「Assault」シリーズ(以下、本シリーズ)は、1983年に米国GDW社から発売されたSLGである。テーマは1985年を想定した東西両陣営の地上戦闘で、本シリーズは、1Hex=250m、1Turn=5分間、1ユニット=1個小隊のスケールで仮想の地上戦を再現する。
本シリーズは、第1作目のAssaultが1983年に発売された後、ヘリコプター部隊を追加したシリーズ第2作「Boots & Saddles」が1984年に発売された。第1作目と第2作目は、いずれも日本でもHobby Japan社からライセンス生産されている。
続いて発売されたのは、1985年に発売された「Reinforcements」で、この作品には全2作に含まれていなかった米ソの部隊が登場する。また新登場兵器として、ソ連のT-62戦車やSU-130自走砲等も追加されている。対戦車戦闘に限って言えば、このSU-130の方がT-62やT-80よりも使えるかも・・・。ソ連軍の牽引方式対戦車砲部隊など、1980年代とは思えない古風な部隊も登場するそう。いやー、面白いなぁ。
米軍の方にはUH-1Hイロコイとか、M741対空バルカン自走砲とかM730チャパラル対空ミサイル部隊等が登場する。そういえば、第2作までの米側対空車輛は、M247サージェント・ヨークといった不採用兵器だったなぁ・・・。
第4作「Bundeswehr」は、西ドイツ陸軍を扱った作品で、1986年の発売。プレイの際にはAssault又はBoots & Saddlesが必要。当時の西ドイツ陸軍主要兵器が登場し、レオパルド1、レオパルド2、マーダー、ゲパルト等は皆さんご存知の通り。レオパルド2は、当時M1エイブラムスが搭載していなかった120mm滑腔砲を装備しており、M1よりも有力な遠距離射撃力を有している。レオパルド1は戦車としては軽装甲ながらも高い機動力を誇る。
最終作となった第5作は「Chieftain」で、1988年発売。テーマは英軍とオランダ軍。英陸軍自慢の重戦車チーフテンは、装甲はすごーく厚いけど、移動力はすごーく少ない。チャレンジャーはチーフテンの改良型で、装甲がさらに強化され、足回りも少しだけマシになった(M60パットンと同じぐらい)。オランダ軍のユニットもついている。
シリーズについての説明はこのぐらいにして今回のプレイを紹介する。
今回プレイしたのは、Boots & Saddlesのシナリオ2「遭遇戦」。米ソ両軍の機甲部隊同士が前線で接触し、そのまま交戦するというシナリオ。ソ連軍の方が大兵力なので、ソ連軍は米軍の戦線を突破することを求められる。今回筆者は米軍側を担当した。
本シリーズはゲーム開始前の手順が結構面倒である。最初に登場兵力を決定する。これは6個又は12個の戦力マーカーからお互いに1枚ずつを引き、そこの示された戦力を使用する。戦力はかなり幅があり、最強の場合と最弱の場合で数倍の開きがある。この時に弱っちい兵力を引いてしまうと、かなり苦戦を強いられる。
今回はお互いの合意で予め3個の戦力段階マーカーを選択し、その中からランダムに1個を選ぶことにした。この方式なら極端に弱い戦力を引くことはなくなる。
筆者が引いた戦力レベル1番。登場兵力は前衛の騎兵中隊(M3ブラッドレー)1個、主戦力はM1エイブラムス装備の戦車中隊2個とM2ブラッドレー装備の機械化歩兵中隊2個。そして迫撃砲や対空火器等の各種支援火器である。増強大隊レベルで、いわゆるタスクフォースというやつだ。
準備はそれだけでは終わらない。各部隊の指揮能力をダイスを振って決める。この時、頼みの戦車中隊2個がまさかのピンゾロ。両方とも指揮能力ゼロになってしまう。これは部隊の展開能力が大きく殺がれることになる。あわわ。
その後、風向、風速を決定する。このゲーム、風速が非常に重要である。というのも、まじめにゲームでの勝敗を競う場合、ソ連側の勝利のカギは煙幕の利用にある。煙幕を使って敵戦車の視界を封じ、接近戦に持ち込んで相互撃破に持ち込めば、ソ連側はほぼ勝利できる。逆に煙幕展開を行わずに突撃を行ったら、強力なソ連軍といえでも米軍の強力無比な防御射撃によって大損害を被ってしまう。
ちなみに風力は弱、中、強の3段階があるが、強の場合は煙幕が吹き飛ばされてしまい煙幕展張できない。その場合、ソ連軍は全滅覚悟で突撃するしか手がなくなるかも…。
今回のプレイでは、風力は「弱」になった。ちい。
ゲーム展開については軽く触れるにとどめる。
序盤、前衛部隊同士の接触があったが、ミサイルの応酬があった。敵の第92偵察中隊(BRDM2、BMP-B装備)が米第1騎兵中隊と接触。ミサイルの応酬が始まる。米偵察車両は地形に隠れていたため有利な戦闘を展開し、敵の偵察中隊に損害を与えて、これを撃退した。
第11Turnごろにソ連軍の総攻撃が始まる。山を下りて谷場を駆け下りてくる歩戦連合のソ連軍機械化部隊に対し、山の上で待ち構えていた米機械化部隊が防御射撃で迎え撃つ。現代戦車は、極めて精度高い火器管制装置を装備しているため、有効射程距離内なら高い命中率を発揮する。まさにファーストルック、ファーストキルの世界。僅か1個小隊のM1戦車隊であっても大隊規模のT-64戦車隊を撃ちまくって早くもスクラップの山を築く。M3ブラッドレーもTOWミサイルではなく25mmチェーンガンでBMP歩兵戦闘車を撃ちまくる。装甲が薄いBMP相手なら、手数の少ないTOWミサイルよりも大量の徹甲弾を撃ちまくる25mm機関砲の方が有効なのだ。わずか半個小隊のブラッドレーがソ連機械化歩兵1個大隊をズタズタに撃破していく。
ソ連軍も反撃を行い、ミサイルがエイブラムスに命中。エイブラムス2両が撃破された。しかし眼前に展開される殺戮撃は米軍の受けた損害の比ではない。
結局ソ連軍の3個大隊(戦車2個大隊、機械化歩兵1個大隊)のうち2個大隊が半身不随になった時点で今回はゲーム終了とした。プレイ時間は約7時間。なおソ連側プレイヤーの名誉のために付け加えると、ソ連軍プレイヤーも煙幕の有効性は十分に理解していたが、今回はソ連側の突撃の悲惨さを味わってみたいとのことであった。
感想
多分四半世紀以上前に1度プレイしたきりだったので、全然感覚を忘れていたが、確かに米軍による防御射撃の恐ろしさは相変わらずだった。先にも述べた通り、ソ連軍としては煙幕を活用して米軍の視界を遮りながら突撃するのが常套手段になる。対する米軍側も戦線を二重化するなどして守る必要があるかもしれない。プレイの感想としては、やはり大変なゲームだと思った。ユニット数が多く、指揮ルールも厳しいので、十分な計画性が必要だと感じた。また索敵の重要性も感じた。先にも述べたが、現代兵器の致死性は凄まじいものがあり、有効射程距離内の敵は短時間高確率で排除できてしまう。それを避けるためにも地形を利用して目標に近づき、有利な射点を確保する必要がある。こちらの戦車や歩兵戦闘車における損害の大半は、地形に隠れて近づいてきた敵戦闘車両のミサイルによるものであった。
ゲーム展開は全般に大雑把な印象を受けるかもしれないが、兵器の性能もさり気なく表現されているのが良い。無敵に見えるM1エイブラムスについても、敵戦車の正面装甲を貫徹できるのは1500m以内から射撃する必要がある。搭載量が限られている劣化ウラン弾を使えば3000mの距離で貫徹可能だが、それ以遠なら敵戦車を撃破できない。120mm滑腔砲なら撃破可能距離がそれぞれ500m伸びるので、120mm滑腔砲を装備したM1A1エイブラムスが待ち遠しい(本シリーズにM1A1が登場しないのは残念)。
これまで本シリーズについては「面倒な割に大雑把な展開」というイメージがあり、やや敬遠していた。しかし今回プレイしてみると、色々と見どころのある作品であることがわかった。VASSALモジュールも用意されており、冷戦時代の地上戦闘をリアルに再現できる作品で、機会をみつけて再戦してみたいと思っている。