もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 読書(洋書)

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Shattered Sword

Jonathan Parshall & Anthony Tully Potomac Books Inc

Shattered Sword
本書はミッドウェー海戦に関する研究書だ。本書の特徴は日本語の文献や史料を徹底的に調査し、ミッドウェー海戦を日米双方の視点から丹念に分析している点にある。分析作業を経て筆者らは、ミッドウェー海戦に関する様々な虚像を暴き、同海戦の研究に新たな1ページを開いたとされている。
本書が暴いた「神話」は多岐に渡るが、その中でも特筆すべきなのが「運命の5分間はなかった」という指摘である。この「運命の5分間」否定説は既に日本でも「戦史叢書」などで示されてはいた。しかし本書の画期的なのは単に「運命の5分間はなかった」ことを暴いたに留まらない。本書は、いわゆる「雷爆換装」問題にもメスを入れ、いわゆる「雷爆換装」問題が殆ど戦局に影響を及ぼさなかったことを明らかにした。本書によれば、日本側の攻撃隊発進を阻んだ最大の要因は雷爆換装ではなくCAP機の運用にあるとし、実際に各空母艦上でCAP機がどのように運用されていたかを分単位で明らかにしている。こういった著者らの分析は、客観的な証拠と明確な論理に裏付けられていて説得力があり、読んでいても引きずられそうになる部分だ。
他にも同海戦における日本軍の原因分析に関する記述や同海戦の勝利が太平洋戦争全体に与えた影響(筆者らによれば、ミッドウェー海戦で米海軍が敗北しても太平洋戦争での米軍の勝利は動かないとのこと)、そしてミッドウェー海戦に関する神話が形成された過程に関する記述が秀逸である。

お奨め度★★★★★

Shattered Sword Midway Inquest 日米空母決戦-ミッドウェー ミッドウェー
ミッドウェー海戦第1部:知略と驕慢 ミッドウェー海戦第2部:運命の日 ミッドウェー戦記(上下セット) 飛龍天に在り
海空戦南太平洋1942 Carrier Battle - Philippine Sea Pacific War

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Aircraft Carrier Victorious

David Hobbs Seaforth Publishing

Aircraft Carrier Victorious
英海軍空母「ヴィクトリアス」。WW2時には英海軍最新鋭の装甲空母として数々の戦いで武功を挙げ、戦後は2度に渡って改造を受けてジェット機時代にも対応し、1968年に退役するまで複葉のソードフィッシュからジェット艦載機のバッカニア攻撃機まで、様々な航空機を運用した。
本書は「ヴィクトリアス」の艦内図面を分析し、新造時の状況からジェット化対応後、さらに1960年代の改装後までの同艦の内部を細かく解説している。本書には「ヴィクトリアス」の断面図が数多く掲載され、それを読み解くのは結構厳しい。特にKindle版では、図面の詳細な部分が粗くスキャンされてしまっているので、重要な部分が読めなくなっている。本書をしっかりと読みたい方は、Kindle版ではなく紙版の入手した方が良い。
英空母の研究家にとっては有益な内容だが、それ以外の人にとってはあまり価値のない著作と言える。

お奨め度★★★


Aircraft Carrier Victorious WW2世界の空母-完全ガイド イギリス海軍の護衛空母 大西洋、地中海の戦い
The Squadrons of the Fleet Air Arm The British Fleet Air Arm in the World War 2 The British Pacific Fleet


Leyte Gulf 1944(2)-Surigao Strait and Cape Engano

Mark Stille Osprey

Leyte Gulf 1944(2)-Surigao Strait and Cape Engano
ゲームデザイナーとしても著名なMark Stilleによるレイテ沖海戦の著作。今回はスリガオ海峡海戦とエンガノ岬沖海戦を取り上げている。Ospreyの他の著作と同じく簡潔で要点を押さえた記述が心地よい。またイラストも豊富で、各海戦の様相を立体的に把握できる。ただし特に目新しい記述はなく、一応数値的なデータも取り上げらえてはいるが、些か表層的であるのは否めない。

お奨め度★★★




Leyte Gulf 1944(2)-Surigao Strait and Cape Engano レイテ沖海戦 決戦戦艦大和の全貌 連合艦隊: サイパン・レイテ海戦記

3
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Truk 1944-45: The destruction of Japan's Central Pacific bastion

Mark Lardas Osprey

Truk 1944-45
トラック環礁は、戦時中に連合艦隊の主要根拠地となり、連合軍からは「日本の真珠湾」「太平洋のジブラルタル」と呼ばれて恐れられていた。本書では、1944~45年に米英軍が実施したトラック環礁への一連の攻撃について、その準備段階と実施状況、そしてその結果について記載している。トラック空襲といえば、1944年2月に実施されたヘイルストーン作戦が有名で、本書でもページ数の多くをヘイルストーン作戦に割いている。とはいってもトラック空襲はそれ1回で終了したわけではなく、その後も米機動部隊による再度の空襲やB-24、B-29等の長距離爆撃機を用いた攻撃、さらには終戦直前には英機動部隊による攻撃も実施されている。本書ではこれらの戦いについても詳しく触れられている。
ヘイルストーン作戦については目新しい記述はなかったが、B-24やB-29の爆撃については今まであまり実体が知られていなかっただけに新鮮な気持ちで読むことができた。

お奨め度★★★



Truk 1944-45 How Carrier Fought New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944 模型で見るアメリカ空母のすべて
空母エンタープライズ下巻 マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 太平洋の試練(下)-ガダルカナルからサイパン陥落まで Carrier Battle - Philippine Sea

3

20250310_TF58

Task Force 58

Rod Macdonald Frontline Books

Task Force 58
タイトルは第58任務部隊となっているが、実際には太平洋戦域における米空母部隊の戦いすべてを扱っている。扱っている時期は、開戦前から太平洋線初期の空母戦、そして1943年以降の太平洋戦争後期の戦いを扱っている。メインテーマは勿論後半戦で、空母機動部隊の編成から始まり、機材の説明、作戦計画などを説明した後、ラバウル攻撃、ギルバート・マーシャル諸島攻略戦、トラック島空襲、マリアナキャンペーン、第1次フィリピン海海戦(マリアナ沖海戦)、パラオ諸島攻略戦、第2次フィリピン海海戦(レイテ沖海戦)、フィリピンキャンペーン、日本本土襲撃、硫黄島、沖縄戦、そして日本本土攻撃作戦計画とその準備攻撃等が描かれている。太平洋戦争で米空母の関連する作戦のほぼすべてを網羅していると言って良く、海戦場面以外の上陸支援や本土攻撃等にもページ数を割いている点が特徴である。
記述そのものに目新しい内容はさほどないが、米空母の戦いを総括的に理解するにはよい本である。

お奨め度★★★



Task Force 58 Pacific Carrier War How Carrier Fought World War II US Fast Carrier Task Force Tactics 1943-45
空母エンタープライズ上巻 空母エンタープライズ下巻 太平洋の試練(下)-ガダルカナルからサイパン陥落まで 太平洋の試練(上)-レイテから終戦まで

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