カテゴリ: 世界の軍隊
書籍紹介「パンツァーフォー」
パンツァーフォー
カール・アルマン著/富岡吉勝訳 大日本絵画
「パンツァーフォー」(戦車隊、前へ)、某アニメで一躍有名になったこのセリフを冠した本著は、WW2におけるドイツ戦車部隊の活躍を、戦いに参加した個々人の視点から再現したものである。本書では一兵士から将官クラスまで計15名が取り上げられ、その中には有名な「バルクマン曹長」や「オットー・カリウス中尉」などが取り上げられており、登場する車両もパンターやティーガーといった有名どころは勿論、3号戦車や4号戦車、ホルニッセ(ナスホルン)自走砲や4号駆逐戦車、さらには恐怖の重駆逐戦車ヤークトティーガーまでもが登場してくる。ちなみに扱っている戦場は殆どが東部戦線で、一部に西部戦線も出てくる。
ドイツ側の視点から書かれた著作なので実際の戦果などは怪しい部分もあるが、戦車好きなら楽しめる内容なのではないだろうか。
お奨め度★★★
書籍紹介「世界の艦船5月増刊-イタリア海軍史」
世界の艦船5月増刊-イタリア海軍史
海人者
本増刊号は、近年の『世界の艦船』誌においても珍しい、イタリア海軍をテーマとした特集号である。冒頭に配されたカラーグラビアでは、現代イタリア海軍の艦艇を豊富な写真で紹介しており、視覚的にも非常に充実している。写真の構成は単なる艦影の紹介にとどまらず、艦上のディテールや艦隊運用の様子にも触れられており、読者の興味を強く引きつける。
本文の内容は、主に過去に『世界の艦船』誌に掲載された特集記事を再編集・再録したものであり、書き下ろしの新規原稿は限定的である。そのため、既に同誌を長年購読している読者にとっては、既視感のある記事も少なくない。しかしながら、それらの記事を一冊に集約することで、19世紀後半のイタリア統一に始まる近代イタリア海軍の歩みを、体系的に追うことができる点は評価に値する。
内容は、旧王国海軍から第一次・第二次世界大戦期の活動、そして戦後の再建とNATO加盟、冷戦期を経て現代の多国間協力体制に至るまで、約150年にわたる海軍の変遷を多角的に描いている。特に第二次世界大戦期における戦艦の整備方針や迷彩塗装の解説、戦後フリゲートや空母の配備経緯に関する技術的分析などは、軍事史に興味のある読者にとっては読みごたえがある。
一方で、構成全体としては再録記事に依拠する比重が高いため、内容面において新鮮味を欠くことは否めない。情報としては精緻であるが、最新の研究成果や近年の艦艇動向についての記述が少なく、現代海軍の展望に関する記述も限定的である。そのため、既存の知識に上乗せされる新情報を求める読者にはやや物足りなさが残るであろう。
総じて、イタリア海軍というややマイナーなテーマを、これだけの分量と質で総覧できる意義は大きく、資料的価値は高い一冊である。歴史的俯瞰を得たい読者や、艦艇写真を楽しみたい読者にとっては、有用な増刊号であるといえる。
お奨め度★★★
書籍紹介「グランドパワー1995年11月号別冊」
書籍紹介「Aircraft Carrier Victorious」
Aircraft Carrier Victorious
David Hobbs Seaforth Publishing
英海軍空母「ヴィクトリアス」。WW2時には英海軍最新鋭の装甲空母として数々の戦いで武功を挙げ、戦後は2度に渡って改造を受けてジェット機時代にも対応し、1968年に退役するまで複葉のソードフィッシュからジェット艦載機のバッカニア攻撃機まで、様々な航空機を運用した。
本書は「ヴィクトリアス」の艦内図面を分析し、新造時の状況からジェット化対応後、さらに1960年代の改装後までの同艦の内部を細かく解説している。本書には「ヴィクトリアス」の断面図が数多く掲載され、それを読み解くのは結構厳しい。特にKindle版では、図面の詳細な部分が粗くスキャンされてしまっているので、重要な部分が読めなくなっている。本書をしっかりと読みたい方は、Kindle版ではなく紙版の入手した方が良い。
英空母の研究家にとっては有益な内容だが、それ以外の人にとってはあまり価値のない著作と言える。
お奨め度★★★

















