暴力とポピュリズムのアメリカ史
中野博文 岩波新書
ミリシア、またの名を民兵。本書はミリシアと呼ばれるアメリカ独特の軍事組織について、その歴史と現状、そしてミリシアが引き起こす弊害について記した著作である。ミリシアは、民兵といっても正規の軍事組織である州兵(National Guard)とは全く別組織であり、本書で扱うミリシアは民間人が政府機関とは無関係に組織した武装組織である。日本とは違って米国では憲法によって民間人の武装が認められており、それがミリシアが成立している根拠であるとしている。
本書のスタートは、2021年度の米議会襲撃事件で、その中心的な役割を果たしたのがミリシアとしている。本書はそこからトランプ批判やミリシア批判と続き、そしてアメリカ独立戦争から始まるミリシアの発展と変遷について触れている。そしてWW2とその後の冷戦時代に続くミリシアについて触れ、最後に21世紀におけるミリシアに戻ってくる。
序盤の過度とも思えるトランプ批判が少し気になる所だが、全般的には中立的で冷静な筆致であり、ミリシアというアメリカ独特の仕組みについて理解を深めることができた。
お奨め度★★★
暴力とポピュリズムのアメリカ史 ミリシアがもたらす分断 (岩波新書)
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