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書籍紹介「Solomons Air War Vol.2」
Solomons Air War Vol.2
Michael Claringbould/Peter Ingman Avonmore Books
Solomon Air Warは、ガダルカナル周辺での日本と連合国との航空戦を詳細に描いたシリーズである。どれほど詳細かと言えば、両軍それぞれ失われた機体1機1機の具体的な顛末をわかる範囲で詳細に記しているほどだ。巻末の両軍損失機一欄では、両軍の損失機が1機単位シリアル番号つきで記載されており、まさに圧倒される思いがする。
この第2巻では、1942年10月の戦いを扱っている。この時期、米軍が「10月危機」と呼んだ時期にあたり、日本軍の第2師団輸送や「金剛」「榛名」の艦砲射撃、第2師団によるガダルカナル総攻撃、そして南太平洋海戦と、ガダルカナル戦全体の中でも最も日本軍が勝利に近づいた時期ともいえる。本書でも触れられているが、この時期両軍の損害はほぼ拮抗し、損失機数も日米それぞれ225機、201機と近接していた。とはいえ戦死者数では日本側の方が圧倒的に多く、戦闘機同士の空中戦でも零戦の優位は最早失われていた。それは数値面にハッキリと表れており、そのあたりも本書の魅力と言える。
他にも、南太平洋海戦終了直後にエスピリッツサントのPBY部隊が日本空母に対して夜間雷撃を仕掛けたことや、さらに同海戦の翌日に追撃してきた日本空母の索敵隊と「エンタープライズ」搭載のアヴェンジャー機が交戦した話など、興味深いエピソードも紹介されている。
本書は、ソロモン方面での戦いやガダルカナル戦に興味のある方にとっては、非常に価値のある一冊と言えるだろう。値段が高いのが難点だが、値段分以上の価値がある作品だと思う。
お奨め度★★★★★
書籍紹介「Kamikaze: To Die for the Emperor」
Kamikaze: To Die for the Emperor
Pete C.Smith Pen & Sword Aviation
本書を読んで最も強く感じたのは、「特攻」という行為が、精神論や美談ではなく、極めて具体的で技術的・戦術的な“相互適応の過程”として描かれている点である。著者は、特攻を日本側の狂気や狂信として単純化せず、同時に英雄化もせず、一つの軍事的現象として冷静に解剖している。
冒頭の「The Spirit of Bushido?」では、1944年5月のビアク島沖における二式複戦の体当たり攻撃が、組織的特攻の先駆例として紹介される。ここで重要なのは、特攻が突然生まれた異常行動ではなく、戦況悪化と装備・戦力不足の中で“合理的選択”として浮上してきたことが示されている点だ。
第2章から第4章にかけて描かれるフィリピン戦域での戦闘は、特攻の「効果」が数字と具体例で示される。1944年11月、特攻機が米空母7隻に突入し約300名の死者を出した事実や、「ルイビル」が友軍駆逐艦の存在によって砲撃を開始できなかった場面などは、特攻が単に命中率の問題ではなく、艦隊運用全体に混乱と制約をもたらしたことをよく物語っている。
第5章以降で特に印象的なのは、米海軍が特攻に対して極めて迅速かつ実務的に“学習”していく姿だ。20mm機関砲の無力さを認め、40mmへの換装を進め、VT信管付き5インチ砲の有効性を確認する過程は、理想論ではなく血を流しながら得られた教訓の積み重ねである。現場からの提言は、流血の中で得た貴重な教訓を反映しており、現場の切迫した雰囲気を雄弁に語っている。
沖縄戦の章では、特攻と対策の“最終形”が描かれる。日本側の戦術変更やそれに対する米側のレーダーピケット配置の見直しなど。特攻は進化したが米側の適応速度はそれを上回ったことが明確になる。桜花が「初期の有効な対艦ミサイルの一つ」と評価されつつも、輸送・運用上の脆弱性や「信濃」沈没による計画破綻が指摘される点は、技術的先進性と運用現実の乖離を象徴している。米側は桜花を恐れたが、日本側は運用上の齟齬によって沖縄戦の途中で桜花の運用を断念したのは印象的だ。
終盤で示される統計は、本書の核心である。特攻は通常攻撃よりも明確に有効だったが、撃沈率そのものは必ずしも高くなく、特に駆逐艦に対しては“致命打”になりにくかった。その理由として示されるダメージコントロール能力、艦の区画構造、訓練の重要性は、戦争の勝敗が精神論ではなく組織力と技術力の総和で決まることを強く印象づける。
本書を通じて感じたのは、特攻が「恐怖兵器」であったことは事実だが、戦争の帰趨を決定づける“切り札”にはなり得なかったという冷酷な結論である。そしてその過程で、多くの若いパイロットが命を失ったという事実が、淡々とした数字として積み上げられていく。
本書は特攻を賛美も断罪もせず、なぜそれが生まれ、どこまで通用し、なぜ限界に突き当たったのかを明確に示した戦史書である。感情を排した記述だからこそ、読む者に重い問いを突きつける一冊であった。
お奨め度★★★★
書籍紹介「Solomons Air War Vol.1」
Solomons Air War Vol.1
Michael Claringbould/Peter Ingman Avonmore Books
Michael Claringbould/Peter IngmanのSouth Pacific Air Warシリーズは、1942~43年におけるニューギニア方面での日米航空戦を詳細に記した画期的な著作だった。本書Solomon Air Warは、South Pacific Air Warシリーズと同じ手法で、今度はガダルカナル周辺での日本と連合国との航空戦を描いたシリーズである。
この第1巻では、米軍がガダルカナルに上陸した1943年8月7日の望楼作戦開始から、2か月間の戦いを描いている。South Pacific Air Warシリーズで見せた詳細な分析はこのシリーズでも健在で、両軍の航空機損失が1機単位で詳細に記載されている。本書を読むことでソロモン方面での日米航空戦のディティールをより詳しく掘り下げることができるだろう。
値段が高いのが難点だが、資料性を考えれば十分に値段分以上の価値がある著作と言える。
お奨め度★★★★★
書籍紹介「Pacific Profiles Vol.6-Allied Fighters: Bell P-39&P-400 Airacobra」
Pacific Profiles Vol.6-Allied Fighters: Bell P-39&P-400 Airacobra
Michael Claringbould/Peter Ingman Avonmore Books
Solomns Air WarやSouth Pacific Air Warシリーズで有名なMichael Claringbouldの別シリーズがこのPacific Profilesシリーズである。このシリーズは特定の機種に的を絞り、主に機体塗装や特殊なシグネチャーを解説した著作である。このVol.6は、P-39/P-400について解説した著作で、南東太平洋方面に展開したP-39/P-400各飛行隊に着目し、それぞれの活動状況を簡単に記した後、それぞれの部隊を代表する機体の側面図とその解説を記している。部隊ごとに整理されているので、どのような部隊がどのような活躍を見せたかを知るには好都合な著作だ。模型作りをする人にとっては資料性が高い。それ以外の面では資料性はさほど高くはない。
お奨め度★★★




