もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > IT関連

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230203_アジャイル開発

アジャイル開発とスクラム

平鍋健児/野中郁次郎/及部敬雄 翔泳社

アジャイル開発とその手法の1つであるスクラムについて解説した著作である。本書はアジャイル開発の内容とその必要性について説明し、その中でスクラムの進め方について解説している。スクラムは比較的シンプルなアジャイルプラクティスである。「スプリント」と呼ばれる1~4週間程度の開発期間を単位とし、「プロダクトバックログ」と呼ばれる機能一欄からスプリント内で実現する機能リストを「スプリントバックログ」として取り出し、スプリント内での完結を目指す。スプリントの中では、「プランニング」「デイリースクラム」「スプリントレビュー」「スプリントレトロスペクティブ」等のイベントが行われる等等。まあスクラムを実践している組織にとっては今更というような内容であろう。
スクラム自体はシンプルな手法なので、書籍の1冊を丸々埋めるようなボリュームはない。そこで本書では、第2部「アジャイル開発とスクラムを実践する」とし、実際にスクラムを実践している組織を6例取り上げ、実際にスクラムを成功させた人物にその効能を語らせている。そして第3部「アジャイル開発とスクラムを考える」で、スクラムの生みの親とも言うべき野中郁次郎氏とジェフ・サザーランド氏に語らせている。
スクラムを理解する上では不足ない内容であり、入門書としては好適だと思う。



4
230101_NewType

NEWTYPEの時代

山口周 ダイヤモンド社

以前に一度紹介したことがある書籍である。今回改めて読んでみると、1年前に読んだ時とはまた違った感想があり、興味深かった。
前回の書評でも書いたが、私自身は本書の主張に首肯する部分が多かったものの、筆者の主張全てを肯定しているものではない。しかしそのことは前回も触れたので、ここでは触れない。
本書で定義するニュータイプを一言で言えば、デジタルデバイスを駆使し、自身の価値観を重視しつつ、変化に対してしなやかに対応する人物と見る。最近活躍している若手のユーチューバーは、様々な分野でその種の才能を発揮しているように見える。それに対比する存在として、デジタル音痴、世間体を気にしつつ、変化を頑なに否定する人物をオールドタイプとすれば、いわゆる「頑固ジジイ」が典型的なオールドタイプと言えるかも。
まあニュータイプとかオールドタイプとか言っても、どちらが「良い・悪い」訳ではないので、頑固ジジイは頑固ジジイで構わないとは思うが・・・。

お奨め度★★★★

ニュータイプの時代
自由になるための技術 リベラルアーツ
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書)


3
221216_システム開発はもめるのか

なぜ、システム開発は必ずモメるのか

細川善洋 日本実業出版社

IT事業に携わる者にとってシステム開発での「揉め事」は日常茶飯事。というよりもシステム開発に関わる問題の大半は「揉め事」対応といっても過言ではない。「揉め事」と言っても発注側/顧客と受注側で白黒がハッキリしているケースは稀で(そもそも白黒ハッキリしているケースは「揉め事」とは言わない)、両者それぞれ言い分がある場合が殆どである。本書ではIT現場によくある「揉め事」と実際の裁判所での判例を紹介しつつ、「揉め事」のパターンや「揉め事」を回避するコツやノウハウ等を分かりやすく開発している。ストーリー仕立てになっていて、やや冗長な記述が気になるが、逆に読みやすい読み物に仕上がっている点は評価したい。



3

220819_LeanとDevOps

LeanとDevOpsの科学

Nicole Forsgren Ph.D他/武舎広幸・武舎るみ訳 インプレス

ソフトウェア開発組織の成熟度を示す指標としてCMMIがある。今でもCMMIは有益だと評価されているが、変化の激しい現在のシステム開発環境において、CMMIは過度に「官僚的」であるという批判もある。本書は、現在のソフトウェア開発環境に適合した組織とは何かという点に着目し、そのための望ましい尺度や望ましい組織の姿について考察した著作である。本書によれば、継続的デリバリこそがソフトウェア開発組織における「勝ち組」に求められる共通の項目であり、そのための手段として包括的な攻勢管理、継続的インテグレーション、継続的テストを実現する仕組みが必要であるとしている。
現実のソフトウェア開発の世界で本書の唱える考え方が実現できる企業はそれほど多くはないと思われるが、本書で提唱されている考え方がソフトウェア開発企業の生き残り戦略として有益なものであることは否定できないだろう。

お奨め度★★★

3
220626_HAYST

事例とツールで学ぶHAYST法

秋山浩一 日科技連

本書は、直交表を利用したソフトウェアテスト技法として知られているHAYST法について、現場での運用事例や関連ツールを紹介した書籍である。HAYST法が発表されたのが2008年。発表された当時は一世を風靡した(当社新人研修発表会でも紹介されたりしている)が、当社も含めて業界で普及しているとは言えない。その理由として技術的な難解さ(直交表を完全に理解しているソフトウェアエンジニアが何人いるのか…)やHAYST法自体が手間がかかる点がある。本書では、HAYST法の技術的内容を説明しつつ、実際にHAYST法を使ったテスト設計の事例を紹介している。
HAYST法については既に知っていたので目新しい所はなかったが、マインドマップを使ったテスト設計が紹介されており、これは使えると思った。また本書の考え方は「非機能テストは重視せず機能テストを重視する」というものであったが、これは同じ日に視聴したVALTESの講演内容とは真逆の考え方であり、興味深かった。
HAYST法についていえば、2010頃の機能自体が少ない組込系のテストへ適用する際には有用な技法であったが、今日のように機能が増大したシステム(例えばIoT)へのテストへ適用するにはあまり有用ではないように思えた。今日では組込系のシステムであっても10年前とは比較にならないほど厖大な機能を有している。そのような状況下で網羅性の高いテストを実施し、不具合流出を防ぐためには、HAYST法だけでは十分ではないという思いがよぎる。このあたり、確信ではないので、他の論文等も調べてみたい。

お奨め度★★★

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