もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:ゲーム > 戦略級ゲーム

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名ウォーゲームデザイナー Ted S. Raicer による「The Fall of the Third Reich」── 第二次世界大戦ヨーロッパ戦線の最後の2年間を再現する本格戦略級SLGです。

舞台は1943年7月、クルスクの死闘とシシリー島侵攻から戦いは始まります。連合軍は、ノルマンディー、イタリア、ギリシャと様々な侵攻ルートを選択できます。またソ連軍は独ソ戦の激戦を勝ち抜く必要があります。

戦略の鍵となる要素
・ダイナミックな前線戦術:反応移動と浸透攻撃の組み合わせが勝敗を左右!
・戦略爆撃の影響:航空戦が戦局に大きく影響!
・補給線の重要性:特に西部戦線では港の確保が勝利のカギに!
・多方面作戦のジレンマ:防衛に徹するドイツ軍は敗北必至、反撃を駆使して連合軍を叩け
・選択肢の広がる連合軍の侵攻ルート:イタリア降伏を狙うか、早期に第二戦線を開くか?

スムーズなプレイアビリティと、歴史の再現性を兼ね備えたこのゲーム。
果たしてドイツ軍は連合軍の猛攻を食い止められるのか? それともベルリン陥落が早まるのか?

このプレイ動画でその全てを確かめてみて下さい。




Fortress Europa Game Journal 70-第三帝国の盛衰
図解 第二次世界大戦1939.9~1943.9 独ソ戦全史: 「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 Sicily 1943 遠すぎた橋

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アメリカ南北戦争を戦略レベルで描く傑作カードドリブン・ウォーゲーム「For the People」!
プレイヤーはリンカーン大統領またはデイヴィス大統領として、国家の命運を賭けた戦いに挑む。

ゲームの特徴
・ダイナミックな戦略決定:将軍の任免、遠征、補給戦、政治的駆け引きが勝敗を左右!
・歴史を変えるイベントカード:海上封鎖、外国干渉、奴隷解放宣言… 一手が戦局を劇的に動かす!
・陸海空の総力戦:南軍の機雷、潜水艦、装甲艦 vs. 北軍の海上封鎖、鉄甲艦、上陸作戦!
・戦争は戦場だけで決まらない:徴兵暴動、外交交渉、州の支配… 政治と軍事が絡み合う奥深い戦略!

この動画で、南北戦争の歴史を追体験せよ!
果たして、南軍は独立を果たすのか? それとも北軍が国家統一を成し遂げるのか?歴史のターニングポイントを体感しよう!

このプレイ動画でその全てを確かめてみて下さい。



ブルー&グレー

南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦 南北戦争記 戦争指揮官リンカーン 南北戦争-49の作戦図で読む詳細戦記

PacWar


「Pacific War」(以下、本作)は、2022年に米国GMT社が発売したSLGである。テーマは太平洋戦争全域で、1941年12月に始まる太平洋戦争を、1戦略Turn=1ヶ月、1Hex=約100マイル、1ユニット=大隊~軍(基本は師団)、主力艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦以下数隻、航空機は1ユニット=十数機~約100機というスケールで再現する。

今回プレイしたシナリオは、Campaign Scenarioの1つであるガダルカナル攻防戦。これは1942年8月における米軍のウォッチタワー作戦開始から翌年2月の日本軍によるガダルカナル撤退直前までの約半年間に渡る戦いを扱っている。筆者は連合軍を担当した。

前回までの展開 --> こちら

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1942年9月

9月6日、9月最初の作戦で主導権を握ったのは日本軍であった。ラバウルから重巡、軽巡、駆逐艦に護衛された3個大隊の上陸部隊がガダルカナル島に近づいてくる。ガダルカナル島には既に米海兵隊の基地航空部隊が進出していたが、ラバウルから飛来する日本機の迎撃に忙しく、接近してくる日本艦隊を攻撃する余裕がない。もっとも、微々たる兵力しか持たない在ガダルカナルの米海兵航空部隊が、強力な日本艦隊相手にどこまでダメージを与えられたかは甚だ疑問があるのだが・・・・。

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日本艦隊の接近を知った米艦隊は、直ちにヌーメアから空母部隊を出撃させる。しかしこの時の米艦隊の諜報状態は最悪の「奇襲」であったため、米空母の出撃は後手に回ってしまう。どうせ艦隊を出撃させても間に合わないのだから、ここは日本軍の好きにさせておいて、後に主導権を取り返して反撃した方が得策だったかもしれない。

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日本艦隊は、米潜水艦の攻撃をものともせずガ島近海に突入した。日本艦隊の艦砲射撃によって、頼みの綱である米海兵師団がまさかのモラル崩壊(確率10%)を起こしてしまう。これはヤバイ。士気の大小が大きくものをいう本作の陸上戦闘において、士気崩壊は致命的ともいえる。幸いにも日本軍が上陸戦で最悪の目である9を出してしまったので米海兵隊の士気阻喪は致命傷とはならなかったものの、それでも日本軍3個大隊によるガダルカナル上陸を許したことは痛恨の極みであった。

日本艦隊が去った後、ようやくガダルカナル南東海域に近づいてきた米機動部隊がガ島上空に攻撃隊を放つ。上陸戦に生き残った海軍陸戦隊相手に爆弾の雨を降らせるも、海軍陸戦隊はモラルチェックに耐えて元気ハツラツ。モラル崩壊した米海兵隊との対比が辛い。

日本軍の作戦が終わったのが9月21日である。ただちに米軍も作戦を発動。ヌーメアから第2海兵連隊を積載した輸送駆逐艦(APD)に重巡、駆逐艦等の護衛を付けて出撃させる。輸送船団はガダルカナル近海で日本潜水艦の雷撃により輸送駆逐艦1隻を失うも、残った兵力は無事ガダルカナル上陸に成功した。

上陸した米海兵連隊はただちに日本軍の守備隊を攻撃。この攻撃は兵力差もあって成功し、日本軍の守備隊は撃破された。

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上陸作戦や地上移動に伴う強制攻撃の発生は、GMT版で大きく改正された部分である。このあたり英文ルールを慎重に読み進める必要がある。筆者が理解した所によれば、地上部隊と戦闘との関係は以下の通りである。
 (1)元々両軍の地上ユニットが同一Hexに存在していて、活性化した地上ユニットが存在する場合は、2つの選択肢がある。1つはそのまま攻撃を実施しBCMを1つ消費すること。もう1つは戦闘しない代わりに活性化した地上ユニットはその場で非活性化状態になること。
 (2)敵地上ユニットしか存在していないHexに活性化した地上ユニットが進入した場合は、戦闘実施が義務
 (3)既に敵味方の地上ユニットが存在しているHexに活性化した友軍地上ユニットが進入した場合は、攻撃する・しないは活性化した側が選択できる。ただしいずれの場合もそのHexに進入したことによるBCM消費が発生する。
ここまでなら問題ないのだが、31.1E項でこのような不気味な文言が出てくる。
「もしいずれかのプレイヤーが強襲上陸作戦を実施した場合、攻撃が義務付けられる」
(If either side is conducting an amphibious assault in a hex, that player’s units must attack regardless of whether the assaulting units belong to the Operation or Reaction player.)

ここで問題になるのは「強襲上陸」の解釈で、23.8.3項によれば、「敵ユニットが存在するヘクスに下船する場合は全て強襲上陸になる」とされている。もしこの解釈通りなら、ガダルカナルに「下船」する部隊は全て「強襲上陸」を行うことになってしまい、特に兵力に劣る日本軍は増援を送り込むことすらままならなくなってしまう。

この点については、Board Game Geek等でも議論されており、既に友軍の存在するHexに下船する場合は上陸戦闘扱いせずに強制攻撃を免除した方が良いのではないか、という意見が多かったように思う。実は筆者もその意見に賛成で、既に友軍が存在するHexに「下船」する場合には上陸戦闘扱いではない方が良いように思う。
この点については、特にガダルカナルシナリオにおいては重要な部分であり、可能なら事前に対戦相手と調整した方が良いと思う。

追記:その後の調査で、上記についてはエラッタがあり、既に味方ユニットが存在するHexへの揚陸時は強制戦闘にならないことが判明した。


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1942年10月

このTURN、日本軍は指揮ポイント65点を得る。史実での「10月攻勢」があった時期で、本シナリオでは日本軍にとって最大規模の攻撃が可能になる。ちなみにその後の指揮ポイントは、11月=30p、12月=15p、1月=15pで、ジリ貧になっていく。

この時期、日本軍は当然の如く大攻勢を発動した。空母6隻、駆逐艦6ユニット(36隻)に護衛された輸送船団がトラック環礁を出撃する。輸送船団には第2師団が乗船しており、さらに精鋭1個大隊、工兵2個大隊が駆逐艦に分乗している。

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この月、連合軍の諜報組織は最悪の状況にあり(4段階のうち最低のレベル1)、迎撃態勢は奇襲になった。米潜水艦が日本艦隊を発見したのはガダルカナル北北西100マイルまで近づいた時であり、既に迎撃の機会を失していた。

日本空母から攻撃隊が発進し、ガダルカナル島を襲う。迎撃戦闘機がこれを迎え撃つが、数と練度に勝る日本空母機の敵ではなく、カクタス飛行隊は大損害を被ってしまう。

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夜になって日本艦隊がガダルカナル島に接近し、激しい艦砲射撃を加えてきた。一度は士気回復した米第1海兵師団が、この艦砲射撃によってまたもや士気阻喪してしまう。えーい、士気値8で本作最強の米海兵隊が情けない。

そして日本軍第2師団がガダルカナルに上陸する。彼らは無事上陸に成功し、島内に橋頭保を築いた。作戦を終えた日本艦隊はガダルカナルから撤退していく。それを米潜水艦が待ち伏せする。空母「翔鶴」「瑞鶴」にそれぞれ魚雷1~2本を命中させたが、両艦共撃沈するには至らず。対空砲火と合わせてレベル2のエリート航空部隊に4ステップ(約60機)を失わしめたのが唯一の戦果であった。

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感想

今回のプレイで一番意識したのは、Victory Games版との比較であった。
まずシナリオについては、指揮ポイントのスケジュールが変更になった。全体的には利用可能な指揮ポイントがやや増えた。これは嬉しい改訂だと思う。従来のVictory Games版では、利用可能な指揮ポイントが少なすぎて史実とはかけ離れた規模のショボい部隊しか運用できなかった。現行版でも指揮ポイントが少なめなので史実規模の作戦実施は難しいが、少しは「裕福な」作戦が実施できるようになった。

ルール的には潜水艦ルールが大きく変わった。本文でも触れたがVictory Games版の潜水艦ルールは個人的に全然評価していなかったので潜水艦ルールの改訂は歓迎すべきところだが、今回の改訂ルールでも潜水艦はまだまだ強力過ぎるように思える。この辺りはキャンペーンシナリオで再評価したい所だ。

それからVictory Games版の違いで大きい点は、新たなシナリオだ。Victory Games版では、戦闘シナリオ5本、作戦シナリオ8本、キャンペーンシナリオ6本、戦略シナリオ2本だったが、現行版ではそれぞれ8本、12本、9本、5本と大幅に増えている。中でもインド洋作戦を扱った作戦シナリオ「Indian Ocean Adventure」、中部太平洋方面での米機動部隊の反攻作戦を扱ったキャンペーンシナリオ「War in the Central Pacific」、そして1942年半ばからスタートする戦略シナリオは興味深い。機会があればプレイしたい所だ。

Victory Games版オーナーにとってGMT版を購入するかどうかは微妙な所だが、価格的には2万円弱とコンポーネントの規模に比して比較的安価なので、購入しても損はないと思う。



Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
空母瑞鶴戦史:ラバウル航空戦 太平洋の試練(下)-ガダルカナルからサイパン陥落まで ガダルカナル戦記(3) ガ島航空戦(上)

PacWar


「Pacific War」(以下、本作)は、2022年に米国GMT社が発売したSLGである。テーマは太平洋戦争全域で、1941年12月に始まる太平洋戦争を、1戦略Turn=1ヶ月、1Hex=約100マイル、1ユニット=大隊~軍(基本は師団)、主力艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦以下数隻、航空機は1ユニット=十数機~約100機というスケールで再現する。

今回プレイしたシナリオは、Campaign Scenarioの1つであるガダルカナル攻防戦。これは1942年8月における米軍のウォッチタワー作戦開始から翌年2月の日本軍によるガダルカナル撤退直前までの約半年間に渡る戦いを扱っている。筆者は連合軍を担当した。

前回までの展開 --> こちら

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1942年8月

前回はルール説明だけで終わってしまったので、ここから実際のプレイを紹介する。今回プレイしたガダルカナルシナリオは、米軍によるガダルカナル上陸戦から開始されるため、米軍プレイヤーは麾下の兵力をどのように配置するかを決定しなければならない。このシナリオの怖い所は、上陸作戦当日に日本空母「翔鶴」「瑞鶴」の艦載機が大挙して飛来して輸送船団を襲ってくる可能性のあることだ。ちなみに史実では、この時期日本空母の主力は内地にいて、トラック島には進出していない。

このシナリオでは、特別ルールにより最初の作戦実施者は連合軍と決まっている。また嬉しいことにVictory Games版では8月の指揮ポイントが30数ポイントだったのが、GMT版では54ポイントと倍増近い増額。これによって米軍の実施できる作戦の幅が大きく広まった。

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「ウォッチタワー」作戦で米軍が投入した兵力は、上陸部隊は第1海兵師団と工兵1個大隊。工兵部隊は敵飛行場を占領した後、ただちにそこを占領して飛行場を拡張するためだ。その護衛兵力として空母「サラトガ」「エンタープライズ」「ワスプ」、そして重巡1ユニット、駆逐艦5ユニットだ。活性化ポイントは合計20。作戦期間は3週間としたので、必要な指揮ポイントは2倍の40ポイント(作戦期間が3週間で2倍、4週間で3倍となる)。そこに司令部の管理コスト6ポイントを加えて、計46ポイントの指揮ポイントを消費した。ちなみに司令部の管理コストというのは、規模の大きな作戦を行う場合、司令部自身が消費する管理コストを支払う必要があるという意味である。
ちなみに史実では、戦艦「ノースカロライナ」や多数の重巡、駆逐艦が加わっていた大遠征部隊であったため、史実と比較すると本作の遠征部隊はかなりささやかな規模になっている。これは他の場面でも同様で、本作で史実同様の規模の作戦を実施しようとするとどうしても指揮ポイント不足になってしまう。このあたり、兵站ルールを簡略化するために仕方がない面もあるが、史実に拘るプレイヤーにとっては少し気になる所だ。

何はともあれ米遠征部隊は順調に前進を続ける。しかし作戦2日目、遠征艦隊がガダルカナル東南東400マイルの地点に到着した時、旗艦空母「サラトガ」の右舷後部に水柱が上がった。潜水艦の魚雷攻撃である。幸い「サラトガ」の被害は比較的軽微で作戦行動は可能であったが、作戦序盤の被害に艦隊一同前途多難を覚えたのであった。なお、襲撃を行った日本の潜水艦は、その後の米駆逐艦の爆雷攻撃で撃沈されている。

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Victory Games版の大きな問題の1つとして潜水艦の攻撃力が強すぎるという点があった。特に戦略シナリオの場合、潜水艦をかき集めて集中攻撃を加えると、どんなタスクフォースであってもまるで白蟻に狙われたボロアパートのようにボロボロになってしまう。GMT版で潜水艦ルールが改訂されたので、そのあたりの問題がどう緩和されているのか気になったのだが、潜水艦の凶悪さは相変わらず。しかも悪いことに以前は戦略シナリオだけの問題であった潜水艦の凶悪さが、キャンペーンシナリオでも波及してきていると思えてきた。まあ護衛駆逐艦をしっかりつけておけば、雷撃を企てた潜水艦をほぼ確実に返り討ちにできるので、その戦力を徐々に削っていけるのだが、それでも潜水艦の脅威は侮れない。今回のシナリオでも両軍の潜水艦はやはり猛威を振るった。本作における潜水艦ルールについては、もう少し時間をかけてじっくり評価してみたいと思う。

日本潜水艦が米艦隊を発見したので、日本軍プレイヤーは接触フェイズを終了を宣言できる。そこで日本軍プレイヤーは接触フェイズの終了を宣言した。そして自身の迎撃態勢を公開する。日本軍の迎撃態勢は「奇襲」である。これは日本側にとっては最悪の状態であった。日本軍はこの瞬間から迎撃艦隊を慌ただしく編制しなければならない。

ここから戦闘サイクルに入る。この戦闘サイクルでは両軍のタスクフォースが交互に移動し、航空攻撃や水上戦闘を行う。ガダルカナル東南東200マイルまで接近した米機動部隊は、日本潜水艦の攻撃を排除しつつ、攻撃隊を放った。米攻撃隊はガダルカナルに進出していた二式水上戦闘機の部隊を機銃掃射で排除した。

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さらに米艦隊はガダルカナル近海に突入。艦砲射撃で日本軍守備隊に砲撃を浴びせた。狙いは日本軍守備隊のモラルダウン。モラルダウンした守備隊は容易に撃破可能だが、健在な日本軍守備隊はなかなか手強い。しかし日本軍守備隊は米軍の砲爆撃をものともせず、士気軒昂のまま米上陸部隊を迎え撃つ。

その間、ラバウルを発進した日本軍陸攻隊がガダルカナル沖の米艦隊を攻撃してきたが、米空母を発進した迎撃戦闘機による迎撃を受けて多数の攻撃機を失って撃退された。

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そしていよいよ米海兵隊がガダルカナルに上陸する。史実では比較的容易に成功したガダルカナル上陸作戦だが、このゲームではそう簡単にはいかない。一定のリスクは存在している。特に守備隊が士気軒昂の場合は猶更だ。地形効果も相まって最低コラムでの攻撃になる。幸い部隊規模の違いで-2のDRMが得られているが、それでも出目が7以上だと米上陸部隊にとっては由々しき事態となる。

米軍による上陸戦闘のダイス目は0。これは米軍にとって最良の結果と言える。海岸線を守っていた精鋭海軍陸戦隊は撃破され、残った工兵隊等もバンザイ突撃を行って玉砕。ガダルカナル島は米軍の支配する所となった。

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8月22日、出港から丁度3週間後に米遠征部隊はヌーメア基地に帰港した。米軍によるガダルカナル上陸作戦は、まず第1段階が成功したことになる。

つづく



Game Journal 77-ガダルカナル 海空戦南太平洋1942
ガダルカナル戦記(2) 太平洋の試練(上)-ガダルカナルからサイパン陥落まで 機動部隊 空母瑞鶴戦史:南太平洋海戦

PacWar


「Pacific War」(以下、本作)は、2022年に米国GMT社が発売したSLGである。テーマは太平洋戦争全域で、1941年12月に始まる太平洋戦争を、1戦略Turn=1ヶ月、1Hex=約100マイル、1ユニット=大隊~軍(基本は師団)、主力艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦以下数隻、航空機は1ユニット=十数機~約100機というスケールで再現する。

本作は元々は米国Victory Games社が1985年に発売した作品を2022年にデザイナ―自らがリメイクした最新版である。リメイクにあたって基本的なシステムは変更されていないが、いくつかのシナリオが追加され、シナリオの内容にも手が加えられた。潜水艦ルールは大幅に改定され、その他ユニットレーティング等にも手が加えられたという。

本作は太平洋戦争全体を描いたビッグゲームであり、フルキャンペーンシナリオ(1941年12月~終戦までをプレイ可能)の所要時間は約100時間となっている(実際にはもっと時間を要するかもしれない)。しかし本作には多数のシナリオが用意されており、短いものでは15分程度で終わるものもある。本作のシナリオは4段階の構造になっていて、一番シンプルなものがEngagement Scenario。これは真珠湾攻撃の攻撃場面やウェーク島上陸の上陸戦闘等、個々の戦闘場面に特化したシナリオになっている。次のレベルはBattle Scenario。これは珊瑚海海戦やミッドウェー海戦等、1つの作戦を描いたシナリオで、例えば珊瑚海海戦シナリオの場合、日本軍のポートモレスピー攻略部隊や機動部隊の出港から基地への帰還まで描いている。次のレベルはCampaign Scenario。これは数ヶ月に及ぶ戦役を扱ったシナリオで、ガダルカナル島攻防戦やソロモン進攻作戦等といった一連の戦役を描いている。そして最後のレベルがstrategic Scenarioで、これは戦争全域、戦争全体を扱ったシナリオになっている。

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今回プレイしたシナリオは、Campaign Scenarioの1つであるガダルカナル攻防戦。これは1942年8月における米軍のウォッチタワー作戦開始から翌年2月の日本軍によるガダルカナル撤退直前までの約半年間に渡る戦いを扱っている。筆者は連合軍を担当した。

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基本システム紹介

本作は複雑な太平洋戦争を詳細かつプレイ可能なレベルで描くため、ユニークな時間管理システムを採用している。一般的なSLGで利用しているTurnの概念は一応用いられているが、Turnが階層構造になっていて一見しただけでは理解しにくい。そこで本作の時間管理システムを簡単に紹介したい。

まず本作における時間管理の一番大きい単位は「戦略Turn」と呼ばれるものである。1戦略Turnは実際の1ヶ月に相当する。戦略Turnの中に「作戦実施プレイヤー決定フェイズ」というものがある。この時、両軍はそれぞれ密かに指揮ポイントの入札を行い、入札したポイントの大きかったプレイヤーが作戦実施者となって作戦を開始する。

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作戦が始まると、作戦の期間によって異なるものの概ね14~28日の作戦期間が与えられる。そして決められた作戦期間を終えて、作戦期間分だけ日付マーカーを進める。作戦が終了すると、両軍は再び指揮ポイントの入札を行う。そして入札値の大きい方が作戦実施者となり、14~28日の作戦を実施する。

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ちなみに本作では1ヶ月の長さが31日と決められている。だから1ヶ月に複数回の作戦を実行すると、作戦が終了する前に月末を迎える場合がある。この時はどうなるのか?。

作戦中に月末を迎えた場合、作戦を一旦中断し(作戦終了ではない)、新しい月における戦略Turnの手順を進める。そして戦略Turnの手順を終えると、先ほど中断していた作戦を再開するということになる。だから必ずしも戦略Turnが作戦開始の期日と一致するとは限らない。ただし例外として月の途中で作戦実施者を決定する際、両軍とも指揮ポイント入札にゼロポイントを入札した場合、月は直ちに終了し、次の月の戦略Turnに進む。

このあたりの手順が複雑なのでルールブックを読んだだけでは理解し難い面がある。またこのシステムにはちょっとしたバグがあり、劣勢側が作戦期間をずるずる引き延ばすことで優勢側の作戦期間を意図的に短くするような裏技がある。このあたり、例えば指揮ポイントを残したまま月末を迎えた場合、日付を巻き戻す(タイムマシーンのような)ルールが必要かもしれない。タイムマシーンといえば違和感があるが、例えば同時進行的に行われた作戦を個別に解決しているんだ、と強弁すれば、一応筋が通りそうにも思う。
ちなみにこのバグはVictory Games版の頃から存在しており、今回のGMT版では作戦期間の延長に縛りを設けて対応を図っている。これによってバグの影響はある程度緩和されたものの、完全に消えている訳ではない。

作戦の進め方だが、まず作戦実施側が作戦に参加するユニットを活性化し、必要な指揮ポイントを消費する。この時消費する指揮ポイントは、作戦実施者決定時に入札した指揮ポイントと同じにしなければならない。その間、非作戦実施側プレイヤーは、ダイスを振って密かに迎撃態勢を決定する。迎撃態勢には、「奇襲」「迎撃」「待ち伏せ」の3種類があり(連合軍側だけは特別に「空母待ち伏せ」という4番目の迎撃態勢がある)。奇襲が迎撃側にとって最悪で、待ち伏せが最良の結果である。

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作戦実施側は、その後「接触フェイズ」というものを行う。これは麾下のタスクフォースを1Hexずつ移動させる行為で、移動する度に敵の偵察によって発見される可能性がある。接触フェイズでそれぞれのタスクフォースが移動できるヘクス数に制限はないが、移動したHex数に応じて日付マーカーが進められる。例えば5Hex移動した場合には日付が2日進み、12Hex移動した時には5日進むといった具合。非活性化プレイヤーは特定条件を満たすと接触フェイズを終わらせる権限がある。非活性化プレイヤーが接触フェイズを強制終了させるか、または活性化プレイヤーが接触フェイズを自主的終了させると、接触フェイズは終了する。

続いて非作戦実施側プレイヤーが麾下のユニットを活性化させ、接触フェイズを実施する。接触フェイズで移動できるHex数は作戦実施側プレイヤーの移動Hex数と迎撃態勢によって決まる。例えば迎撃態勢が迎撃の場合、非作戦実施側の接触フェイズでの移動Hex数は最大で作戦実施側の移動Hex数と同じになり、迎撃態勢が奇襲の場合は非作戦実施側は接触フェイズで一切移動できない。なお非作戦実施側の接触フェイズに対し、作戦実施側プレイヤーは索敵を行い、もし発見に成功すると、その時点で接触フェイズを終了させることができる。

両軍の接触フェイズが終了すると、戦闘サイクル(Battle Cycle)に移行する。戦闘サイクルは1サイクルが実際の2日間に相当し、両軍のタスクフォースがお互いに移動しながら、航空攻撃、砲撃戦、対地砲撃等を繰り返す。このあたりの手順は一般的な作戦級海戦ゲームと同じである。

そして決められた作戦期間(14~28日)を経過するまでに洋上のタスクフォースは自軍港湾に引き返す必要がある。もし港湾に辿り着けなかった艦船は、追加の指揮ポイントを支払って強引に作戦期間を延長するか(この作戦期間延長ルールが先に述べたバグの根源になっている)、あるいは最悪その場で自沈となる。作戦期間14日というのは思いの外短く、何の計画もなしに洋上をウロウロしていると、あっという間にガス欠で海の藻屑になってしまう。

このように本作は戦略級ゲームでありながら作戦級ゲームの色合いを強く持った作品であり、陸海空の兵力が絡み合う複雑な太平洋戦争を巧みに表現している。ちょっとしたバグが気になる所だが、それでも本作は魅力に満ちた作品であることは疑いない。

つづく



Game Journal 77-ガダルカナル 海空戦南太平洋1942
ニミッツの太平洋戦史 太平洋の試練(上)-ガダルカナルからサイパン陥落まで ガダルカナル戦記(1) 空母瑞鶴戦史:南太平洋海戦

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