「本土決戦1945」 (以下、本作)は、2016年にGame Journal#60の付録ゲームとして発表された作品である。テーマは幻に終わった日本本土決戦で、日本本土を廻る日本と連合国との戦いをGame Journal独特の「強襲システム」で表現している。強襲システムの概要については、 こちらの記事 等を参照されたい。
本作は日本本土決戦がテーマなので、本土決戦に合わせてルールその他が調整されている。1つは「国体」ルール。要するに「皇室」の所在を示すルールだが、「国体」が連合国によって拉致されると、その時点で連合軍のサドンデス勝利となる。「国体」の位置は日本軍プレイヤーしか知り得ないが、「国体」は移動できないので、その配置には慎重を要す。
もう1つは「日本軍の秘密兵器」(選択ルール)だ。「震洋」「回天」「蛟龍」等の実在兵器の他、実用化できかどうかも怪しい「秋水」「橘花」「震電」「五式中戦車」、半ば都市伝説化している「十五糎高射砲」等が用意されている。これらの兵器について、実際の能力は兎に角、本作ではやや過大に評価されている。選択ルールなので採用する/しないはプレイヤーの自由だ。
今回、本作をソロでプレイしてみた。選択ルール「日本軍の秘密兵器」は「不採用」とした。
1Turn
連合軍は日向灘に空母機動部隊を進出させた。そして南九州に空母艦載機と基地航空隊で集中攻撃を加える。空母艦載機と電撃戦カードの組み合わせで南九州の日本軍守備隊を一掃。その後、温存していた2枚目の電撃戦カードで3個師団を南九州に上陸させて、同地を占領した。2Turn
連合軍艦隊は日向灘に集結しつつ次の作戦の機会をうかがう。日本軍は連合軍のピケット駆逐艦を航空攻撃し、駆逐艦1ユニットを撃沈した。3Turn
連合軍の大艦隊が瀬戸内海に進入してきた。日本軍は激しい航空攻撃を加えて海兵1個師団を海の藻屑としたが、連合軍は構わず上陸を実行。山陽地方一帯に連合軍部隊が上陸してきた。日本軍は海岸線で激しく抵抗し、海兵隊1個を葬ったが、残りは山陽地区一帯に展開し、橋頭保を固める。同じ頃、北九州上空と長崎上空にそれぞれ数機のB-29が飛来した。日本軍は迎撃戦闘機を発進させたが、護衛のP-51によってB-29には近づけなかった。B-29は北九州八幡地区と長崎浦上地区にそれぞれ原子核爆弾を投下した。人類史上初めて戦争で核兵器が使用された瞬間である。北九州と長崎はそれぞれ甚大な被害を被り。そのため指揮系統は大混乱を来した。北九州一帯の日本陸海軍も壊滅状態となり、北九州地区は事実上軍事的空白地帯となった。
4Turn
山陽地区で連合軍上陸部隊が電撃戦を実施。在地の日本軍を一掃して山陽地区を占領していた。また北九州では先の原子核攻撃で組織的な抵抗力を失った日本軍を連合軍地上部隊が一掃し、ここに山陽地区と九州全域が連合軍の支配する所となった。瀬戸内海で行動中の空母機動部隊は一旦日向灘に撤退し、次の作戦に備える。その空母機動部隊も度重なる航空攻撃によって稼働空母の1/3が撃破されていた。
5Turn
先のTurnに北九州と山陽地区が陥落したため、カードの枚数が変化。連合軍は8枚、日本軍は4枚となった。ただでさえ辛い日本軍は、より辛くなってくる。VPを計算すると連合軍が勝利するためには東京侵攻が必要ということがわかった。そこで連合軍は関東地区への侵攻作戦、いわゆる「コロネット作戦」を発動した。しかしその前に立ちはだかったのが聯合艦隊の生き残りである。東京湾沖に展開する聯合艦隊生き残りが何とか連合軍の相模湾侵攻を阻止したのだ。関東にたどり着けないことが判明した連合軍は目標を東海地区に変更。遠州灘から浜松一帯に計6個師団で上陸を敢行した。
6Turn
東海地区で有利に立つ連合軍は、一気に同地を占領しようとした。しかし攻撃の出目が悪く、さらに長野や箱根方面から日本軍の増援部隊が東海地方に現れたため、連合軍の進撃は遅々として進まない。連合軍は地上部隊6個師団を東海地区に残し、残りはさらに東進して相模湾に姿を現した。相模湾を守る戦艦「長門」以下の連合艦隊残存部隊を空母艦載機の攻撃によって撃沈し、その後8個師団が九十九里浜から上陸を仕掛けた。しかし房総半島を巡る戦いも連合軍の思惑通りにはいかない。東京方面から出撃してくる日本軍のヒットエンドラン戦法によってその進撃は捗らず、あまつさえ3個師団もの兵力を日本軍航空部隊の攻撃によって失われてしまう。
7Turn
連合軍は相模湾から上陸を開始した。房総半島の日本軍も一掃され、東海地方も連合軍の支配する所となった。いよいよ末期的な様相を見せる日本軍であった。8Turn
先のTurnに東海地方を連合軍が支配したため、カードの枚数が連合軍9枚、日本軍3枚となった。連合軍はVPを計算し、このTurnに東京を支配すれば(そして連合軍が占領地を失わなければ)連合軍が勝利できると踏んだ。そのため東京に向けて全力攻撃が始まる。まず艦砲射撃で南関東地区の日本軍を叩く。日本軍は補給カードで復活させるが、さらに米軍の基地航空部隊が関東地区一帯を空襲する。日本軍は最後の補給カードを使って復活させるが、ここカード切れである。あとは連合軍のフリーハンドだ。
東海地方から信越地方へ連合軍地上部隊が進出し、房総地区からは南陸奥へ進出する。これで東京への増援部隊を断った連合軍は、東京周辺に猛攻撃を仕掛けた。電撃戦カードと組わせた航空攻撃。これまで今一つダイス目に恵まれなかった連合軍であったが、ここではダイス目が炸裂した。空母13ユニットによる攻撃で実に23ヒットもの命中を与えたのだ。電撃戦カードを使っているので攻撃回数は2倍になるが、26個振って23個命中ということになる。これによって関東地区の日本軍はほぼ壊滅状態となり、残るは裏面になった航空機1ユニットが残っただけであった。慌てて日本軍は東京地区に増援部隊を送り込もうとするが、同一エリアに敵ユニットが存在しているので、東京方面へ転進できない、
そして連合軍は地上部隊で東京周辺に残った日本軍に対して攻撃を実施し、これを完全に撃破した。これにより関東地方一帯は連合軍の支配する所となった。
この段階で連合軍の勝利はほぼ確定した。日本軍も信越方面に進出してきた連合軍の足止め部隊を撃破し、東京への道を切り開いた。続いて信越方面から計6個師団を東京方面へ向けて進撃させる。しかし関東平野に入った途端に連合軍の空母艦載機が襲いかかった。信越方面から進撃してきた日本軍増援部隊は空母艦載機の攻撃を受けて悉く壊滅。東京奪回はならなかった。
ここでゲーム終了である。連合軍の勝利得点は20点、日本軍は8点+敵撃破分9点で計17点。接戦であったが、連合軍が勝利した。
感想
連合軍が意外と難しいと感じた。手数に余裕が少ないのでミスできない。空母艦載機の電撃戦が頼みの綱だが、空母が撃破されて攻撃力が小さくなると途端に苦しくなる。史実同様に東京の支配がゲームの勝敗を左右するが、東京だけを狙っても埒が開かないので、その周辺を押さえていく必要がある。意外と重要なのが序盤の北九州制圧。ここを連合軍が奪取すると、連合軍の使用できるカードが1枚増えて、日本軍のそれが1枚減る。これがかなり効くので、連合軍としては早いうちに北九州を取りたい。今回は禁断の兵器=原爆を使って北九州を落したが、場合によっては原爆使用も選択肢に入れておくべきだろう。
作品としての感想だが、ゲームとしてはそこそこ面白い。詰将棋のような感じだが、まあ良いのではないだろうか。ただしシミュレーションとしてみた場合には違和感がある。これはレッドラシステムでも同じなのだが、時間と空間が明確に定義されていないため、「時間と空間の関係を明らかにする」というシミュレーションゲームの長所をスポイルしているように思えるのだ。また兵器間の力関係も現実離れしているように思え、例えば艦載機の攻撃で関東平野の日本地上部隊が一掃されるというのは、現実との対比で考えると明らかにおかしい。
そういった点を考慮すると、本作は「シミュレーション」としてではなく「ゲーム」として楽しむのが正しい楽しみ方だと思う。
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