もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 1946年以降

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ウクライナ戦争航空戦2022.2-2023.8

ミハイル・ジロホフ 宮永忠将訳 イカロス出版

ウクライナ戦争航空戦
タイトル通りウクライナ戦争の航空戦を、戦争開始の2022年2月から翌年8月までの区間に区切って日記風に記したものである。筆者の個人的な主観を押さえて事実と思われる事象を淡々と期しているだけだが、それだけに迫力に富んでいる。ウクライナ戦争における航空戦が、ハイテク戦争のイメージとは裏腹に泥臭いものであることが如実にわかる内容だ。個々の戦闘場面についての記述はあまり多くはなく、どちらかと言えば統計的な内容になっている。ウクライナ軍によるミサイル迎撃率の高さが驚異的な数値だが、実際の撃墜率がどの程度であったのかは今後の研究に期待したい。また西側からの供与兵器が実戦に与えた影響(ストームシャドーや各種地対空システム、HARM、F-16など)も興味深い。

お奨め度★★★★



ウクライナ戦争航空戦 ウクライナ戦争 図解 戦闘機の戦い方 航空戦 シリーズ戦争学入門

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ウクライナ戦争

小泉悠 筑摩書房

ウクライナ戦争
2022年2月に始まったウクライナ戦争について、開戦前から2022年9月までの露宇両国と世界各国の動きを中心に追った著作である。戦争開始から数ヶ月という(今から思えば)序盤戦の動きだけを追っただけだが、あれから殆ど戦線が動いていないことに驚く。本書はあくまでも巨視的な視点で戦争を描いているので、個々人の英雄的な働きや兵器の云々といった話は殆ど出てこない。細かい部分ではなく、ウクライナ戦争の全体像を知るには良い著作と思える。

お奨め度★★★



ウクライナ戦争 ウクライナ戦争航空戦 戦争にチャンスを与えよ 戦略の格言

3
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現代砲兵-装備と戦術

古峰文三 イカロス出版

WW2以降の冷戦期からポスト冷戦期、そして21世紀における砲兵の装備と戦術について解説した著作である。砲兵という地味なテーマながら一般の読者にもわかりやすく解説している。扱っている範囲は、いわゆる「砲兵」の範疇に含まれる牽引式野砲や自走砲。さらに範囲を広げて対空砲やRPG-7、ジャベリン、AC-130ガンシップにも筆が及んでいる。さらには砲兵から見たウクライナ戦争の記述は、21世紀における大規模正規戦で砲兵の果たす役割を端的に記している。
専門書ではないのでこの本自体に資料性価値はあまりないが、現代戦における砲兵の機能や役割について理解するには良い著作である。より深く学習したい向きは、巻末の参考文献を参照すればよい。

お奨め度★★★

現代砲兵-装備と戦術 「砲兵」から見た世界大戦 幻の東部戦線
航空戦史-航空戦から読み解く世界大戦史 ドイツ駆逐戦車 日の丸の轍

現代砲兵-装備と戦術
「砲兵」から見た世界大戦
幻の東部戦線
航空戦史-航空戦から読み解く世界大戦史
ドイツ駆逐戦車
日の丸の轍

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第4次中東戦争は、1973年10月6日から10月25日までの間に行われた戦争です。この戦争はエジプトとシリアが中心となって、イスラエルに対して奇襲攻撃を仕掛けたことから始まりました。戦争はユダヤ教の最も神聖な日であるヨム・キプールの日に開始され、イスラエル軍は最初の数日間で大きな損失を被りました。
序盤に苦戦を強いられたイスラエル軍でしたが、態勢を立て直したイスラエルは最終的に反撃し、戦線を押し戻しました。

Valley of Tearsは、2023年に米国MMP Games社から発売されたシミュレーション・ウォーゲームです。本作のテーマは第4次中東戦争における地上戦闘で、1Turn=1日、1Hex=1マイル、1ユニット=中隊~大隊というスケールで第4次中東戦争全般を再現します。

今回、このValley of Tearsをプレイしてみたので、その内容を動画化しました。
ご視聴頂ければ幸いです。



写真00


Twilight Struggle(以下、本作)は、米GMT社が2005年に発売したシミュレーションゲームだ。本作は、WW2終了直後から1989年冷戦終結までの約30年間にわたる約半世紀の冷戦時代を扱う。全10Turnなので、1Turnは実際の4~5年間に相当する。プレイヤーは米ソそれぞれの首脳を演じる。2014年には完全日本語版も発売されており、日本でもプレイし易くなった。
本作のシステムについては、 以前の記事 で紹介しているので、そちらを参照されたい。

今回は、本作を対戦してみた。筆者はアメリカ陣営を担当する。以下はその記録である。

前回の展開は、--> こちら

5Turn(1961~1964年)

Card107 ヘッドラインはアメリカが「中ソ国境紛争」、ソ連が「チェ・ゲバラ」を使ってきた。アメリカは「中ソ国境紛争」を使ってインドとタイのソ連支配を突き崩した。一方ソ連は「チェ・ゲバラ」を使ってコロンビアの親米政権をクーデターで打倒。さらにパナマでクーデターを起こしてソ連の支配権を広げてきた。
アメリカはこの機会にアジアにおける優位を占めたいと考え、「中国」カードを使ってインドの支配を確立した。さらにタイもアメリカが支配し、アメリカはアジアにおける優位をほぼ確立した。

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6Turn(1965~1969年)

Card011ヘッドラインは、アメリカが「ケンブリッジ・ファイブ」、ソ連が「朝鮮戦争」。しかしいずれのカードも条件が揃わないとか、ダイス目が悪いとかで効果なし。

ソ連は、中東におけるアメリカの支配を崩さんとイランでクーデターを試みて、イランからアメリカの影響を排除することに成功した。一方のアメリカは、エジプトのサダト大統領を使ってエジプトからソ連の影響力を排除し、新型戦闘機(当時だとF-4ファントムか?)をエジプトに輸出してエジプトへの影響力を強めていく。さらにアメリカは隣国リビアにも浸透していく。

その間、ソ連は北東アジアで攻勢を強め、韓国で親ソ政権樹立に成功。さらに極東におけるアメリカの牙城であった日本にも進出してアメリカの支配を崩していく。韓国はとにかく、日本を失う訳にはいかないアメリカとしては、積極的に日本へコミットしていき、ソ連影響力の排除を図っていく。

写真06


7Turn(1970~1974年)

このTurnは、まず宇宙開発で動きがあった。月面探査を進めているソ連は、遂に初の有人月面着陸に成功したのである。史実とはことなり、「月に小さな一歩」を記したのは、アメリカ人ではなくロシア人となった。

Card068アメリカは「ヨハネ・パウロ2世の教皇選出」カードを使い、ソ連にとっては絶対防衛線ともいうべきポーランドにおけるソ連側支配を崩していく。

このTurn、ソ連は「欧州の特点獲得」カードと「中東の特点獲得」カードを引いて来たので、これを使わざるを得ない羽目になった。いずれもアメリカが有利な地歩を占めており、これらのカードの使用は、アメリカの得点をさらに加算することになった。結局Turnの終わりごろには、アメリカの勝利得点は18点に達し、アメリカのサドンデス勝利が目前となった。
そしてTurn終了時、このTurnにおけるソ連側の軍事行動不足が明らかとなり、それによってさらにアメリカが2点を獲得したため、この時点でアメリカの勝利が確定した。

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感想

プレイ時間は2時間弱。今回は途中までのプレイだったけど、最終Turnまでプレイしても3時間とかからないだろう。たった3時間足らずで戦後の世界史を再体験できる本作はやはり素晴らしい作品である。Board Game Geekで長らく一番人気だったのも頷ける話だ。
このゲーム、慣れないうちには何をして良いのかわからないことがある。特に初心者が熟練者を相手にした場合、何をしているのかわからない間に負けていたりすることが多い。かくいう私も本作を最初に2回ほどプレイした時には、わけのわからない間にサドンデス負けを食らっていて、一体このゲームの何が面白いのかサッパリ理解できなかった。
そういった意味では、もし初心者が最初に本作をプレイする際には、可能な限り実力の拮抗した相手とプレイするのが望ましいと考える(あるいは、インストが超絶上手いベテランゲーマーが相手でも良い思うけど、筆者個人の体験から言えば「インストが上手いベテランゲーマー」とやらにこれまでに一度も出会ったことはない)。

いずれにしてもプレイ時間も短いし、その気になれば1日に何度もプレイできる。メインシナリオだけではなく終盤戦シナリオも興味深いものがあるので、機会があれば再戦したい作品である

写真08_Saigon





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