もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 歴史

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241221_皇帝ナポレオン1

皇帝ナポレオン【1】

池田理代子 フェアベル

皇帝ナポレオン第1巻
「ベルサイユのばら」で有名な池田理代子氏の描いたナポレオンの漫画。実は私は氏の作品をこれまで読んだことがなく(少女漫画特有の異常に目玉が大きいキャラや、背後に花が咲きまくる演出に馴染めなかった)、ベルバラもタイトルしか知らないという有様。しかしナポレオンというテーマには興味があったので、読んでみた。この第1巻では、ナポレオンがヴァンデミエールの反乱鎮圧に出動する所から始まる。パリ市内の暴動に対して市街地で大砲を使うという異例の戦術で鎮圧したナポレオンは、以後ポール・バラスの片腕となる。
本書では、こういったナポレオンの活躍を描く一方、まるで昼ドラのようなナポレオンの色恋沙汰を「リアル」に描いている。本書によればナポレオンは「戦争には強いが女には弱い」如く描かれているが、このあたりを詳細に描いているのは女性作者らしい表現と言えるのかも。
続編を読むのが楽しみである。

お奨め度★★★


皇帝ナポレオン第1巻 ナポレオンの戦役(Les Batailles de Napoleon) ナポレオン フーシェ、タレーラン 情念戦争1789-1815 フランス革命 歴史における劇薬
Game Journal 89-フランス革命

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240705_銃病原菌鉄

銃・病原菌・鉄(上)

ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳 草思社文庫

人類の歴史をマクロな視点で捉えた著作。本書は現代世界における不均衡を生み出した歴史的要因について考察している。この上巻では、ヨーロッパ人と非ヨーロッパ人の違いを軸として、その差の原因としての農耕、家畜、病原菌等を考察している。そしてヨーロッパ人に勝利をもたらしたこれらの要因としてユーラシア大陸の地形的な特徴を取り上げている。
人類の歴史について新たな知見を与えてくれる著作である。

お奨め度★★★★

銃・病原菌・鉄(上)
銃・病原菌・鉄(下)
銃・病原菌・鉄(上) 銃・病原菌・鉄(下)

5
240705_サピエンス全史下

サピエンス全史(下)

ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳 河出書房

ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー本である。下巻では、宗教を語る所から始まる。宗教といえば一見人類の発展とは無関係に思えるが、筆者は宗教の存在こそがサピエンスを世界の覇者たらしめるとしている。神という名の「共通幻想」を人類が共有できたからこそ、大神殿を作ったり、統一国家を作ったりできたのだと。
そして人類は認知革命から科学革命へと進んでいく。「我々は全てを知っている」時代から「我々は何も知らない」時代に進んだことで我々は進歩という力を手に入れた。そして進歩は資本主義と結びつくことで科学は発展の方向を与えられたのだと筆者は言う。
科学革命により世界を支配した人類だが、それは果たして「善い」事だったのだろうか。筆者は必ずしもそうは考えていない。人類の発展は人類以外の動植物にとっては地獄の苦しみを与えただけではなく、人類そのものの幸福増進に必ずしも貢献しなかったと筆者は言う。
最後に筆者は未来の人類像に触れている。未来の姿はSF作品に描かれているような「我々と同じような思考をする人々が光速宇宙船やレーザーガンで武装した世界ではないかもしれない」と筆者は言う。23世紀初頭の地球にはアナライザーはいる可能性が高いが、ひょっとしたら古代進も森雪もいないかもしれない。

お奨め度★★★★★

サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
漫画 サピエンス全史 人類の誕生編
漫画 サピエンス全史 文明の正体編

5
240701_サピエンス全史上

サピエンス全史(上) 

ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳 河出書房

以前にも紹介したが、本書は人類(サピエンス)が世界の覇者になれたのか、そしてサピエンスの歴史を独自の視点で描き、分析した著作である。この上巻では、サピエンスが人類種の王者として君臨することになった歴史と理由を分析し、さらにサピエンスの歴史を協力、貨幣、そして帝国という視点から分析している。貨幣や帝国といえば、我々はどちらかといえば負のイメージを抱くが、筆者は貨幣と帝国に代表されるサピエンスの「共通幻想」こそがサピエンスの発展を促したとしている。

お奨め度★★★★★

サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
漫画 サピエンス全史 人類の誕生編
漫画 サピエンス全史 文明の正体編

240519_アメリカミリシア

暴力とポピュリズムのアメリカ史

中野博文 岩波新書

ミリシア、またの名を民兵。本書はミリシアと呼ばれるアメリカ独特の軍事組織について、その歴史と現状、そしてミリシアが引き起こす弊害について記した著作である。ミリシアは、民兵といっても正規の軍事組織である州兵(National Guard)とは全く別組織であり、本書で扱うミリシアは民間人が政府機関とは無関係に組織した武装組織である。日本とは違って米国では憲法によって民間人の武装が認められており、それがミリシアが成立している根拠であるとしている。
本書のスタートは、2021年度の米議会襲撃事件で、その中心的な役割を果たしたのがミリシアとしている。本書はそこからトランプ批判やミリシア批判と続き、そしてアメリカ独立戦争から始まるミリシアの発展と変遷について触れている。そしてWW2とその後の冷戦時代に続くミリシアについて触れ、最後に21世紀におけるミリシアに戻ってくる。
序盤の過度とも思えるトランプ批判が少し気になる所だが、全般的には中立的で冷静な筆致であり、ミリシアというアメリカ独特の仕組みについて理解を深めることができた。

お奨め度★★★

暴力とポピュリズムのアメリカ史 ミリシアがもたらす分断 (岩波新書)

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