たかが殺人じゃないか
辻真先 東京創元社
たまには、と思い推理小説読んでみた。どこかの真田さんみたいに「俺は推理小説の良さはわからない」とでも書こうと思ったが、意外と面白かった。どちらかといえばじっくり読むのが苦手で早く読みたくなる私。推理小説でもじっくり読まないで流し読みなので、トリックをじっくり考えながら読むことができない質である。そんな私でも本書は結構楽しめた。本書の設定は昭和24年の名古屋。GHQの命令によって無理矢理男女共学にさせられた高校生たちを主人公とする推理小説だ。高校生たちの描き方も秀逸だが、それよりも戦争直後の名古屋周辺の描写が楽しい。さらにいえば、戦争と敗戦によって価値観の急激な変化に直面して戸惑う登場人物たちがリアルに描かれていて、フィクションながらも当時の息吹を感じることができる。そして日本人にとって戦争や敗戦は何だったか、といった点についても考えさせてくれる作品であった。
お奨め度★★★
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