Napoleon's Last Gamble(以下、本作)は、2016年に米国OSG社から出版されたSLGです。テーマは1815年のワーテルロー会戦。プレイヤーはナポレオンやウェリトン、ブリュッヒャー、グルーシーらの将となり、自軍の勝利を目指して戦います。
本作は、The Library of Napoleonic Battles(LNB)と呼ばれるシリーズゲームの1作で、1Hex=480m、1Turn=1時間(夜間は3~6時間)を表し、1ユニットは連隊~師団(一部砲兵中隊あり)とリーダー1名を表します。数多くのシリーズ作品が発表されており、有名なライプツィヒ会戦やモスクワ遠征、アウステルリッツ会戦やフランス国内戦役など、様々な状況がゲーム化されています。
システムは移動・戦闘の繰り返しで、強ZOC、Must Attackという典型的なNAWシステムです。特徴的な部分としては指揮官のルールがあり、軍司令官の指揮下にない部隊やユニットはダイスチェックで統率値以下の出目を出さないと移動できません。統率値は2~4ぐらいなので、大雑把にチェック成功率は半々ぐらいです。とはいっても軍司令官の能力によって統率可能な軍団数が異なっていて、ナポレオンやウェリントンは4個軍団統率可能なのに対し、プロイセン軍の主将であるブリュッヒャーは統率値が2に過ぎません。ちなみにプロイセン軍の全兵力は4個軍団なので、常に半数の軍団が確実にOut of Commandになります。他には砲兵ルールや騎兵突撃ルールがありますが、左程難しいものではありません。
今回プレイした本作については、いわゆる「百日戦争」と呼ばれるワーテルロー戦役をマルチシナリオで描いた作品です。シナリオは計7本。キャトルブラ、リニー、ワーブル、ワーテルローの戦いを描いたシナリオが各1本と、ワーテルロー本戦の後に撤退するフランス軍とそれに対する追撃戦を描いた「ラ・スーフェルの戦い」。そして2本のキャンペーンシナリオからなります。キャンペーンシナリオは、1815年6月16日~18日の期間を扱っており、ワーテルローの本戦に至る全ての戦いを描いています。
今回プレイしたシナリオは、ワーテルローシナリオとワーブルシナリオを繋げてみたオリジナルシナリオです。このようなシナリオは元々のゲームには含まれていませんでしたが、ワーテルローシナリオとワーブルシナリオの情報を組み合わせることで実現できそうに思われました。今回の参加者は4名で、フランス軍2名(ナポレオン、グルーシー)、連合軍2名(ウェリントン、ブリュッヒャー)です。対戦自体はVASSALによる遠隔対戦としました。筆者はブリュッヒャーを担当します。
1Turn(1200)
このシナリオは決戦当日の正午から始まります。筆者の担当するワーブル方面では、両軍の接触がまだなく、プロイセン軍3個軍団のうち2個軍団がワーテルロー方面に向けて前進中という状況です。残り1個軍団は南方から近づいて来るグルーシー将軍のフランス軍の攻撃を迎え撃つ布陣です。ワーテルロー正面では、フランス軍がウェリントンの率いる英蘭連合軍を攻撃します。戦線右翼からはデルロン中将麾下の第1軍団がパプロットの城館を攻撃してこれを奪取。戦線左翼ではウーグモン城館を守る英軍歩兵師団に対してレイユ中将麾下のフランス第2軍団が包囲攻撃を行い、これを占領しました。
2Turn(1300)
ワーテルロー方面では、フランス軍がウェリトン軍の中央を突破すべく猛攻を加えています。しかしウェリトン麾下の英蘭連合軍もプロイセン軍の増援を待ちながら懸命に耐えています。そのプロイセン軍2個軍団は懸命にワーテルローへの道を急いでいます。3Turn(1400)
ウェリントン軍の左翼からプロイセン軍の先鋒であるビューロー将軍麾下の第4軍団の騎兵部隊が姿を表しました。ウェリントン軍も突出してきたフランス軍に対して反撃を実施。デルロン将軍麾下の3個旅団のフランス軍を包囲攻撃し、これを殲滅しました。4Turn(1500)
フランス軍は両翼包囲を諦め中央突破に方針を変更しました。一方でフランス軍右翼からはビューロー麾下のプロイセン第4軍団が本格的に登場してき、さらにツィーテン中将麾下の第1軍団もその後から続きます。ワーブル方面では、グルーシー将軍麾下のフランス軍第3軍団、第4軍団はディール川を渡ってリマルに接近してきました。ワーテルロー方面への増援は諦めてワーブル方面で攻勢を仕掛けようとするようです。
5Turn(1600)
グルーシーはリマルに対して総攻撃を行ってきました。リマルでは激しい戦いが行われましたが、プロイセン兵はここを守り切ります。ただ、兵力不足でいつまでリマルを守り続けられるか・・・・。感想
今回はここで終了しました。プレイは2日間行われ、プレイ時間は12~13時間です。4.5Turn分進みましたので、1Turnあたりの所要時間は3時間弱・・・。うーん。プレイ自体はまあ面白かったです。ただ、私の立場はブリュッヒャーだったので、あまりやることはなかったです。今回のシナリオはワーテルローシナリオとワーブルシナリオを無理矢理繋げたものでしたが、やはり原案通りワーテルローシナリオ、ワーブルシナリオで個別にプレイするのが良いかと思いました。ワーテルローシナリオは規模が大きいので時間がかかりますが、長考型プレイヤーを排してプレイすれば、2日間で完遂することは可能ではないかと思います。
ルール的にはNAWシステムがベースなのでやや古い感じがしますが、その分細かい事にはあまり悩まずにプレイできます。ただ隠匿ルールが厄介で、その分プレイ時間を伸ばしている感があります。LOSを判定するのが結構面倒なのです。シンプルにするのなら隠匿ルールそのものをすっぱり無くすか、あるいは逆に隣接Hex以外は見えないようにする、というのが良いかもしれません(砲撃目標になった瞬間に目標を明らかにする等)。うーん、あんまり変わらないかな?
まあ色々書きましたが、ナポレオン戦争の会戦を比較的シンプルなルールでプレイできるという本シリーズは佳作以上のものと評価してよいと思います。







