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書籍紹介「週刊三国志(1)」
週刊三国志(1)
吉川英治・浅科 准平 (ナレーション) オトバンク

Amazon Audible専門の三国志コンテンツ。吉川英治氏の著作を元に三国志の世界を再現する。Audible専門のコンテンツなので、その特徴が生かされていて、多彩なBGMやラジオドラマ仕立ての背景音などは他のAudible作品とは一線を画している。この第1巻では、主人公劉備玄徳が貧乏暮らしをしながら当時は高価であった茶を入手し、母の元に帰る途中で様々な苦難に出会う様。さらには黄巾の乱や張飛や関羽との出会い、桃園の誓いを経て旗揚げする所もまでを描いている。次回予告編やこれまでのあらすじなどもあってやや冗長な感があるが、大変面白い。続きが楽しみだ
お奨め度★★★











書籍紹介「私本・太平記」
私本・太平記
吉川英治

戦前の史観では「大悪人」とされていた足利尊氏を主人公とした長編歴史小説である。足利尊氏以外にも、足利直義、高師直、佐々木道誉、赤松円心ら北朝側人物、後醍醐天皇を初め、日野俊基、楠木正成、新田義貞、護良親王、北畠顕家等の南朝側人物、さらには北条高時、赤橋守時ら鎌倉方の人物、吉田兼好、覚一法師といった民間人等も登場し、一大絵巻の如き様相である。これだけ登場人物が多いながらも読んでいて混乱しなくて読めるのは、さすがは吉川英治だと思えてしまう。
ストーリーは、若き日の高氏(尊氏)がお側役の一色馬之介を伴って京都にお忍びで旅行に来た所からスタートする。そこで彼は日野俊基や佐々木道誉といった彼の後の人生に大きく関わる人達と出会う。鎌倉に戻った高氏は、北条政権の下で密かに討幕の機会を伺う。やがて正中の変、元弘の変等の討幕運動を経て楠木正成が千早城で挙兵。それを鎮圧すべく鎌倉から大量の兵力が送られるが、正成の巧みな防戦によって千早城を落とすことができない。やがて幕府方の足利高氏、新田義貞らの寝返りによって鎌倉幕府は滅亡。北条高時や赤松守時も命を落とす。
その後は建武新政とその失敗を経て足利尊氏が再び朝廷から寝返った。楠木、北畠らの奮戦によって尊氏は一度は九州へ落ちのびたが、九州で兵力を再編成して再び東へ向かう。湊川の戦いで楠木正成が戦死。後醍醐天皇も京都を追われて、それから・・・。
かなり長編なので読み通すのは結構大変だが、その長さを感じないほど面白い。現在でも一級の面白さを持つ歴史小説と言えよう。
ちなみに本書を読んだ後、無性に「太平記」がプレイしたくなった。
お奨め度★★★★










書籍紹介「皇帝ナポレオン【1】」

皇帝ナポレオン【1】
池田理代子 フェアベル

「ベルサイユのばら」で有名な池田理代子氏の描いたナポレオンの漫画。実は私は氏の作品をこれまで読んだことがなく(少女漫画特有の異常に目玉が大きいキャラや、背後に花が咲きまくる演出に馴染めなかった)、ベルバラもタイトルしか知らないという有様。しかしナポレオンというテーマには興味があったので、読んでみた。この第1巻では、ナポレオンがヴァンデミエールの反乱鎮圧に出動する所から始まる。パリ市内の暴動に対して市街地で大砲を使うという異例の戦術で鎮圧したナポレオンは、以後ポール・バラスの片腕となる。
本書では、こういったナポレオンの活躍を描く一方、まるで昼ドラのようなナポレオンの色恋沙汰を「リアル」に描いている。本書によればナポレオンは「戦争には強いが女には弱い」如く描かれているが、このあたりを詳細に描いているのは女性作者らしい表現と言えるのかも。
続編を読むのが楽しみである。
お奨め度★★★








書籍紹介「銃・病原菌・鉄(上)」
銃・病原菌・鉄(上)
ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳 草思社文庫
人類の歴史をマクロな視点で捉えた著作。本書は現代世界における不均衡を生み出した歴史的要因について考察している。この上巻では、ヨーロッパ人と非ヨーロッパ人の違いを軸として、その差の原因としての農耕、家畜、病原菌等を考察している。そしてヨーロッパ人に勝利をもたらしたこれらの要因としてユーラシア大陸の地形的な特徴を取り上げている。
人類の歴史について新たな知見を与えてくれる著作である。