォースパイト」)に比べると、劣っている点は否めない。
第1,3戦隊は、伊海軍が誇る重巡群6隻で、ザラ級4隻を主力とし、トレント級、ボルツァーノ級が各1隻という構成である。主砲20cm砲8門装備は共通しているが、装甲と速度でクラス毎に微妙な違いがある。
対する英艦隊は3つのグループに分かれている。
一番敵に近い位置にいるのが軽巡4隻からなる第7巡洋艦戦隊である。リアンダー級軽巡が3隻、タウン級軽巡が1隻だ。前者は基準排水量7,300トン、6インチ砲8門装備の中型軽巡、後者は約1万トン、6インチ砲12門装備だ。リアンダー級はイタリア側軽巡とほぼ拮抗する性能を有しており、タウン級はそれを凌駕している。
第2グループは、戦艦「ウォースパイト」と駆逐艦4隻からなるグループである。「ウォースパイト」は強力な38cm砲8門を装備した有力な戦艦で、本シナリオでは両軍通じて最強艦といえる。本艦の主砲は本シナリオに登場する伊戦艦の主装甲を全ての距離で容易に貫通するだろう。また本艦の強力な装甲防御は、伊戦艦の32cm砲に対して十分な防御力を発揮するはずだ。
第3グループは、戦艦「マラーヤ」「ロイヤル・ザブリン」と10隻の駆逐艦からなる部隊である。この2隻の戦艦は、「ウォースパイト」と比べるとやや装甲が薄く、そのため伊戦艦の32cm砲に対してもやや不安がある。また「ロイヤル・ザブリン」は速度も遅いため、高速を誇る伊戦艦に対して有効な砲撃戦を実施し得るのか、という点に不安が残る。
つづく
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