もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 世界の軍隊

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零の帰還

滝澤聖峰 双葉社

零の帰還 本書は気負わず読める短編集でありながら、どの作品にも戦場の緊張感と人間の弱さがしっかり刻まれていて、読み終える と静かな余韻が残る一冊だった。太平洋戦争の航空戦を題材にしているが、いわゆる「日本軍礼賛」の戦記ものとは一線を画している。むしろ、日本軍の組織的な弱さや無謀さ、現場の兵士たちのやりきれなさが丁寧に描かれており、その誠実さに好感を持った。
短編形式のため、ひとつひとつの物語はコンパクトだが、どの話にも「生きて帰れない戦場」に置かれた人間のリアルな感情がにじむ。英雄的な活躍よりも、消耗していく兵士たちの姿や、戦争の理不尽さが静かに描かれている点が印象的だった。派手さはないが、その分だけ地に足のついた戦争描写が胸に残る。
気軽に読み進められるのに、読み終えると戦争の現実や人間の弱さについて考えさせられる。短編集としての手軽さと、戦記作品としての誠実さがうまく両立した作品だと感じた。

お薦め度★★★

零の帰還 シャーズパイロット 明けの彗星 飛燕独立戦闘隊
黒騎士物語 武器と爆薬[悪夢のメカニズム図解] ヴィットマン戦記1943 バトル・オーバー北海道


歴史群像2026年6月号

学研

2025年6月号:特集-長門型戦艦 冒頭のイラク軍モザイク防御に関する記事は強烈であった。現在進行形のイラン戦争について、有坂純氏が鋭く分析している。ただし、やや理論が先行しすぎている感もあり、今後のイラン情勢を注目したい。
特集は「長門型戦艦」。戦前は日本を代表する戦艦であった「長門」「陸奥」の2艦について、その建造経緯、戦中期における位置づけ、戦時における活躍、そしてその最期などを記した内容である。
今回一番面白かったのが、第2特集の「独ソ重戦車開発競争」。一見時代錯誤で迷走しているように見える多砲塔戦車や「夢の超兵器」的な扱われ方をしているドイツのマウスがEシリーズなどについて興味深い記述に溢れている。
その他、四境戦争、Sボートなど、読みどころが多かった。

お薦め度★★★

2025年6月号:特集-長門型戦艦 2025年4月号:特集-アルデンヌ1944 2025年2月号:特集-日米戦艦徹底比較 2025年12月号:特集-鋼鉄の進化論
MILITARY CLASSICS-Vol93:特集-シャルンホルスト級戦艦 MILITARY CLASSICS-Vol92:特集-1式陸攻 丸2026年6月号-四式重爆飛龍 丸2026年5月号-駆逐艦「綾波」


Military Classics Vol.93

イカロス出版

-Vol93:特集-シャルンホルスト級戦艦 特集は「シャルンホルスト級戦艦」。実質的にWW2ドイツ海軍の主力戦艦であった同級をミリクラ標準フォーマットで解説している。高速力と重防御を併せ持つといわれる本級だが、装甲防御力が意外に弱く、主砲の威力不足が足かせとなったとされている。実戦での活躍についてもノルウェー沖海戦やベルリン作戦では成果を上げたものの、その後は鳴かず飛ばず。北欧沖海戦では、同じ新鋭戦艦であるキングジョージV級に一方的にボコられるというやや悲しい展開。本書ではそういったシャルンホルスト級の強みと弱みを公平な視点で描いている。
第2特集は「M26パーシング」。本誌には珍しい連合軍特集だが、そういえば最近ネルソン級戦艦の特集もあったなぁ・・・。M26とティーガー/パンター との比較、朝鮮戦争での活躍など、興味深い記述が多かった。個人的にはもっと連合軍特集を増やしてほしいと思う。 連載記事では「砲兵から見た戦後史」「ストライク・フロム・ザ・シー」「海外から太平洋戦争海戦史」が面白い。

お薦め度★★★

-Vol93:特集-シャルンホルスト級戦艦 -Vol92:特集-1式陸攻 -Vol91:特集-VI号戦車B型ティーガーII -Vol90:特集-「雪風」と陽炎型駆逐艦
2025年6月号:特集-長門型戦艦 2025年4月号:特集-アルデンヌ1944 丸2026年6月号-四式重爆飛龍 丸2026年5月号-駆逐艦「綾波」


J-Wings 2026年4月

イカロス出版

J-Wings 2026年4月:ベネゼエラ強襲と米軍特殊航空部隊 少し軽めの航空雑誌J-Wings。今回の特集は、ベネズエラ強襲と米軍特殊航空部隊。2026年新年早々に実施された米軍によるベネズエラ侵攻をテーマとしつつも、作戦そのものよりも作戦遂行を支えた米特殊航空部隊に焦点を当てた特集となっている。取り上げられている航空機は、MH-47GチヌークやMH-60Mブラックホーク、MH-6Mリトルバード等。いずれも原型機は20世紀から運用され続けているベテラン機材だが、最新の電子装備で武装しているので、内装は一新されてより「凄み」を増している。MC-130JやAC-130Jなど、オールドファンにとっても嬉しい機材が紹介されている。

お奨め度★★★

J-Wings 2026年5月:F/A-18E/F生産終了へ 最終型『ブロックⅢ』の実力 J-Wings 2026年4月:ベネゼエラ強襲と米軍特殊航空部隊 J-Wings 2026年3月:日本で見られる軍用機2026 J-Wings 2026年2月:A-10という伝説
J-Ships:2026年4月-世界の大型水上戦闘艦 J-Ships:2026年2月-フリゲート入門 J-Wings 2026年1月:異機種大編隊と飛行開発実験団 J-Wings 2025年12月:進化する国際共同訓練

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七三一部隊の日中戦争 敵も味方も苦しめた細菌戦

広中一成 PHP新書

七三一部隊の日中戦争
本書は日中戦争で日本軍が実施した細菌戦について論じた著作だ。
本書は細菌戦を単純に「悪」と断じるだけではなく、まず史実を丁寧に掘り起こし、そのうえで軍事的・政治的・国際的な文脈から多角的に検討している点が印象的だった。七三一部隊というテーマはどうしても感情的な議論に流れがちだが、本書は新資料を含む多くの史料をもとに、当時の軍の判断や作戦意図を冷静に分析している。その姿勢は、歴史を理解するうえで不可欠な「まず事実を知る」という基本を思い出させてくれる。
特に興味深かったのは、細菌兵器が本来は対ソ戦を想定して研究されていたこと、そして日中戦争における細菌戦が軍事的にはほとんど成果を上げていなかったという指摘である。ペスト菌を媒介するノミを散布するという作戦は、技術的にも環境的にも制御が難しく、結果として中国の民間人を苦しめただけに終わった。軍事的効果が乏しいにもかかわらず、なぜ日本軍は細菌戦に踏み切ったのか。その背景には、戦局の悪化や焦燥、そして「新兵器」による突破を期待する組織心理があったことが読み取れる。
また、諸外国の細菌戦研究にも触れ、日本だけを特異な存在として扱わない視点も重要だと感じた。もちろん、日本軍の行為が正当化されるわけではない。しかし、国際的な軍事研究の流れを踏まえることで、当時の日本がどのような判断の中にいたのかがより立体的に理解できる。歴史を学ぶうえで、こうした相対化の視点は欠かせない。
本書を読み終えて強く感じたのは、日中戦争における細菌戦が「効果のない残虐行為」であったという厳しい事実である。軍事的成果はほぼ皆無であり、犠牲になったのは無辜の人々だった。この現実を、私たち日本人はもっと正面から受け止めるべきだろう。過去の過ちを理解することは、未来に同じ過ちを繰り返さないための最低限の責任である。
本書は、感情論に流されず、しかし人間の苦しみにも目をそらさない、バランスの取れた歴史研究書だった。七三一部隊や細菌戦について学びたい人だけでなく、歴史を多角的に理解したいすべての読者にとって価値ある一冊だと感じた。

お奨め度★★★★

後期日中戦争 後期日中戦争 華北戦線 傀儡政権 七三一部隊の日中戦争

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