もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > ナポレオン戦争

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Napoleon's Last Gamble(以下、本作)は、2016年に米国OSG社から出版されたSLGです。テーマは1815年のワーテルロー会戦。プレイヤーはナポレオンやウェリトン、ブリュッヒャー、グルーシーらの将となり、自軍の勝利を目指して戦います。

本作は、The Library of Napoleonic Battles(LNB)と呼ばれるシリーズゲームの1作で、1Hex=480m、1Turn=1時間(夜間は3~6時間)を表し、1ユニットは連隊~師団(一部砲兵中隊あり)とリーダー1名を表します。数多くのシリーズ作品が発表されており、有名なライプツィヒ会戦やモスクワ遠征、アウステルリッツ会戦やフランス国内戦役など、様々な状況がゲーム化されています。

システムは移動・戦闘の繰り返しで、強ZOC、Must Attackという典型的なNAWシステムです。特徴的な部分としては指揮官のルールがあり、軍司令官の指揮下にない部隊やユニットはダイスチェックで統率値以下の出目を出さないと移動できません。統率値は2~4ぐらいなので、大雑把にチェック成功率は半々ぐらいです。とはいっても軍司令官の能力によって統率可能な軍団数が異なっていて、ナポレオンやウェリントンは4個軍団統率可能なのに対し、プロイセン軍の主将であるブリュッヒャーは統率値が2に過ぎません。ちなみにプロイセン軍の全兵力は4個軍団なので、常に半数の軍団が確実にOut of Commandになります。他には砲兵ルールや騎兵突撃ルールがありますが、左程難しいものではありません。

今回プレイした本作については、いわゆる「百日戦争」と呼ばれるワーテルロー戦役をマルチシナリオで描いた作品です。シナリオは計7本。キャトルブラ、リニー、ワーブル、ワーテルローの戦いを描いたシナリオが各1本と、ワーテルロー本戦の後に撤退するフランス軍とそれに対する追撃戦を描いた「ラ・スーフェルの戦い」。そして2本のキャンペーンシナリオからなります。キャンペーンシナリオは、1815年6月16日~18日の期間を扱っており、ワーテルローの本戦に至る全ての戦いを描いています。

今回プレイしたシナリオは、ワーテルローシナリオとワーブルシナリオを繋げてみたオリジナルシナリオです。このようなシナリオは元々のゲームには含まれていませんでしたが、ワーテルローシナリオとワーブルシナリオの情報を組み合わせることで実現できそうに思われました。今回の参加者は4名で、フランス軍2名(ナポレオン、グルーシー)、連合軍2名(ウェリントン、ブリュッヒャー)です。対戦自体はVASSALによる遠隔対戦としました。筆者はブリュッヒャーを担当します。

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1Turn(1200)

このシナリオは決戦当日の正午から始まります。筆者の担当するワーブル方面では、両軍の接触がまだなく、プロイセン軍3個軍団のうち2個軍団がワーテルロー方面に向けて前進中という状況です。残り1個軍団は南方から近づいて来るグルーシー将軍のフランス軍の攻撃を迎え撃つ布陣です。

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ワーテルロー正面では、フランス軍がウェリントンの率いる英蘭連合軍を攻撃します。戦線右翼からはデルロン中将麾下の第1軍団がパプロットの城館を攻撃してこれを奪取。戦線左翼ではウーグモン城館を守る英軍歩兵師団に対してレイユ中将麾下のフランス第2軍団が包囲攻撃を行い、これを占領しました。

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2Turn(1300)

ワーテルロー方面では、フランス軍がウェリトン軍の中央を突破すべく猛攻を加えています。しかしウェリトン麾下の英蘭連合軍もプロイセン軍の増援を待ちながら懸命に耐えています。そのプロイセン軍2個軍団は懸命にワーテルローへの道を急いでいます。

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3Turn(1400)

ウェリントン軍の左翼からプロイセン軍の先鋒であるビューロー将軍麾下の第4軍団の騎兵部隊が姿を表しました。ウェリントン軍も突出してきたフランス軍に対して反撃を実施。デルロン将軍麾下の3個旅団のフランス軍を包囲攻撃し、これを殲滅しました。

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4Turn(1500)

フランス軍は両翼包囲を諦め中央突破に方針を変更しました。一方でフランス軍右翼からはビューロー麾下のプロイセン第4軍団が本格的に登場してき、さらにツィーテン中将麾下の第1軍団もその後から続きます。

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ワーブル方面では、グルーシー将軍麾下のフランス軍第3軍団、第4軍団はディール川を渡ってリマルに接近してきました。ワーテルロー方面への増援は諦めてワーブル方面で攻勢を仕掛けようとするようです。

5Turn(1600)

グルーシーはリマルに対して総攻撃を行ってきました。リマルでは激しい戦いが行われましたが、プロイセン兵はここを守り切ります。ただ、兵力不足でいつまでリマルを守り続けられるか・・・・。

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感想

今回はここで終了しました。プレイは2日間行われ、プレイ時間は12~13時間です。4.5Turn分進みましたので、1Turnあたりの所要時間は3時間弱・・・。うーん。

プレイ自体はまあ面白かったです。ただ、私の立場はブリュッヒャーだったので、あまりやることはなかったです。今回のシナリオはワーテルローシナリオとワーブルシナリオを無理矢理繋げたものでしたが、やはり原案通りワーテルローシナリオ、ワーブルシナリオで個別にプレイするのが良いかと思いました。ワーテルローシナリオは規模が大きいので時間がかかりますが、長考型プレイヤーを排してプレイすれば、2日間で完遂することは可能ではないかと思います。

ルール的にはNAWシステムがベースなのでやや古い感じがしますが、その分細かい事にはあまり悩まずにプレイできます。ただ隠匿ルールが厄介で、その分プレイ時間を伸ばしている感があります。LOSを判定するのが結構面倒なのです。シンプルにするのなら隠匿ルールそのものをすっぱり無くすか、あるいは逆に隣接Hex以外は見えないようにする、というのが良いかもしれません(砲撃目標になった瞬間に目標を明らかにする等)。うーん、あんまり変わらないかな?

まあ色々書きましたが、ナポレオン戦争の会戦を比較的シンプルなルールでプレイできるという本シリーズは佳作以上のものと評価してよいと思います。

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写真08_Battle_of_Waterloo_1815



ナポレオン戦線従軍記
ナポレオンの戦役(Les Batailles de Napoleon) ナポレオン フーシェ、タレーラン 情念戦争1789-1815 フランス革命 歴史における劇薬 皇帝ナポレオン第1巻

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皇帝ナポレオン【1】

池田理代子 フェアベル

皇帝ナポレオン第1巻
「ベルサイユのばら」で有名な池田理代子氏の描いたナポレオンの漫画。実は私は氏の作品をこれまで読んだことがなく(少女漫画特有の異常に目玉が大きいキャラや、背後に花が咲きまくる演出に馴染めなかった)、ベルバラもタイトルしか知らないという有様。しかしナポレオンというテーマには興味があったので、読んでみた。この第1巻では、ナポレオンがヴァンデミエールの反乱鎮圧に出動する所から始まる。パリ市内の暴動に対して市街地で大砲を使うという異例の戦術で鎮圧したナポレオンは、以後ポール・バラスの片腕となる。
本書では、こういったナポレオンの活躍を描く一方、まるで昼ドラのようなナポレオンの色恋沙汰を「リアル」に描いている。本書によればナポレオンは「戦争には強いが女には弱い」如く描かれているが、このあたりを詳細に描いているのは女性作者らしい表現と言えるのかも。
続編を読むのが楽しみである。

お奨め度★★★


皇帝ナポレオン第1巻 ナポレオンの戦役(Les Batailles de Napoleon) ナポレオン フーシェ、タレーラン 情念戦争1789-1815 フランス革命 歴史における劇薬
Game Journal 89-フランス革命

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以前にソロプレイを紹介した「War and Peace」の「解放戦争シナリオ」(1813戦役)。今回はこれを対戦でプレイした。筆者はフランス軍を担当する。

1813年4月

フランス軍がベルリン、ライプチヒ、ドレスデンを同時に攻撃。各地でフランス軍が勝利を収めた。上記3個所は全てフランス軍が占領。フランス軍は3戦力の損失に対して、連合軍はプロイセン軍が6戦力、ロシア軍は5戦力を失った。

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1813年5月

ライプチヒ、ドレスデン方面ではフランス軍が塹壕線を構築して防衛体制を固める。北部戦線ではダヴー将軍麾下のフランス軍8戦力がハンブルクに進撃。ハンブルクを守るプロイセン・ロシア連合軍6戦力を攻撃する。連合軍を指揮するのはプロイセン軍ビューロー将軍。都市に籠る連合軍をフランス軍が強襲。指揮能力と士気に勝るフランス軍が連合軍を圧倒し、連合軍は降伏を余儀なくされる。ビューロー将軍はフランス軍の捕虜となった。

この時点でフランス軍の勝利点は計4点。このまま勝利点を貯めてオーストリアを参戦させないでおきたい。

連合軍はクライスト将軍(プロイセン)、コンスタンティン将軍(ロシア)の両将が率いる計13戦力(約6.5万)でドレスデン前面に攻勢を仕掛けてきた。フランス軍は塹壕線で耐えつつ増援を待つ。ヴィクトール将軍、スールト将軍麾下の部隊が次々と来援して連合軍を迎え撃つ。
結局、フランス軍増援部隊が連合軍を撃破してフランス軍の勝利。しかもこの戦いでロシア軍コンスタンティン将軍が負傷。退場を余儀なくされる。

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1813年6月

フランス軍が損耗フェイズで6の目を出してしまい、大損耗を強いられる。損耗で失った戦力は計15戦力にも及び、これまでで最大の損害を被ってしまう。
それにもめげずフランス軍はオーデル川西岸に残っているプロイセン、ロシア連合軍を追撃する。ヴィクトール将軍麾下の部隊(4戦力)が2倍近い連合軍を撃破。この勝利によってフランス軍の獲得した勝利点は計6点となった。

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連合軍は、バルクレイ将軍率いるロシア軍とブリュヒャー将軍率いるプロイセン軍がベルリンに向けて殺到する。ベルリンを守るフランス軍ウジェーノ将軍は塹壕線に籠って善戦するが、兵力の差は如何ともしがたく、3戦力を失って後退。ベルリンは再び連合軍の手中に落ちた。

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1813年7月

ベルリン方面に向けたフランス軍の反撃が開始される。ナポレオン自ら率いる8戦力(約4万)が、ベルリンに布陣するバルクレイ将軍率いるロシア軍6戦力を攻撃。ダヴー将軍麾下の12戦力がベルリン後方に布陣するブリュッヒャー率いる9戦力を叩く。
後に「ベルリンの会戦」と呼ばれる大会戦でフランス軍は大勝利を収めてバルクレイ、ブリュッヒャー両将は撤退を余儀なくされる。これによりフランス軍の勝利点は8点となり、オーストリア参戦の可能性はいよいよ遠のいた。

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1813年8月

連合軍はドレスデンに向けて反撃を指向してきた。例によってバルクレイ、ブリュッヒャー両将率いるロシア、プロイセン連合軍である。ドレスデンを守るのはフランス軍マーモント将軍麾下の5戦力。塹壕線に籠るフランス軍であったが、兵力に勝る連合軍の猛攻に苦戦を強いられる。しかし後方からヴィクトール将軍麾下のフランス軍9戦力が応援にかけつけると形勢は逆転。フランス軍の反撃によって連合軍は総崩れになる。
この「第2次ドレスデン会戦」の敗北によって対仏同盟は崩壊。プロイセンは単独でフランスとの講和を行い、ロシア軍は遠くロシア本国に向けて撤退していった。

対仏同盟云々というのは作り話で、単にプレイヤーが投了しただけです。

感想及び後日談

フランス軍が勝利点を大量に獲得したのが勝因であった。連合軍が大規模兵力による反撃を数回に渡って企図し、それが悉く失敗したこと。さらに連合軍反撃部隊がフランス軍の逆反撃を受けて敗北したことにより、さらに勝利点を献上することになってしまった。同盟ルールが適用されるシナリオ全てで言えることだが、敵に攻撃される可能性のあるスタックは4戦力以下が大原則。5戦力以上でスタックしていると、敵にそこを狙われる。特に指揮能力や士気値で劣る連合軍の場合は猶更だ。
ちなみにその後同じ立場で同じシナリオを再戦したが、その時はフランス軍が大苦戦した。連合軍は前回の教訓を受けてスタックをバラシてきたので、フランス軍が勝利点を思うように獲得できない。また要域ベルリンの周囲には4戦力スタックによる「壁」を作ってきたので、ベルリン占領のままならない。それでも一度はフランス軍がベルリンを落としたものの、その後の連合軍の反撃でベルリン失陥。しかも損耗チェックで6の目を3回も出してしまったフランス軍が大消耗。

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そうこうしている間に同盟フェイズで有利なDRMが得られないままオーストリアとスウェーデンが連合軍側に立って参戦したことにより万事休す。さらに「泣き面に蜂」とはまさにこのこと。親仏衛星諸国も次々と寝返る。最後はフランス本土国境まで後退し、地形を利用した巧みな防衛戦で連合軍に一泡吹かせましたとさ。ゲーム自体はボロ負けだけどね、

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第2回目の対戦の方が得るところが大きかったが、詳細な記録を取らなかった(第1回目の勝利で個人的には満足していた)ので概要レベルの紹介でお許し頂きたい。第2回目の対戦で分かる通り、連合軍が適切な初期配置を行えば、フランス軍がベルリンを奪取するのは容易ではなく、結果としてフランス軍の勝利もなかなか難しくなるのではないかと思われる。

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「War and Peace」(邦訳:戦争と平和、以下本作)は、1980年に米国のThe Avalon Hill Game Co(TAHGC)から発表されたナポレオン戦争を扱ったシミュレーションゲームである。デザイナーは、Mark McLaughlinで、本作以外では30年戦争を扱った"Holy Roman Empire"や、太平洋戦争キャンペーン"East Wind Rain"等のデザインでも知られている。
今回、本作をVASSALでソロプレイしてみることにした。選んだシナリオは「解放戦争」。一般には諸国民戦争とも呼ばれる1813年の戦いである。

前回まで-->こちら

シナリオV.解放戦争(承前)

8Turn(1813年11月)

このTurnから冬季になる。冬季は損耗チェックのダイス目にDRM+1が適用される。
フランス軍の手番。損耗フェイズのダイス目は6。フランス軍にとっては最悪の出目である。とはいっても冬季でDRM+1が適用されるので、5も6も変わらないのだが・・・。3戦力以上がスタックしている場所では1戦力、6戦力以上なら2戦力が失われる。損耗によりフランス軍は計10戦力を失った。
フランス軍は主力をエルベ川の西岸に後退させつつ、一部兵力で反撃を試みる。ライプチヒからさらに西へ進んで所謂「西ドイツ」領内まで前線不覚突出していたオーストリア軍別動隊をスールト将軍が攻撃してこれを撃破した。
その北方ではマグデブルグを奪回すべくナポレオン直卒の部隊がスウェーデン軍を攻撃した。指揮官の能力と部隊の士気で勝るフランス軍の勝利に終わり、ベルナドット率いるスウェーデン軍はエルベ川の東岸に追い出された。

連合軍の手番。損耗フェイズのダイス目は2。冬季なので3になる。損耗した兵力はなかった。
連合軍は兵力を結集してエルベ川に向けて進撃。ナポレオンの守るマグデブルグを攻撃する。全力で20戦力近い数を揃えて総攻撃を仕掛けてきた。しかしナポレオンの奮戦でフランス軍はマグデブルグ前面での攻勢を阻止した。なお、この戦いでフランス軍ヴィクトール将軍が負傷・退場していった。
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9Turn(1813年12月)

最終Turnである、フランス軍の手番。損耗フェイズのダイス目は5。冬季DRM+1が適用されるので修正後は6。フランス軍にとっては最悪の出目である。3戦力以上のスタックなら1戦力、6戦力以上のスタックなら騎兵を含む2戦力が昇天する。フランス軍は衛星国の分も含めて計6戦力を失った。
フランス軍は勝利条件を見据えた布陣を敷く。フランス軍にとって本シナリオの勝利条件は、「マップ3にある大都市を1個以上包囲されずに確保すること」とある。マップ3、すなわちドイツ一帯で1つでも大都市を保持すれば良い。フランス軍が目を付けたのは、西ドイツ、エルベ川西岸地区のカッセル。連合軍のスタックを見ると、2戦力以上ならオーバーランを食らう心配がないことがわかる(8戦力以上でスタックしているものはない)。そこで要所はカッセル周辺に2戦力と1戦力からなる5つの部隊を編制し、カッセルに隣接するヘクスにばら撒いた。カッセル周辺に展開したフランス軍の総兵力は8戦力(約4万)。その他の兵力を含めても総兵力は14戦力(イタリア方面除く)に過ぎなかった。これは正面に展開している連合軍兵力の約1/3に過ぎなかった。
対する連合軍。損耗フェイズのダイス目は4で、冬季修正適用後は5となる。連合軍は4戦力を失った。
連合軍は全線に渡って総攻撃を行う。兵力で劣るフランス軍は各所で圧倒され、多大な兵力を失った。しかしエルベ川の地形に拠り、また指揮官の能力に勝るフランス軍もまた善戦した。
結局連合軍はカッセルを取れなかった。勝利条件的にはフランス軍が勝利したことになる。しかし戦いが終わった時、西ヨーロッパに展開していたフランス軍の総兵力は僅か8戦力まで打ち減らされていた。
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結論にかえて

一連の戦いによる両軍の損害(戦闘、損耗、強行軍による)は以下の通りである。

フランス軍:正規兵64戦力、騎兵10戦力、親衛歩兵9戦力、親衛騎兵1戦力:合計84戦力

フランス衛星国軍:イタリア軍9戦力、ナポリ軍2戦力、バヴァリア軍5戦力、ライン同盟軍2戦力、サクソニー軍2戦力、ウェストファリア軍1戦力、ヴュルテンブルグ5戦力、デンマーク軍2戦力、ポーランド軍3戦力:合計31戦力

プロイセン軍:正規兵21戦力、騎兵2戦力、民兵10戦力、同盟国(ヘッセン)軍2戦力:合計35戦力

ロシア軍:正規兵27戦力、騎兵4戦力、親衛歩兵3戦力、親衛騎兵1戦力、コサック騎兵5戦力、同盟国(スウェーデン)軍4戦力:合計44戦力

オーストリア軍:正規兵7戦力、民兵7戦力、騎兵4戦力:合計18戦力

上記を合計すると、フランス軍は115戦力(約57.5万人)を失い、連合軍は97戦力(48.5万人)を失った。想像を絶する数である。

感想

今回、序盤は連合軍にとって苦しい展開となったが、その原因は序盤に勝利点と都市点をフランス軍に多く取られてしまったことにある。特に第1Turnに3個所の決戦に敗北し、ドレスデン、ライプチヒ、ベルリンといった拠点3個所を失ったのが痛かった。第6Turnの同盟フェイズで6の目を出してオーストリアの参戦を呼び込んだが、それがなかったらオーストリアの参戦を引き寄せることが最後までなかったかも知れない。
この戦いの後に振り返ってみたのだが、連合軍にとって第1Turnでのドレスデン、ライプチヒの陥落はほぼ不可避であると考える。そしてそれらの攻防戦で2点の勝利点をフランス軍に献上することもほぼ決定事項と言えよう。
しかし問題はベルリン攻防戦である。第1Turnにベルリンをフランス軍に明け渡す必要はないし、勝利点を与える必要もない。具体的言えば、ベルリンの周辺1ヘクスに3~4戦力からなるスタックで「壁」を作ってベルリンへのフランス軍の接近を阻止する。「壁」は1Turnしか持ちこたえられないが、フランス軍に勝利点を与えることはないし、ベルリンの占領も阻止できる。その結果、ベルリンとブレスラウは連合軍の手中に残るので、連合軍は都市点2点を手にする。フランス軍としてはベルリンに拘らず、Lubeckに集結している連合軍を叩いた方が有効であると感じる。これによってフランス軍は3点目の勝利点を獲得し、北方に対する連合軍の脅威を排除できるようになる。
この段階でフランス軍は勝利点3点、連合軍は都市点2点を獲得。DRMが-1なので、その状態を維持できればフランス衛星国の参戦が期待できる。しかし6月以降は同盟フェイズで連合軍に有利なDRMが適用される。そのためフランス衛星国の参戦は怪しくなる。2Turn以降は同盟フェイズで有利なDRMを得るため、都市点や勝利点を巡るフランスと連合軍との戦いが続くことになるだろう。
とまあ色々考えていると、このシナリオは結構バランス的にも面白く(連合軍が有利か)、かつ史実に近い展開になる面白いシナリオではないだろうか。

本作全体の感想だが、システム的にはシンプルで分かりやすい。テクニカルな面では、同盟ルールが適用される場合とされない場合(シナリオによっては同盟ルールを無視するものがある)で若干異なってくる。しかしそれも難しい内容ではない。要するに適度な「分進合撃」を心がけておけば良い。そういった意味では、本作はナポレオン戦争を扱った古典的な作品ながら、同時代の戦争をシンプルかつ的確に再現した良作だと評価できよう。

ただし損耗ルールがダイス一発で決まるのは如何なものかと思う。6の目を出して10戦力以上が瞬時に昇天したことには唖然とした。

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Photo by Wikipedia

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「War and Peace」(邦訳:戦争と平和、以下本作)は、1980年に米国のThe Avalon Hill Game Co(TAHGC)から発表されたナポレオン戦争を扱ったシミュレーションゲームである。デザイナーは、Mark McLaughlinで、本作以外では30年戦争を扱った"Holy Roman Empire"や、太平洋戦争キャンペーン"East Wind Rain"等のデザインでも知られている。
今回、本作をVASSALでソロプレイしてみることにした。選んだシナリオは「解放戦争」。一般には諸国民戦争とも呼ばれる1813年の戦いである。

前回まで-->こちら

シナリオV.解放戦争(承前)

4Turn(1813年7月)

フランス軍の手番。損耗フェイズのダイス目は4。6戦力以上スタックしているヘクスが損耗対象となる。フランス軍は衛星諸国2戦力を含む計3戦力を失う。
同盟フェイズは例によってスキップ。
増援フェイズ。マインツ(Mainz)に計22戦力(約11万)の大量増援が登場する。しかもそのうち6戦力は親衛隊だ。
移動フェイズ。フランス軍は戦線南方のドレスデン方面に兵力を集めつつ、戦線北方のベルリン方面では機動戦を展開する。オーバーラン攻撃によってプロイセン軍3戦力を撃破したフランス軍は、オーデル川河畔に陣取るブリュッヒャー将軍麾下のプロイセン軍4戦力を攻撃する。戦闘比は1-1だが、士気差によりフランス軍が有利な筈であった。そして結果は予想通りフランス軍の勝利。ブリュッヒャー軍はオーデル川から東に向けて撤退した。、

連合軍の手番。損耗フェイズ。出目は1。連合軍にとっては最良の目だ。16戦力以上のスタック又は補給切れで11戦力以上のスタックなら損耗が発生するが、そのようなヘクスはない。
同盟フェイズは例によってスキップ。
移動、戦闘フェイズ。ロシア軍の騎兵を中心とする部隊が、バルクレイ将軍とコンスタンティン将軍に率いられてベルリンとマグデブルグを急襲する。それを迎え撃つのは、フランス軍スールト将軍とウジェーヌ将軍。ロシア軍にとっては勝機のある戦いであったが、またもや戦闘のダイス目が振るわずにロシア軍は敗退し、ベルリン、マグデブルグはフランス軍ががっちりと抑えている。

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5Turn(1813年8月)

フランス軍の手番。損耗フェイズのダイス目は4。6戦力以上スタックしているヘクスが損耗対象となる。フランス軍は衛星諸国1戦力を含む計4戦力を失う。
同盟フェイズは例によってスキップ。
増援フェイズ。マインツ(Mainz)に計4戦力(約2万)の増援が登場する。
フランス軍は連合軍最後の要域ブレスラウ(Bresrau)に攻撃を加える。ネイ(Ney)将軍麾下の4戦力がプロイセン軍ヨルク将軍麾下の4戦力を攻撃。その後方からそれぞれナポレオン直率の10戦力とブリュッヒャー将軍麾下の5戦力が後詰として控える。
戦いはフランス軍優位に進んだが、増援に現れたナポレオン軍の士気が低かったのが裏目(同盟軍が大半であった)。彼らは一戦戦っただけで戦意を失った後退してしまう。かくしてフランス軍のブレスラウ攻略作戦は失敗に終わった。

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連合軍の手番。損耗フェイズ。出目は5。連合軍にとっては宜しくない目だ。しかし連合軍は兵力が少なかったため、失ったのはプロイセン軍1戦力で済んだ。
連合軍はベルリン方面に総攻撃をかける。プロイセンとロシアの合わせて20戦力(約10万)以上の戦力がベルリンに向けて殺到。スールト、ダヴー両将率いる計12戦力(約6万)のフランス軍と交戦する。兵力に勝る連合軍と兵の士気と指揮官の能力に勝るフランス軍の戦い。決着は連合軍の勝利。クライスト将軍麾下のプロイセン軍がベルリンに入城し、ベルリンは約3ヶ月ぶりにプロイセン軍の手中に帰した。
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6Turn(1813年9月)

フランス軍の手番。損耗フェイズのダイス目は1。フランス軍にとっては最良の出目である。フランス軍の損耗はなしだった。
同盟フェイズ。連合軍がベルリンを奪回したので、連合軍の都市点は2点になった(ベルリンとブレスラウ)。フランス軍は勝利点が3点あるが、シナリオ特別ルールでオーストリア参戦まではDRM+3がつくので、最終的なDRMは+2となる。修正後の出目が7以上ならオーストリアとスウェーデンが連合軍側に立って参戦することになる。
出目は6で修正後は8。これでオーストリアとスウェーデンの参戦が決まった。フランス軍としては一気に苦しくなる。
フランス軍はベルリンを奪回し、加えて同方面に集結しつつあるロシア軍に打撃を与えるため、主力部隊をベルリン方面に向かわせた。ナポレオン、ダヴー両将率いるフランス軍が総勢22戦力。さらに後詰としてスールト将軍率いる8戦力が待機。総兵力30戦力(約15万)でベルリン方面に攻勢を仕掛けた。連合軍はロシア軍のバルクレイ将軍、プロイセン軍ビューロー将軍らが率いる総戦力23戦力。兵力、士気、そして指揮官の能力のいずれの面でもフランス軍が有利。フランス軍の勝利は約束されていた筈であったが・・・。
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親衛隊を率いたナポレオン直率の部隊が、ロシア軍のバルクレイ将軍に大苦戦(出目が悪かった)。慌てて後方からスールト将軍麾下の増援部隊が増援に向かったが、これまたスールト将軍の到着が何故か遅れてしまう(アンタはグルーシーかい・・・)。結局ナポレオン軍はバルクレイ軍に敗れて後退。ナポレオンに勝利した連合軍は貴重な勝利点3点を獲得した。フランス軍としては、ダヴー将軍麾下の部隊がベルリンを奪回したのが唯一の慰めである。なお、プロイセン軍のクライスト将軍がこの戦いで負傷。戦場を退くことになる。

フランス軍としては、これまで決戦での出目が良かった分をここで取り返された感がある。 

連合軍の手番。損耗フェイズのダイス目は2。オーストリア軍の大スタックが解消していない状況なので、損耗ダイスの目が小さいのは連合軍としては有難い。
オーストリアが参戦したため、南部戦線で連合軍が攻勢に出た。ドレスデンに向けてはシュヴァッツェンベルグ公(Schwarzenberg)率いるオーストリア軍がロシア軍、プロイセン軍と共にドレスデンに侵攻する。連合軍の兵力は32戦力。その半数以上がオーストリア軍だ。
ドレスデン周辺に展開するフランス軍は20戦力弱。戦力に劣るフランス軍はそれでも奮戦したもののドレスデンを守り切れずに後退する。 さらにその南方では、オーストリア軍がイタリアやバヴァリアに侵攻、ミュンヘン、トリエステ等の都市を次々と占領していった。

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7Turn(1813年10月)

フランス軍の手番。損耗フェイズのダイス目は1。フランス軍にとっては(またもや)最良の出目である。フランス軍の損耗はなしだった。
同盟フェイズ。連合軍は都市点5、勝利点3。フランス軍は都市点1、勝利点3。その差はDRM+4で最大値だ。出目は5で修正後は8。フランス軍にとっては不幸な出目である。フランスの同盟国であったバヴァリア、ライン同盟、サクソニア、スイス、ヴュルテンブルクが離反し、連合軍側につく。幸か不幸か、これら同盟国の部隊はスイスを除いてこれまでの戦闘で概ね壊滅していたので、フランス軍の被った損害は最小限で済んだ。
なお、これによって以後同盟フェイズはなくなる。
フランス軍は3個軍を編成。それぞれナポレオン、ダヴー、スールトに指揮させる。ナポレオンはライプチヒの防衛、ダヴーはベルリン防衛、スールトは南方から来るオーストリア軍への対応だ。各部隊はそれぞれ正面の連合軍を撃破し、当面の任務は達成した。
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連合軍の手番。損耗フェイズのダイス目は2。損耗した兵力はなかった。
同盟フェイズについては、シナリオ特別ルールにより2回連合軍に有利なイベントが発生すると以後同盟フェイズはスキップする、となっている。
反攻に出たい連合軍ではあったが、連合軍側も決して潤沢な兵力を有している訳ではない。そこで全面攻勢は仕掛けず、部分的な攻勢作戦を実施した。目標はベルリン。フランス軍のダヴー将軍麾下の9戦力が守りを固めている。そこへシュヴァッツェンベルグ公率いるオーストリア軍計14戦力とバルクレイ将軍率いるロシア軍5戦力が共同で攻撃を仕掛けた。兵の質で優るフランス軍であったが、悪い目を出して士気阻喪してしまい、士気での優位が失われた。こうなってしまえば後はただの消耗戦になるので、長居は無用とばかりにフランス軍は撤退する。しかし無事戦場を離脱した時には、その兵力は当初の9戦力から5戦力に打ち減らされていた。さらにフランス軍にとって痛かったのは、フランス軍の名将ダヴー将軍が、戦闘中に負傷し後送を余儀なくされたことである。

本作では、戦闘に参加した指揮官は全員負傷チェックを強要される。そして6ゾロで負傷し、さらに1d6Turnお休みとなる。この時、負傷期間を決めるダイスで6を出すと戦死となる。つまり戦闘に参加したら216分の1(0.5%弱)で戦死となる訳だ。これはたとえ皇帝ナポレオンであっても例外ではない。最大120Turnのグランドキャンペーンシナリオの場合、ナポレオンが途中で戦死・退場の可能性は結構高い。
 
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(つづく)

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