もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 歴史

4
240705_銃病原菌鉄

銃・病原菌・鉄(上)

ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳 草思社文庫

人類の歴史をマクロな視点で捉えた著作。本書は現代世界における不均衡を生み出した歴史的要因について考察している。この上巻では、ヨーロッパ人と非ヨーロッパ人の違いを軸として、その差の原因としての農耕、家畜、病原菌等を考察している。そしてヨーロッパ人に勝利をもたらしたこれらの要因としてユーラシア大陸の地形的な特徴を取り上げている。
人類の歴史について新たな知見を与えてくれる著作である。

お奨め度★★★★

銃・病原菌・鉄(上)
銃・病原菌・鉄(下)
銃・病原菌・鉄(上) 銃・病原菌・鉄(下)

5
240705_サピエンス全史下

サピエンス全史(下)

ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳 河出書房

サピエンス全史(下)
ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー本である。下巻では、宗教を語る所から始まる。宗教といえば一見人類の発展とは無関係に思えるが、筆者は宗教の存在こそがサピエンスを世界の覇者たらしめるとしている。神という名の「共通幻想」を人類が共有できたからこそ、大神殿を作ったり、統一国家を作ったりできたのだと。
そして人類は認知革命から科学革命へと進んでいく。「我々は全てを知っている」時代から「我々は何も知らない」時代に進んだことで我々は進歩という力を手に入れた。そして進歩は資本主義と結びつくことで科学は発展の方向を与えられたのだと筆者は言う。
科学革命により世界を支配した人類だが、それは果たして「善い」事だったのだろうか。筆者は必ずしもそうは考えていない。人類の発展は人類以外の動植物にとっては地獄の苦しみを与えただけではなく、人類そのものの幸福増進に必ずしも貢献しなかったと筆者は言う。
最後に筆者は未来の人類像に触れている。未来の姿はSF作品に描かれているような「我々と同じような思考をする人々が光速宇宙船やレーザーガンで武装した世界ではないかもしれない」と筆者は言う。23世紀初頭の地球にはアナライザーはいる可能性が高いが、ひょっとしたら古代進も森雪もいないかもしれない。

お奨め度★★★★★

サピエンス全史(上) サピエンス全史(下) ホモ・デウス(上) ホモ・デウス(下)
サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
漫画 サピエンス全史 人類の誕生編
漫画 サピエンス全史 文明の正体編

5
240701_サピエンス全史上

サピエンス全史(上) 

ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳 河出書房

サピエンス全史(上)
以前にも紹介したが、本書は人類(サピエンス)が世界の覇者になれたのか、そしてサピエンスの歴史を独自の視点で描き、分析した著作である。この上巻では、サピエンスが人類種の王者として君臨することになった歴史と理由を分析し、さらにサピエンスの歴史を協力、貨幣、そして帝国という視点から分析している。貨幣や帝国といえば、我々はどちらかといえば負のイメージを抱くが、筆者は貨幣と帝国に代表されるサピエンスの「共通幻想」こそがサピエンスの発展を促したとしている。

お奨め度★★★★★

サピエンス全史(上) サピエンス全史(下) ホモ・デウス(上) ホモ・デウス(下)
サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)
漫画 サピエンス全史 人類の誕生編
漫画 サピエンス全史 文明の正体編

240519_アメリカミリシア

暴力とポピュリズムのアメリカ史

中野博文 岩波新書

ミリシア、またの名を民兵。本書はミリシアと呼ばれるアメリカ独特の軍事組織について、その歴史と現状、そしてミリシアが引き起こす弊害について記した著作である。ミリシアは、民兵といっても正規の軍事組織である州兵(National Guard)とは全く別組織であり、本書で扱うミリシアは民間人が政府機関とは無関係に組織した武装組織である。日本とは違って米国では憲法によって民間人の武装が認められており、それがミリシアが成立している根拠であるとしている。
本書のスタートは、2021年度の米議会襲撃事件で、その中心的な役割を果たしたのがミリシアとしている。本書はそこからトランプ批判やミリシア批判と続き、そしてアメリカ独立戦争から始まるミリシアの発展と変遷について触れている。そしてWW2とその後の冷戦時代に続くミリシアについて触れ、最後に21世紀におけるミリシアに戻ってくる。
序盤の過度とも思えるトランプ批判が少し気になる所だが、全般的には中立的で冷静な筆致であり、ミリシアというアメリカ独特の仕組みについて理解を深めることができた。

お奨め度★★★

暴力とポピュリズムのアメリカ史 ミリシアがもたらす分断 (岩波新書)

240318_ローマ人の物語

ローマ人の物語2-ハンニバル戦記

塩野七生 新潮社

ローマ人の物語全体については以前に紹介したと思うが、今回改めて第2巻を読み返してみた。こういう長編は全部を読み通そうとすると「楽しみ」というよりも「作業」に近いものとなってしまい、純粋に読書を楽しむことができない場合がある。その点、今回のように「つまみ食い」してみると、妙な義務感から解放されて純粋に読書を楽しむことができるように思える。
この第2巻はタイトル通り「ハンニバル戦争」と呼ばれる第2次ポエニ戦争がメインである。ポエニ戦争とは、ローマとカルタゴが地中海の覇権をかけて3度に渡って戦った全面戦争である。特に第2次ポエニ戦争は、「ハンニバル戦争」との呼称で分かる通り、カルタゴの生んだ伝説的戦略家であるハンニバルが共和制ローマを存亡の淵まで追いやった戦いでもあった。世界戦史上名高いカンネーの戦いは、第2次ポエニ戦争の最中に起こっている。
今回本書を改めて読んでみた理由は、名作ゲームとして名高い「ハンニバル」をプレイするに際し、当時の歴史状況を確認しておきたかったためである。そして本書はその期待に十二分に答えてくれた。本書は、ハンニバルやスピキオといった両陣営の諸将たちが戦場でどのように振舞ったかについて克明に記載さているが、それだけではない。本書はポエニ戦争を巡る全般的な動きやマケドニア、ギリシアと言った諸外国の動きにも目を向けつつ、ローマが滅亡の淵から蘇りそして遂にカルタゴを滅亡に追い込むまでの過程が立体的に描かれている。日本人にはあまり馴染みのなかったローマ史を日本でメジャーテーマ化した筆者の力量には感嘆せざるを得ない。

お奨め度★★★★

ハンニバル戦記──ローマ人の物語[電子版]II
ハンニバル戦争 (中公文庫)

↑このページのトップヘ