もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 読書(洋書)

3

240731_YamatovsIowa

Yamato vs Iowa

Paul Forest

タイトル通り「大和」と「アイオワ」のどちらが強いかという手垢のついたテーマを論じた著作である。本書は両者の対決について、砲火力、火器管制、防御力の3つの側面から分析している。筆者は両者の優劣を明確に断じるのではなく、あくまでも淡々と分析の結果を論じている(読んでいれば、筆者の考え方は大体わかるが)。
本書の特徴としては、数式やグラフを多用し、両者の対決を可能な限り数理的に分析している点である。特に興味深い考え方は安全圏に対するもので、本書によれば安全圏の広さは交戦時における両者の交差角によって変化するというものだ。つまり真横を向けて撃ち合うよりも斜め前に向けた方が防御力が有利又は不利になるというものである。その結果、一般には防御力の劣る「アイオワ」であっても、交差角によっては「大和」よりも広い安全圏を得る可能性があるとしている。
英文だが文書量自体は少なめで、読み通すのにそれほど時間はかからない。ただし数式を含めて精読するにはかなり難儀するだろう。

5
240404_Midway

Midway Inquest

Dallas W. Isom Indiana University Press

5年ぶりに再読した。やはり面白い。
本書の主題はミッドウェー海戦における日本軍の決断について日本側の視点で分析することにある。筆者はミッドウェー海戦における日本側の決断は以下の3点としている。
1)第2次攻撃隊を雷装から爆装に変更させた
2)敵艦発見の報を受けて雷装に戻させた
3)「直ちに攻撃の要ありと認む」を採用せず正攻法の攻撃を選択した
筆者はその決断の根拠を明らかにするため、日本側の資料(主に「戦史叢書」と澤地久枝氏「滄海よ眠れ」を参照)を丹念に分析し、日本側の決断の根拠とその背景となった事実関係(例えば日本空母の兵装転換はどの程度進んでいたのか)調査・考察している。その中で筆者は日本側決断の主要要因として空母艦載機搭乗員の層の薄さ(全体でパイロット約400人のうち、ミッドウェー海戦までに既に約100人を失っていた)を上げ、そのため日本側としてはパイロットの損失を強いる「護衛なし攻撃」を実施し難かったと上げている(筆者の言葉を借りれば「日本軍は『ピュロスの勝利』を恐れた」とある)。
その上で筆者はミッドウェー海戦での日本側の最大の損失を「空母4隻の損失ではなく搭乗員の損害」とし、4隻の空母艦上で戦死(爆死又は焼死)したパイロットの数量を推測している。このような数値的分析は、日本側の資料ではなかなか見れないだけに、壮絶ですら思える(このあたりの数値分析は日本側の資料では避けて来た部分である)。
また本書後半には架空戦記として「もしミッドウェー海戦で日本軍が勝利していたら」的なサイドストーリーが長々と書かれている。この筆者はこういったストーリーが結構好きらしい。個人的にサイドストーリー自体はあまり興味を惹かなかったが、最終的なオチは面白かった。

お奨め度★★★★★


Midway Inquest ミッドウェー海戦第1部:知略と驕慢 ミッドウェー海戦第2部:運命の日 ミッドウェー
Coral Sea, Midway and Submarine Actions: May 1942-August 1942 (History of United States Naval Operations in World War Ii, Volume 4) Shattered Sword The First Team - Pacific Naval Air Combat from Pearl Harbor to Midway 1942 Carrier Battle - Philippine Sea

4
240210_OperationPrdestal

Operation Pedestal 1942

Angus Konstam Osprey

OspreyのCampaign(戦役)シリーズの1作品。1942年8月のマルタ島物資輸送作戦である「ペデスタル作戦」を描いている。オスプレイ作品の通例として、戦いの背景や戦略目標、両軍の兵力や部隊配置がコンパクトにまとめられており、非常に読みやすい。使われている英文も平易なので、電子書籍の翻訳機能を併用すれば、苦も無く大意をつかむことができる。ページ数は決して多くはないもの、要領の良い記述となっており、資料性もそこそこ高い。唯一の難点は値段がやや高いところか。

お奨め度★★★★



Operation Pedestal 1942 Malta 1940-1942 Struggle For the Middle Sea 大西洋、地中海の戦い

4
240106_USNavyShips

US Navy Ships vs Japanese Attack Aircraft;1941-1942

Mark Stille Osprey

オスプレイの対決シリーズで、太平洋戦争前半期における日本海軍航空隊と米艦隊との対決を描いている。本書では、両者の対決に焦点を当てて、その実情について数値データに基づいて記している。真珠湾攻撃時の急降下爆撃隊は命中率20%以下であったこと。雷撃隊も命中率が50%に届かったことなど、日本人にとって意外なデータも含まれており、数値を見ているだけでも興味深い。(インド洋での「命中率80%以上」というのも結構眉唾です)。
本書では米側の対空装備の進歩についても解説している。米艦艇の装備について必ず取り上げられるのはVT信管とボフォース40mm機関砲だが、それ以外に本書では火器管制装置の重要性についても触れている。開戦当時米海軍が保有していた対空用FCSで最新のものはMk.33であった。しかしすぐに性能が不十分であるとみなされ、5インチ砲用のMk.37と40mm機関砲用のMk.51が開発された。中でもMk.51はシンプルな設計で1人でも操作可能であったが、高い実用性の性能を誇り、近接対空火器の威力発揮に大いに貢献した。実際、VT信管装備後であっても、米海軍の対空火器による撃墜数は。40mmまたじゃ20mm機関砲によるものが圧倒的多数を占めていたという。
例によって我々にとっても分かりやすい英文で書かれており、太平洋戦争における空母戦に興味のある向きには一読をお奨めしたい1作だ。

お奨め度★★★★

US Navy Ships vs Japanese Attack Aircraft: 1941–42 (Duel Book 105) (English Edition)


4

240101_HowCarrierFought

How Carrier Fought

Lars Celander CASEMATE

既に何度か紹介済の書籍 である。今回読んだのは3回目だったが、やはり面白い。
空母戦の戦い方やメカニズムについて解説した著作で、索敵や攻撃はどのように行われるのか。航法や通信システムはどうなっているのか。索敵や戦闘機誘導の実態はどうだったのか。さらには実戦においてこれらのシステムがどのように機能していたかについて、本書では実例を含めて詳しく紹介されている。
英語なので抵抗する向きもあるかもしれないが、英文は平易で読みやすく、しかも日本人とは全く異なった視点で空母戦の実態を紹介してくれる。

「単座戦闘機で索敵なんてできる訳がない」

と思っているそこのアナタ。
是非、本書を読んでみて下さい。

「アナタの常識、変わるかも・・・」

お奨め度★★★★★

How Carriers Fought: Carrier Operations in World War II (English Edition)
How Carriers Fought: Carrier Operations in WWII
Midway Inquest: Why the Japanese Lost the Battle of Midway (Twentieth-Century Battles) (English Edition)

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