旧ツクダホビーの「タンクコンバットシリーズ」といえば、「タイガーI論争」に代表されるように、プレイそのものよりもプレイの外側で有名なゲームと認識しておりました。かくいう私も、これまでゲームの名前は勿論知っていたし、かつてはゲーム自体を保有していたこともあります(安価で手に入れた「パットン」を持っていましたが、どこかへ行ってしまいました)。
という訳で「タンクコンバットシリーズ」は、私にとって30年以上もの間、「名前は知っているけどプレイしたことがない」ゲームでした。
この度、某ゲーム会で「タンクコンバットシリーズ」をプレイする機会に恵まれました。そこで今回、その時の様子を紹介します。
システム紹介
タンクコンバットシリーズは、「エンドレスフェーズシステム」という独特のシステムを採用しています。これは1Turn(ツクダ用語ではTurnのことをイニングと呼びます)を6フェイズに分割し、それぞれ移動・射撃を行うというシステムです。1Turnは実際の30秒に相当するので、1フェイスは実際の5秒間に相当します。「だったら、最初から1Turnを5秒のスケールにすれば良いんじゃね?
突っ込みが聞こえてきそうですが、まあ「そういう考え方もありますね」と軽く流しておけばよいと思います。1Turnを6分割した方が管理上便利な点があるのも確かなので、デザイナー氏の選択は間違いではないと思います。
各フェイズの手順は驚く程シンプルで、先攻・後攻で移動を行い、次に同時解決で射撃を行う、という流れになります。防御射撃とか機会射撃とかいった面倒な概念はありません。そういった意味では「エンドレスフェイズ」システムは、システムをシンプルにするという意味では有効な手段と考えて良いと思います。
また、砲弾装填速度の問題を自然に解決できる点も評価したいです(デザイナー氏は多分これを一番やりたかったんじゃないかな)。事実上5秒Turnのゲームなので、装填速度の違いを5秒刻みで再現できるようになりました。
もちろん問題もあります。事実上1Turnが5秒スケールのゲームです。展開がとにかく「ノロい」のです。これはスケールの小さい空戦ゲームでも時々見られることですが、一連の戦術運動(例えば敵戦車を左右から挟む等)を完結させるために、とてつもない「単純作業」を強いられます。それが「楽しい」と思える人は、本シリーズを楽しむことができると思います。私には・・・、ムリかもね・・・。
射撃システムは、命中判定、命中箇所判定、装甲厚判定の3段階です。いずれも2d6で判定します。命中判定は、2d6で命中値以下の数値を出せば命中。砲の種類と距離によって基本命中値が決まり、それに相手の大きさ、移動状態、地形、自車の移動状態等の修正を適用して最終命中値を決定します。2d6に起因する確率の歪み("7"の目が出やすく、端に行くほど確率が少なくなる)は特に考慮されていません。従ってDRMが同じでも、基本命中値の違いによってその効果には雲泥の差があります。
命中箇所は、砲塔、車体(上部と下部に分かれている)等の他、履帯への命中や主砲砲身への命中といったやや珍しい場所も考慮されています。
最後の撃破判定は、命中箇所の装甲値と徹甲弾の貫通力を比較して貫通力が勝れば敵戦車を撃破です。
ティーガー vs T34/85
最初は「勝利ポイントの上限を指定してその範囲内で戦車を購入する」という方法で試してみました。その結果、ドイツ軍はティーガーI型が2両、ソ連軍はT34/85が3両という対決になりました。場所は広大なロシア平原です。距離1000m前後で向かい合った両者はお互いに射撃を開始。最初はお互いに命中弾がありませんが、両者とも停止射撃に切り替えると、途端に両軍とも命中弾が出始めます。射撃精度ではドイツ軍に一日の長がありますが、車体の大きさではT34/85の方がコンパクトなので、命中率に殆ど差はありません。両軍とも次々と敵戦車の正面装甲に徹甲弾を命中させます。
しかし・・・
その徹甲弾がなかなか「貫けない」。ドイツ側のティーガーならわかるのですが、T34/85に命中した88mm徹甲弾も、距離500~800mという近距離にも関わらずその装甲に全く歯が立たない。
「ちょっと装甲効果が高すぎるんじゃないの・・・」
そんな思いもチラホラ。
結局、ティーガーは2両とも履帯を破壊されて移動不能になり、さらに1両のティーガーは砲塔基部に命中弾を受けて砲塔旋回できなくなりましたが、いずれも戦闘継続可能でした。一方のT34は1両が撃破されて残りは2両です。それにしても両方とも多数の命中弾を受けながら、この撃破率の低さは一体・・・。装甲効果が高すぎるのではないかな。
気になったので後でゲーム上での撃破確率を調べてみました。ティーガーIとT34/85が距離500mで正面から向かい合った場合を想定します。
まずT34/85から射撃を行った場合、命中弾1発あたりの撃破確率は3.2%です。つまり30発命中させてようやく1両を撃破できるかできないか。ちなみに履帯に命中する確率は8.3%なので、今回のように「撃破される前に履帯を切られる」というのはよくある話になります。
次にティーガーがT34/85を正面から撃った場合、撃破確率は8.8%です。T34/85からの射撃よりは少しマシな数値ですが、それにしてもショボい。88の威力ってこんなものかなぁ・・・?。
ただし両方とも特殊徹甲弾を使用すると、撃破確率は53.7%、31.5%に跳ね上がります。特殊徹甲弾の使用を前提とすると、ティーガーの方がT34/85よりも不利になります。
話の序に他のゲームを調べてみると、GMTのPanzerでは、上記条件下では命中箇所に係わらず双方共正面装甲を確実に貫きます。撃破確率も54~63%の高率です(Panzerの場合、貫通しても撃破に至らないケースがある)。
CMJのTanksでは、ティーガーによるT34/85の命中弾1発あたりの撃破確率が58%で、T34/85からティーガーを射撃した場合が17%です(条件は距離500mの正面射撃)。Tanksはシンプルなルールを採用しているので、貫通する・しないという概念はなく、貫通力と装甲値の差から判定表を使って撃破判定します。
余談の余談になりますが、このTanksのシステムを流用して、現在戦車戦ゲームが作れないものか、妄想しております。
さらに(戦車戦ゲームではありませんが)ASLの場合、ティーガーによるT34/85に対する射撃では、命中弾1発あたりの撃破確率は69%。逆の場合は22%です。このように考えると、タンクコンバットシリーズにおける各戦車の装甲値は、他のゲームに比べるとかなり高い評価になっていると言えそうです(あるいは徹甲弾の貫通力が過小評価されている?)。
つづく
コメント
コメント一覧 (2)
T34/85ですが、このゲームではソ連戦車のなかでも車体(だけ)
装甲が異様にぶ厚く評価されてたように思います。
(ティーガーが12cmに対し、22cm相当)
T34/76だとティーガーにまったく歯が立たないのでお試しください。
もりつち
が
しました