BAORは(以下、本作)、米国GMT社が2018年に出版したシミュレーションゲームである。本作は同じGMT社が出版したMBTの拡張キットであり、英国軍のユニット/データと英国軍が登場するシナリオが追加されている。ちなみにBAORの元々の意味は、British Army of the Rhine(英陸軍ライン軍団)のことであり、NATO軍の一部として英陸軍が欧州に派遣した地上部隊であることは、常識に属する知識だろう。
今回、その中からシナリオS22「Initial Strike PL.2」をプレイしてみた。このシナリオは、本作の練習用シナリオという位置づけに近いシナリオで、戦車と少数の支援部隊を伴う英ソの機甲部隊同士が遭遇戦を繰り広げるという内容である。下名は英軍を担当した。ちなみに例の新型コロナウィルスの影響もあって、今回の対戦はVASSALによる通信対戦である。
両軍の編成を見てみよう。英軍の主力はチーフテンMk.11戦車が7両の他、歩兵、FV412兵員輸送車、スパルタンMCT対戦車車両が2両、スコーピオン騎兵戦闘車2両である。チーフテンの他は、対戦車ミサイル装備のスパルタンと76mm砲装備のスコーピオンがある程度使えそう。スコーピオンなどは狭隘な地形で敵の対戦車ミサイル車両を刈り取りするのに使えそうだ。
ソ連側はT-62MV戦車が8両、BRDM-2偵察車6両(うち対戦車ミサイル装備が2両)、BTR-70兵員輸送車、歩兵である。T-62MV以外では、対戦車ミサイル搭載のBRDM-2が使えそうだが、その他の車両はいずれも機銃装備のみなので機甲部隊同士の戦闘では役に立つ存在ではなさそうだ。
結果については簡単に記そう。第2Turnまでに前線展開を終えた両軍戦車部隊は第3Turnに本格的な戦車戦を展開。距離13~22Hex(1300~2200m)での英ソ両軍の撃ち合いは、ソ連軍戦車6両撃破、英軍損害皆無ということで英軍の圧勝に終わった。まあ主導権ダイスの影響が大きいゲームで、決勝点で主導権を確保した英軍が勝ったという、いわば「運のし」勝利の典型である。
結果は一方的な内容であったが、シナリオを流す過程で色々と面白いことが見えてきた。例えばチーフテン。一般に重装甲と言われるチーフテン戦車だが、本作での評価はすごぶる低い。より新型のチャレンジャーに及ばないのは当然としても、肝心の装甲防御に致命的な欠陥があるのだ。複合装甲や反応装甲を備えていないため、比較的旧式の対戦車ミサイルにも耐えられないことが明らかになった。特にソ連にT-62MVは、滑腔砲から対戦車ミサイルを発射可能であり、これを食らえばチャレンジャーは十中八九お陀仏である。今回は先手を取ってT-62MVBを撃破できたので損害を出さずに済んだが、主導権ダイスの出目が逆ならチーフテンが対戦車ミサイルの集中攻撃を受けて壊滅していたことはほぼ疑いない。
チーフテンに比べると、T-62MVはより進化した戦車といえる。その装甲防御はチーフテンに劣るが、車体サイズが小さいために被弾率が低く抑えられている。また反応装甲を備えているため、HEAT弾や対戦車ミサイルに対する耐性にも優れている。さらに主砲からは徹甲弾の他に対戦車ミサイルも発射可能なので、チーフテンとの戦いではあらゆる距離で同等又は優位に戦える。
今回の練習でVASSALによる対戦、BAORの特性などを学ぶことができた。次はより本格的なシナリオに挑戦したい。
MBT: The Game of tank-to-tank combat in 1987 Germany
MBT-FRG
MBT-BAOR
JグランドEX世界の戦車全戦力ガイド